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【亀鳴く】(かめ なく)
 (藤原為家「川越のをちの田中の夕闇に何ぞと聞けば亀のなくなる」からか)
  春の夕べ、どこかで亀が鳴いている。春の季語。
   《広辞苑・第五版》

 川越のをちの・・・という藤原為家の歌は、十三世紀半ばに成った新撰六帖
 という歌集に有る歌だそうです。
 川向こうのあの田んぼの中で何かの鳴き声が聞こえる。あれは何かと尋ねた
 ら亀が鳴いているのだという答え。そんな意味の歌のようです。
 この歌が元で、晩春の季語として定着したのがこの「亀鳴く」です。

 我が家にも二匹の亀がおりまして、それぞれ生まれてから5年と4年になり
 ます。図体は大きくなりましたが、日がな一日水槽の中で、水に潜ったり、
 水面から鼻を出したり、甲羅干しをしたりと優雅な生活(ただし水槽を出ら
 れないので本人たちは、「囚人の自由ね」と曰っているかも?)を送ってい
 ます。
 しかし残念な事に、春の夕暮れになっても彼らは鳴きません。

 やはり野生の亀とは違うのでしょうか。彼らの母親は野生の亀。拾われてき
 た亀でしたが、彼らは生まれて以来ずっと水槽暮らしですからね。
 たまに、キュー、とかスピーとか、鳴き声とも鼻息の音とも聞こえる小さな
 音が聞こえる事は有りますが、鳴き声というには小さすぎます。でも何時か
 は大きな声で鳴く事が有るかなと楽しみにしていました。
 ですが、調べてみると

  亀には発声器官は無い

 とのこと。つまり「鳴きたくても鳴けない」のでした。
 なんだ、「亀鳴かない」なのか。
 遠く離れた田んぼの中から聞こえてくるほど大きな鳴き声は無理みたいです。
 仕方ない、水槽に耳を近づけてあの鳴き声とも鼻息ともつかないキューッて
 音で我慢しますか。

 ちなみに、季語に残る「鳴く」不思議な生き物としては、この亀と蚯蚓(み
 みず)双璧でしょうか?
 それにしても亀は鳴かないとすると、為家さんが聞いた「田中の声」の主の
 正体は?。謎のままでございます。

 ※蚯蚓鳴くについては、http://koyomi8.com/doc/mlko/200710160.htm をご
  覧下さい。


オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2008/04/19 号

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