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【意の如くならざるもの恒に十に七八】
 天下不如意、恒十居七八 『晋書』羊こ(こ=示+古)伝

 「天下意の如くならざるもの、恒に十に七八に居る」
 世の中にはさまざまなことが起こるが、そのうち自分の思いどおりにならな
 いことが、いつでも十のうち七、八を占めている。
  《中国古典の便利辞典》


 秋葉原の無差別殺人事件について様々な報道が為されているが、こうした理
 不尽な事件があった後、日が経つに従って

  「こうした犯罪を生み出してしまう現代社会が問題」

 といった論調が現れてきます。
 今回の事件についても、幾つかのニュースには既にそうした論調が現れてい
 ます。犯人が犯行前に携帯サイトに書き込んだ大量の文章が紹介され、

  「その犯行自体は許されざるものだが、そうした犯行に走らせた遠因とし
   ては、現代社会の歪みがあるのでは」

 といった、意味のないコメントがなされ始めています。
 毎度のこととは思いながら、公共のメディアでこうした意味のないコメント
 を垂れ流されるのには、少々辟易します。

 どんな時代であれ、歪みのない社会なんてあったはずはないですし、明日の
 生活に不安のない人生なんてよほど幸運に恵まれた人か、或いは驚くほど幸
 運な鈍感さを持っている人にしか得られないものだと思います。

 「社会」ということで言えば、二十代の健康な人間一人が食べてゆくだけな
 らば、現在の日本はまず何の心配も無い、人間の歴史上でも希な社会です。
 もしそんな現代日本に生きて、「その不安の故に犯罪が起こる」という論が
 まかり通るなら、他のどんな暴論だって通ってしまうでしょう。
 もし現代社会に問題があるのだとしたらそれは、

  望んだことは叶えられるのが当たり前だ

 という幻想を、幼い時代に植え付けるような躾、教育をしてこれを良しとす
 る風潮が蔓延っていることではないでしょうか。
 天下意の如くならざるもの、恒に十に七八に居ると、早くに気づかせないこ
 とが「意の如くならざること」に耐えられない大人を量産する結果に繋がっ
 てしまったように思えてなりません。

 「子供には無限の可能性がある」のは事実ですが、その無限の可能性の中身
 は望ましいものは精々二三、残り七八は意の如くならざるものだということ
 を教える側も忘れてはいけません。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2008/06/12 号

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