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【任怨】(にんえん・にんおん)
 人々の恨みを引き受けていやがらない。〔漢・佞幸・石顕伝〕
  《角川大字源》

 高い地位に立ち影響力の大きな人は、時には大勢の人々の恨みを買うような
 決断を下さなければならないこともあります。

 将来のため、全体の利益を考えればよい施策であっても、その施策を実行し
 た場合、そのために現在の人々が、あるいは一部の人々が犠牲を強いられる
 ことがあります。そしてそうした犠牲を強いられた人々の怨嗟の声は施策を
 実行した、実行を決断した人に向けられることになります。
 大きな決定を行う立場の人は、そうした人々の恨みを引き受ける責務がある
 ということを表した言葉が「任怨」です。

 2007/11/14の前書き(今の埋め草の記みたいなもの)でこの「任怨」をいう
 言葉を書いたことを思い出し、同じ日付となった本日、コトノハに採り上げ
 るてみました。
 以下は、2007年の記事の抜粋です。

 ----------- 2007/11/14 前書きより
 「今日は何の日」のデータによれば、1940年の今日、イギリスのコベントリ
 ー市がドイツ軍の爆撃によって大きな被害を受けた日となっています。
 このコベントリー爆撃に関しては、その爆撃計画を伝える暗号文をイギリス
 側は解読して事前に知っていたという噂があります。

 ドイツ軍の暗号は「エニグマ」とよばれる暗号装置によって作られ、解読不
 可能と言われたものでしたが、イギリスはこれを解読することに成功してい
 たというのです。その解読器のコードネームは「ウルトラ」。
 時のイギリス首相、チャーチルはウルトラによって解読されたコベントリー
 爆撃計画を知らされていたのではないかというのです。

 暗号解読に成功していると言う事実をドイツから隠すために、自国の都市へ
 の爆撃計画を知りながら、チャーチルは警告を発しなかったのでは、と。
 爆撃によってコベントリー市は壊滅的な被害を被り、死者は 380名にのぼり
 ました。

 第二次世界大戦の記録の中には、コベントリー市の瓦礫の中で犠牲者に花を
 手向けるチャーチルの写真を見つけることが出来ます。もしチャーチルが本
 当に爆撃計画を知っていたとしたら、どんな思いで花を置いたのでしょうか。
 2007/11/14 前書きここまで -------

 「ウルトラ」の完成は戦争終結を早め、戦争が長引いた場合には失われただ
 ろう数万〜数十万の命が救われたと云われますが、これはあくまでも可能性
 の中での数。

 コベントリー爆撃を本当にチャーチルが知っていたのか否か、真偽のほどは
 藪の中ですが、もし本当だとしたなら爆撃計画を知らされたチャーチルは、
 可能性の中での数万人を救うために、眼前で確実に数百人の命が失われる決
 断をしたことになります。死んでいく数百人の怨嗟の声を背負う覚悟で。
 「任怨」とはこうした責任の重さを表す言葉なのでしょう。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2009/11/14 号

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