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【月の前の灯火】(つきのまえの ともしび)
 (美しく輝く月の前では灯火もあまり役に立たないことから)りっぱなもの
 と比べられて、引きたたないことのたとえ。また、不必要なことのたとえ。
  《成語林》

 昔は、月は夜を照らす重要な「明かり」でした。
 月の明かりが有ればそれより暗い人工の灯火など不必要だった。
 昔は月明かりとは、それほど明るいものだったのです。

◇現代の月と灯火
 明るい街灯が並ぶ道を歩いていて、ふと見ると等間隔に並んだ街灯の列に一
 カ所だけ間隔が乱れているところがありました。
 そこだけなぜ間隔が乱れているのかなと思い、よく見てみると間隔を乱して
 いた明かりの正体は昇って間もない満月でした。月を街灯と見間違うとは、
 お月様に失礼でしたね。

 さて「月の前の灯火」という諺の意味を考えれば、この諺が生まれた時代に
 は、月は灯火の明るさを霞ませるほど明るい存在だったことがわかります。
 では現代はというとその立場は逆転してしまい、灯火の方が月の明るさを圧
 する程になっていて、うっかりものの私に街灯の一つに見間違えられる有り
 様になってしまっています。
 そのうちに「月の前の灯火」というこの諺も、

  まぶしい明るさで月の光を隠してしまう灯火のこと。邪魔者

 という具合にその意味を変化させてしまうかも知れませんね。

◇今晩の月は?
 「あ、今日の月は随分細い。昨日見たときには真ん丸だったのに」

 三日月を見上げて、こう言った小学生がいました。
 これはもちろん間違い。月は満ち欠けする天体ですが、一日で満月が三日月
 になることは有りません。

 思うに、毎晩少しずつ満ち欠けする月に注意することが少なくなり、その変
 化の様を忘れてしまったので、いつか見て印象に残った満月の映像を、「昨
 日見た月」と思い違いしてしまったのでしょう。

 月明かりが、人工の灯火の明かりに霞んでしまったように、月の存在そのも
 のも霞んできてしまっているようです。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2010/08/14 号

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