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【赤縄】(せきじょう)
 [続幽怪録](唐の韋固が宋城で遇った異人に、嚢の中に入れた赤い縄で男女
  が足を繋がれると、仇同士の家柄でも離れることができない仲になるといわ
  れた故事から) 縁つなぎのなわ。夫婦の縁。
   《広辞苑・第五版》

 今日2010/11/07は、旧暦10/02。
 十月の異名は神無月。この月には日本全国の神々が出雲に集まって人間達の
 縁結びの相談をするとか。縁結びといえばよく聞く話に

  赤い糸の伝説

 というものがあります。結婚する男女はお互いの小指を赤い糸で結ばれてい
 るとか。この話がどこから出たものか、どうもよく解らないのですが、もし
 かしたらと思う話が本日採り上げた「赤縄」の故事です。

◇結婚を管理する者
 昔、韋固(いご)という名の青年がいました。名門の出で、財産家でしたが
 幼いときに両親を亡くし兄弟もいないことから早く嫁をもらいたいと方々に
 縁談を頼んだのですが、なぜか上手くまとまりません(好条件なのに)。

 ある時旅をして、宋城の南の村に泊まったときのこと、よい相手がいると勧
 めてくれる人がおりました。その人物は自分の名を名乗りませんでしたが、
 何となく信頼出来そうな人物。もし相手の娘と会う気があるなら明日の朝、
 村の西にある寺の門前で会わせようというので、韋固は会ってみようと思い
 ました。

 翌朝、早起きしてまだ空に月が残る内にその寺に行ってみると、石段に座り、
 持ち物の袋に寄りかかるようにして見たこともない文字が書き込まれた本を
 読んでいる老人がいました。

 見たこともない文字の書き込まれた本を不思議に思い尋ねると老人は、「こ
 れは天上界の文字だ」いい、自分は天上界の者で人間の結婚について管理す
 るのがその勤めだと語りました。
 韋固がさらに老人が寄りかかっている袋の中身をたずねると、結婚する運命
 にある男女を結びつける赤い縄が入っていると老人は教えてくれました。

 老人が言うには、結婚する運命の男女の足首にはこの赤い縄が結びつけられ
 ていて、一度結びつけられたら、たとえそれが仇同士であろうと必ず結婚す
 る運命あるのだとか。

◇赤い縄
 嫁の欲しい韋固は、思いきって「自分の赤い縄」についてたずねてみました。
 すると老人は

  「もう繋がっている。相手は村の北の市場で野菜を売っている婆さんが
   連れている三才の娘だ」

 と教えてくれました。
 韋固は、真偽を確かめようと市場に出かけてみると確かに老人が言うとおり
 の老婆に連れられたニ三才の娘がいました。しかし老婆も娘も見るからにみ
 すぼらしい姿。韋固は半ばあきれ、半ば怒って「あんな娘が将来私の妻にな
 るというなら、いっそのこと今のうちに殺してしまった方がましです。」と
 言い捨てて老人から離れました。

 宿に帰った韋固はさっそく下男にその娘を殺すように命じ、成功すれば一万
 貫の銭をやると言って、鋭い匕首を持たせてやりました。
 しばらくして下男は戻り、「婆さんが邪魔をしたので匕首の刃は心臓を外れ
 てしまったがそれでも眉間を突き刺したから死んだはずです。」と報告しま
 したから、韋固は喜んで約束の一万貫の銭を下男に与えました。

 そんなことが有ってから十四年。その間韋固は亡父の功績から役人に取り立
 てられていました。その仕事ぶりはなかなかのもので、やがて州の長官の目
 に止まり抜擢され、ついには長官の娘を嫁にもらうまでになりました。
 妻となった長官の娘は十七才。とても美しくまた心根も優しい女性で韋固は
 大満足。

 ただこの娘、いつも眉間に造花の飾りをつけていて、寝るときにすらそれを
 外そうとしません。ふと十四年前の出来事を思い出した韋固が、妻に造花を
 付けている理由をたずねると、妻は長官とは親子ではなく、本当は叔父と姪
 の関係であること。両親が早くに亡くなり、乳母を務めた老婆が苦労して育
 ててくれたこと。その後は叔父が探し出してくれ、娘同然に育ててくれたこ
 と、額の傷は乳母が育ててくれていた時代に市場で見知らぬ男にいきなり刃
 物で斬りつけられて出来たことなどを語りました。

 そして、顔に傷があることを隠して結婚したことをわびると、申し訳ありま
 せんと言って泣き崩れてしまいました。

 妻の話を聞いた韋固は、顔の傷の原因を作ったのが自分であることを打ち明
 けました。妻は驚きながらも、

  「それでは、おあいこですね」

 というと、赤い縄に結ばれた不思議な運命で結ばれた韋固をますます慕い、
 ずっと仲むつまじく暮らしたそうです。
 なお、韋固はその後も昇進し、太守にまでなり、その妻も爵位を受けるほど
 になったそうです。

◇おあいこ・・・
 赤縄の話は、以上です。
 「赤い縄が足首に結ばれている」は「赤い糸で小指を結ばれている」よりず
 っとがっしり結ばれた運命という気がします。

 「赤い縄に結ばれた不思議な縁」の話でしたが、縁の不思議さ以上に現代に
 生きる私にはこの話の「それでは、おあいこですね」という大団円の結末が
 もっと不思議。

 眉間の傷を隠して結婚したことと、その傷の元となった殺人未遂事件(しか
 も、あんなみすぼらしい娘と結婚なんてとんでもないという理由で)とが
 「おあいこ」になるなんて・・・。
 違う時代の価値観を現代の尺度で測っちゃいけないとはおもうのですが、そ
 れにしても納得出来ない話。

 巷でささやかれる「赤い糸の伝説」がもしこの「赤縄」の故事から生まれた
 ものだとしたら、「ロマンチックねー」とは素直には言えなくなりそうです。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2010/11/07 号

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