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【勉強】(べんきょう)
 1.精を出してつとめること。
 2.学問や技術を学ぶこと。さまざまな経験を積んで学ぶこと。
  「数学を勉強する」「何事も勉強だ」
 3.商品をやすく売ること。「お値段は勉強しときます」
  《広辞苑・第六版》

  「お客さんには敵いませんね。
   じゃあ、もう少し勉強させて頂きます」

 関西に住むようになって、こんな言葉をたまに聞くようになりました。
 もちろん原文(原語)は関西弁ですが、関西弁初心者の私が書くと、おかし
 な関西弁になりそうなので、なじんだ言葉で書かせて頂きました。

 ここで使われた「勉強」はいうまでもなく値引きするとか、何かのサービス
 を無料で追加するとかといったことを意味するわけですが、昔からなぜそれ
 が「勉強」なのかなと、時々疑問に感じ、考えたことが有ります。きっと、

  商売のやり方を学習、稽古させて頂きます

 という意味なのだろうというのが、そうした疑問を持ったときの私なりの答
 えでした。私からすると、「勉強」は広辞苑の説明の 2の「学ぶ」の意味が
 その本義だと思っていたからです。ところが、どうやらこれは間違いだった
 ようです。

◇「勉強」は無理して行うこと
 勉強の「勉」と「強」をそれぞれ漢和辞典で調べてみるとその意味には、

 【勉】 困苦にたえてつとめる。無理をおしてはげむ。
 【強】 無理をおす。しいる。

 が有ります。勉強を構成する文字はどちらも「無理をおす」という意味があ
 り、それが二つ並べば「無理に無理をおして、はげむこと」という意味にな
 りそうです。広辞苑の説明 1に「精を出してつとめること」とあるのが一番
 原義に近い意味のようです(「無理して」という部分は抜け落ちていますけ
 れど)。

 ちなみに、「勉」の字は分娩の「娩」と同じで、出産の際に「無理にいきむ
 姿」から生まれた文字だそうで、ことの初めから「無理して」という意味が
 つきまとっていたわけです。

 さてこう考えてみると、「お客さんには敵いませんね・・・」の勉強は、こ
 れ以上値段を下げるなんて無理だけれど、ここは無理に無理して努力させて
 頂きますという、学ぶこととは関係なく、勉強本来の意味の「勉強」なんだ
 と解りました。

◇無理に「勉強」させるのはいけないの?
 「勉強は子供の自発性を尊重すべきで、無理強いはいけない」なんてことを
 以前はよく耳にしました(「ゆとり教育時代」とでもいうべき時代には?)
 が、そんな話を聞く度に

  子供の頃、無理強いさせられなかったら、絶対勉強なんかしなかったぞ

 と自分を振り返って思ったものでした。何時かは学ぶことの楽しさや意味を
 知るようになりますが、それは大分経ってから(大体は、大人になって無理
 に勉強しなくてもよくなってから・・・)。初めは「無理にはげまされ」て
 嫌々勉強するというのがあたりまえではないでしょうか。

 10人、いや 100人に 1人くらいは、初めから自発的に勉強したかも知れませ
 んが、それはきっと例外だろうと思うのです。
 嫌々勉強していた私が例外だったのかなと思うこともありましたが、勉強と
 いう言葉が元々は「無理に無理してはげむこと」という意味だとわかって、
 一安心。どうやらみんな「無理に」させられていたんだなと。

◇元ネタは・・・
 なぜ値引きや無料サービスを「勉強します」というのかと、ずっと不思議に
 感じていた私でしたが高島俊男さんのエッセイ(「漢字語源の筋ちがい」)
 を読んでいて、勉強本来の意味を知りました。
 長年の疑問(どうでもいい疑問?)が氷解した歓びから、本日のコトノハに
 「勉強」を採り上げました。
 今回の「勉強」は、無理にではなく「自発的」にさせて頂きました。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2010/12/26 号

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