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【登高】(とうこう)
 1.高い所にのぼること。
 2.中国で、陰暦9月9日、丘にのぼり菊酒を飲む行事。高きに登る。
  秋の季語。
   《広辞苑・第六版》

 このコトノハを書いている日の日付は九月九日です。
 暦の月と日が共に陽数(奇数)のもっとも大きな「九」、乃ち陽数の極みの
 数が二つ重なる日ということから、九月九日は「重陽」と呼ばれ、五節供の
 一つとなっています。

 中国では重陽の日には住む土地の高台に家族で登り、一族の繁栄を祈念した
 そうです。広辞苑の説明の 2は、この行事を説明したもの。
 詩聖と呼ばれた盛唐の詩人杜甫には、重陽の日に詠まれた「登高」と題した
 七言律詩があります。

   登高

  風急に天高く 猿(ましら)の嘯(うそぶく)くは哀(かな)しげに
  渚(なぎさ)清く 沙(いさご)白くして 鳥は飛びて廻(めぐ)る
  無辺(むへん)の落木 蕭蕭(しょうしょう)として下り
  不尽(ふじん)の長江 滾滾(こんこん)として来たる

  万里 悲秋(ひしゅう) 常に客となり
  百年 多病 独り台に登る
  艱難(かんなん) 苦恨(くこん) 霜鬢繁(そうびんしげ)く
  潦倒(ろうとう) 新たに停む 濁酒(だくしゅ)の杯

   ※読み下しは、『唐詩選』(吉川幸次郎・小川環樹編)による

 「登高」は、本来なら故郷で家族と共に丘に登り一族の繁栄を願う重陽の日
 をいつ終わるとも知れない流浪の旅の間にむかえねばならなかった杜甫が詠
 んだ七言律詩の傑作です。

 故郷で家族と共に過ごすはずの日に、遠く離れた客地でたった一人で山に登
 り、天地の秋の深まりと自らの人生の秋の終わりの時を重ね合わせる杜甫の
 悲壮な思いが伝わってきます。と同時に、毎年の重陽の日を当たり前に家族
 と共に過ごすという当たり前の幸せが、どれだけ大切かを思い出させてくれ
 るものでもあります。

 重陽の日を家族と共に過ごせる人も、離れて過ごさなければならない人も、
 それぞれに年に一度くらいは、当たり前に考えてしまいがちな家族の存在、
 暮らしている街の存在のありがたさを見直すために、高台に登って住む街の
 姿を眺めてみてはいかがでしょうか。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2012/09/09 号

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