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【こだわる】
 『自五』
 1.さわる。ひっかかったりつかえたりする。
  東海道中膝栗毛6「脇指の鍔が、横腹へこだわつて痛へのだ」
 2.些細なことにとらわれる。拘泥する。「形式にこだわる」
 3.些細な点にまで気を配る。思い入れする。「材料にこだわったパン」
 4.故障を言い立てる。なんくせをつける。
  浄瑠璃、娥かおよ哥かるた「たつて御暇を願ひ給へども、郡司師高こだ
  わつて埒明けず」
   《広辞苑・第六版》

 本日のコトノハは、分類からすると「気になる言葉シリーズ」となります。
 もう少し直裁的に書けば「私の嫌いな言葉シリーズ」かな?

 私の嫌いな言葉とは書きましたが、別に「こだわる」という言葉それ自体が
 嫌いなわけではありませんが、その用法の一つが気にくわない。そして、そ
 の気に入らない用法での使用例が近頃目立つので、ちょっと不機嫌です。

 私を不機嫌にさせる用法は、広辞苑の語釈の 3です。
 私にとって「こだわり」という言葉は語釈の 1や 2、あるいは 4にあるもの
 だったので「こだわる」といわれると、よくないことのように感じてしまい
 ます。それが今では、

  ○○にこだわった店

 と、堂々と店の看板に書き込むような例もちらほら(でもないかな?)。
 まるで、こだわることが美点であるかのように使われています。おそらく 3
 の「些細なことまで気を配る」ことを美点として、喧伝されることになるの
 でしょう。しかし、この使い方がどうも癇に障ってしまいます。
 なんか、誤用のような気がしてならない。しかし、あらためて辞書で引いて
 みると私の癇に障る用法もあるのですね。そうなのか・・・。

 しかしそれでもやはり「こだわる」は美点を表す言葉ではないように思いま
 す。些細なことにまで配慮することは素晴らしいことですが、出来ることな
 らその配慮自体は目立たないように包み隠して外には見せない、そうあって
 欲しいとなと。もちろん、私の勝手な願いですが。

 何かに打ち込めば、外から見ればそんなことまでと思える細部にまで「こだ
 わる」必要があるでしょう。玄人ならば素人には「こだわり」と映ることも
 当たり前のこと。当たり前のことを当たり前にしているのに過ぎないのであ
 れば、それをこだわりとはいわない。

 周りがどう捉えてもそれはかまいませんが、少なくとも自ら「こだわり」を
 店の看板に書き込むなんて云うのは、やはりおかしい。そう思えてしかたが
 ないので、そんな使い方が増えてきた「こだわる」という言葉が嫌いになっ
 てしまいました。といいながら、随分と「こだわる」私ですが。

◇ついでに、もうちょっと「こだわる」
 調べついでに、もうちょっと調べてみました。
 私が気になってしまった 3のような用法が昔もあったのか? あったのに私
 がたまたまそうした用法にふれる機会がなかっただけなのか?

 いつもお世話になる広辞苑ですが、六版以外にも五版と四版の古い広辞苑が
 手元にありましたので、こちらも引いてみました。すると五版は六版と同じ
 語釈が載っておりましたが、四版には1,2,4 の語釈はありましたが、 3はあ
 りませんでした。

 五版の刊行年は1998年、四版は1991年。
 広辞苑という一種類の辞書を引いただけのわずかな証拠ではありますが、ど
 うやら 3のような用法は比較的最近になって広まったものだったと思われま
 す。それなら、私のような古びた人間の癇に障るのもしかたがないですね。
 癇に障る言葉だったからといって、こだわりすぎてしまいました。
 反省します。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2015/11/07 号

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