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【絆】(きずな)
 1.馬・犬・鷹など、動物をつなぎとめる綱。
  梁塵秘抄「御厩(みまや)の隅なる飼ひ猿は絆離れてさぞ遊ぶ」
 2.断つにしのびない恩愛。離れがたい情実。ほだし。係累。繋縛。
  平家物語10
  「妻子といふものが、・・・生死(しょうじ)に流転(るてん)する絆な
  るが故に」。「夫婦の絆」
   《広辞苑・第六版》

 あれ? 広辞苑の語釈には、最近よく使われる「絆」の意味は見当たりませ
 ん。では最近の意味は? ということでウィキペディアでこの言葉を引いて
 みると

 【絆】
  絆(きずな、きづな)は、本来は、犬・馬・鷹などの家畜を、通りがかり
  の立木につないでおくための綱。しがらみ、呪縛、束縛の意味に使われて
  いた。「ほだし」、「ほだす」ともいう。
  人と人との結びつき、支え合いや助け合いを指すようになったのは、比較
  的最近である。 
  《https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%86 2018/9/2 版》

 現在、「絆」という言葉の意味として使われているのはウィキペディアの説
 明の最後にある、

  「人と人との結びつき、支え合いや助け合いを指す」

 の意味でしょう。ウィキペディアにもこの意味は比較的最近使われるように
 なったとあるとおり。「人と人との結びつき」という意味でこの言葉が使わ
 れ契機となったのは東日本大震災だったのではないでしょうか。
 震災から1〜2年はキャンペーン的にこの助け合いや支え合いを呼びかける意
 味でこの言葉が頻繁に使われたことで、新しい意味が定着したように思えま
 す。

 それまではそれ程頻繁に耳にする言葉ではなかったので、震災直後は「絆」
 という言葉が新鮮に感じられましたが、あまり沢山使われすぎたためにわず
 か数年で陳腐化してしまい、なんかこの言葉を使うのが気恥ずかしいように
 感じるのは私だけでしょうか?

 陳腐化の効果は、その意味にも影響を与えている気がします。
 今でも「絆」には「人と人との結びつき、支え合いや助け合い」という意味
 を感じますが、私にはその意味の前に「ちょっとした」という言葉がついた
 もののように思えるようになってしまっています。

 「ちょっとした助け合い」だと悪いのかというと、必ずしもそうではありま
 せんが、軽い気持の「ちょっとした助け合い」が受け手にとっては強い束縛
 や呪縛に感じられる場合もあります。

 「人と人との結びつき」という意味で使われるようになった「絆」のもとも
 との意味は「動物をつなぎ止める綱」でした。「絆」は、つながりであると
 同時に自由を束縛するものでもあったのです。

 この言葉に私の感じた二面性のようなものは、「絆」という言葉が生まれた
 時からこの言葉に内包されていたものだったようです。二つの異なる意味は
 「絆」という言葉で離れがたく結びつき、この言葉を受け取る人に複雑な思
 いを抱かせ続けるのではないでしょうか。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2018/09/02 号

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