こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
【ブーメラン】
 オーストラリア先住民の用いる木製の狩猟用飛び道具。
 「く」の字形で、投げると回転しながら飛んで手元にもどる。
   《広辞苑・第六版》

 子供のころ、よく遊んだおもちゃの一つです。
 もちろん、木製などではなく、駄菓子屋などで売られていたビニール製の安
 物でしたけれど。

 私は田舎育ちでしたから、秋の終わりから春の初めまでは、辺りには有り余
 るほどの空き地(一般には田圃という)がありましたので、そこでよく、こ
 のおもちゃで遊びました。

 「投げたら、投げた人のところに必ず戻ってくるものだ」、子供向けのテレ
 ビ番組か何かで、そんなことを刷り込まれてしまっていたので、最初は思い
 通りにもどってこなくて腹が立ちました。

 腹を立てながら、自分からずいぶん離れた場所に落ちてしまったブーメラン
 を拾いに随分走り回ったものでした。考えてみれば安手のおもちゃ、バラン
 スも何もあったものではありませんから、無理もない話です。それでも何度
 も何度も投げているうちには、段々とコツがつかめてきて、時には上手く自
 分の方に戻てくることもあるようになりました。

 そうして、気が付きました。
 上手く自分の方に戻ってくるようになると、新たな問題が発生することに。
 勢いよく投げたブーメランが、大気を切り裂き、うまい具合にカーブを描い
 て自分の手元に戻ってくる。ここまではよいのですが、もどって来るブーメ
 ランの勢いは投げた時と同じくらい。

 名手がやったら、本当に手元にもどってくるのかもしれませんが、私などが
 投げてもせいぜいが、自分のいるあたりに戻ってくるというのが関の山。
 となると、戻ってきたブーメランは

  自分に向かって投げられた飛び道具

 も同じなのです。
 「やったー、戻ってきたぞ!」と思った直後に、戻ってきたブーメランとい
 う飛び道具から逃げ惑う子供の頃の私。今から思えば我ながら、なかなか笑
 える映像です。投げるのはいいけど、戻ってきたときのことをもっと考えて
 おくべきでした。

 近頃は、この「ブーメラン」という言葉をよく耳にします。
 別に、ブーメラン愛好者が増殖中というわけではありません。
 他人を批判、非難した言葉が、自分自身にも当てはまるということが発覚し
 逆に非難される立場になってしまうような悲喜劇を表す言葉として、主にネ
 ット世界などで使われるようになりました。

 批判、非難については反論も出来ますが、批判の元が自分自身の発した言葉
 だとすると、これはかなり恥ずかしい。このブーメランに対抗しようと反論
 すれば自分自身の元々の批判を否定することにもなりかねず、反論すればす
 るほど自分の首を絞めてしまうようなかっこ悪いことになりかねない。

 確かに、こんな状況を表す言葉として「ブーメラン」を使ったのは巧い!
 ブーメランで遊んで痛い目を見た私には実感としてよくわかります。
 批判の言葉も本物のブーメランも、戻ってきたときのことを考えてから、発
 することにしましょうね。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2019/07/16 号

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