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【紅一点】(こう いってん)
 [書言故事、王荊公石榴詩「万緑叢中紅一点」]
 (青葉の中に一輪の赤い花が咲いている意)唯一つ異彩を放つもの。
 転じて、多くの男性の中にただ一人の女性がいること。
   《広辞苑・第六版》

 昔は現在に比べて圧倒的に職場における女性の比率が少なかった(少なくと
 も私の職場では)ので、時折この「紅一点」という言葉を耳にすることがあ
 りました。最近はどうかな?

 石榴詩の「万緑叢中紅一点」が示す情景はとても印象的ですので、よく憶え
 ていたのですが、「紅一点」の出典がこの詩だったことは、今回、始めて知
 りました。何となく、それ以前から使われていた表現を王荊公(王安石)が
 詩の中で用いたものと思っていました。

 そうか、石榴詩がこの言葉の出典だったのか。
 そういえば今は5月末。ちょうど石榴の花の季節。
 ちょうどいいやということで、現在多く使われている「多くの男性のの中に
 ただ一人の女性がいる」という言葉の意味ではなくて、元々の青葉の中に異
 彩を放つ赤い花が咲いているという情景の話にしてしまいます。

 「石榴詩」の題名のとおり、ここで詠われた紅い花は石榴の花です。
 石榴は現在のアフガニスタンあたりが原産だと言われている木ですが、最も
 古くから栽培が為されていた果樹の一つと考えられるほど、古い時代から世
 界各地で栽培されてきた木で、日本でも果樹や庭木として育てられている石
 榴の木をよく見かけます。

 石榴は、ごつごつとした瘤のような形で種の多い大きな実、そしてこの実が
 とっても酸っぱい、で知られますが、5〜6月頃に咲く真っ赤な花もまた、見
 る者に強い印象を与えます。

 石榴の花を一度でも目にした人には、石榴詩の中の「万緑叢中紅一点」の光
 景をありありと思い浮かべることが出来るはずです。季節の情景を表し、人
 の心を動かすのに、多くの言葉や多くの色彩は必要ない。深い緑の中に一輪
 の紅い花があれば十分である。

 王荊公が生きた時代から千年あまり時を隔て、海を隔てても石榴の紅い花は
 相変わらず私たちに、季節の姿を鮮やかに示してくれているようです。
 雨の多いこれからの季節、雨に濡れて色の濃さを増す緑の中に、真っ赤な石
 榴の花を目にすることがあれば、石榴詩の一節も思い出してみてください。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2021/05/30 号

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