こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
【柊・疼木】(ひいらぎ,ひひらぎ)
1.モクセイ科の常緑小高木。高さ約3メートル。
 葉は革質で光沢あり、縁には先が鋭いとげとなった顕著な切れ込みがある。
 秋、単性または両性の白色の小花を密生、佳香を発する。
 花冠は鐘形で4深裂。熟すと暗紫色の核果をつける。
 材は強く、細工物にする。
 節分の夜、この枝と鰯(いわし)の頭を門戸に挿すと悪鬼を払うという。
 「柊の花」は冬の季語。古事記中「柊の八尋矛(やひろほこ)」
2.クリスマスの装飾に使うホリー(holly)の誤称。本来はモチノキ科の別種
 で、葉の形が柊1に似るのでいうが果実は赤熟する。セイヨウヒイラギ。
  《広辞苑・第六版》より抜粋

 冬となり、多くの木々が葉を落とす頃になると、それまでは他の緑の葉の色
 に埋もれていて、さほど気にならなかった家々の生け垣に使われる常緑の小
 木の姿に目が行くようになります。

 そうした常緑の小木の一つに柊があります。
 柊の特徴と言えば、まずその葉の鋭い棘が挙げられるでしょう。その棘に触
 れるとヒリヒリとした痛みを感じることから、疼木と呼ばれます(疼はしも
 やけのようなヒリヒリした痛みを表す文字だとか)。
 その葉の棘の効果から、泥棒除けとしてこの木を生け垣にする家も多いよう
 です。

 この葉の棘は泥棒ばかりではなく、鬼や悪霊の類いまで恐れられます。その
 棘の鋭さは「鬼の目突き」というほどに鋭いことから、節分の日には柊の枝
 を玄関に吊せば、鬼も恐れて近づかないといわれます。この悪鬼、悪霊の類
 いを近づけない力のため、神社の境内にも柊が植えられているのを見かける
 ことがあります。

 和歌山県南端にほど近い田舎にある私の家の近所の神社、村社とでも言うほ
 どの小さな神社の境内にも、柊の老木があります。境内と言っても、参拝者
 があまり立ち寄りそうもない端っこに、ひっそりと生えています。

 広辞苑の説明では高さ3メートルほどの小高木とある柊ですが、その神社の
 柊は、もっと高かったと思います。植物図鑑などを調べると、7〜8mほどに
 までなる場合もあるとのことなので、あの老木もそうした木の一つなのでし
 ょう。

 11月の終わり頃から12月の初め頃のその神社には、仄かな芳香が漂います。
 おそらくは、境内の隅にひっそりと生えている柊の花の香りなのでしょう。
 柊は金木犀や銀木犀と同じ木犀の仲間なので、その白い小さな花には木犀属
 の特徴であるよい香りがあります。ただし、金木犀ほどの強い香りではあり
 ませんが。

 その木が柊であることに気付いたのも、実はある冬の日に境内に漂う香りの
 源を探そうと、香りをたどったときでした。たどり着いたその木の枝に小さ
 な白い花が咲いているのを見て、その木が柊だと気付いたのです。
 それまでも何度もその木を見ていましたが、柊だとは気付きませんでした。
 柊特有の、鋭い棘がその木の葉にはなかったからです。

◇角丸柊(かどまるひいらぎ)
 「暦の風景」(青菁社刊)という本の頁をめくっていたら「角丸柊」という
 言葉を見つけました。その葉からギザギザが消え、丸みを帯びるようになっ
 た柊を指す言葉のようです。

 その本の説明によれば、半世紀以上生きた柊の葉からは、あの特徴的なギザ
 ギザが自然に消えてしまうのだとか。また、若くて鋭い棘を沢山持った柊を
 「鬼柊(おにひいらぎ)」、老いて棘の消えた柊を「姫柊(ひめひいらぎ)」と
 いうともありました。
 
 あの神社の片隅に生えた柊の木も歳経て棘を消した老木だということでしょ
 う。きっと、悪霊から神域を守る仕事は、より若い鬼柊達に譲って今は唯、
 初冬の境内をその芳香で清める役目を果たしているのでしょうか。

 なかなか家にも帰れず、この角丸柊の木に逢う機会も減ってしまいましたが
 年末年始の時期には家に帰り、初詣はこの神社にお参りすることになると思
 いますので、あと少ししたらその丸い葉を見ることが出来るでしょう。
 その時には、私も少しは角が取れた人間になっていると、柊に思ってもらえ
 たらいいのですが。
 半世紀以上生きてきたのに、皆が皆、柊のようにはなれないようです。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2021/12/12 号

こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック