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■暦注の話・・・三隣亡(さんりんぼう)

 今日の「主な暦注」を見ていたら、三隣亡の文字が見えたので、これを取り
 上げてみることにします。

 三隣亡は建築関係の大凶日と言われていて、この日は棟上げや土起こしなど
 は大凶とされ、避けられると言います。今時こんな迷信信じている人なんて
 いないよねと思うと差にあらず、結構いらっしゃるようです。

 こよみのページには建築関係の仕事をしている方から、三隣亡の日を教えて
 欲しいという問い合わせが時々あります。
 「迷信」ということは問い合わせしてくる方もわかってはいるのですが、

  「でも、家を建てている施主様が気になさるので」

 と仕方のないご様子。確かに商売ですからお客様が嫌だというのなら無理に
 とは言えません。

 三隣亡は、節切りの月(二十四節気の「節」で区切った12ヶ月。主に占いに
 使われる)と日の十二支で決まります。この号が出る2006/10/20は九月節で
 ある寒露(10/8)と十月節である立冬(11/7)の間ですので、節切りの月として
 は九月。九月の三隣亡は「午の日」(何でと言われても、そう決められてい
 ますとしか言えません)。この間の午の日は

    10/8 (庚午) , 10/20(壬午)

 の 2日。建築関係者に嫌われる理由としてまことしやかに語られるのはこの
 日家を建てると

  三隣亡 ・・・ 向こう三軒両隣を亡ぼす日

 だからだそうです。こうなると「自分は信じないから」といっても向こう三
 軒両隣のうちの誰か一人でも信じていたら建てられないでしょうね。将来の
 近所付き合いを考えると。

 こんなに忌み嫌われる三隣亡は、江戸時代や明治の官暦には載ったことのな
 い暦外増注と言われるもの。民間の雑暦に載った物です。不思議なことに江
 戸時代の説明だと「棟立て、土起こしに佳い日」となっています。
 その上文字まで「三輪宝」と何とも目出度そうな文字。現在と反対です。
 暦の作家が

  「家立て、蔵立てよし」 → 「家立て、蔵立てあし」

 と「よ」と「あ」を取り違えた結果、意味が反転してしまいその反対の意味
 が定着してしまった(木版で印刷していましたから、一度版木を作ったら、
 暫くはそれを使い続けた?)結果、それに引きずられて文字まで変わってし
 まったのではと言われています。

 民間の雑書などの場合、「さんりんぼう」と仮名書きされるのが普通で、漢
 字で書かれることは無かったから、三隣亡は読みとその意味から後世に当て
 字として考えられたものかもしれません(この辺は私のあて推量)。隣り三
 軒両隣を亡ぼすっていうのも、その延長で生まれた迷信じゃないでしょうか。

 暦注はその成立や仕組みを考えると、その背後の文化や人々の生活などが垣
 間見えて面白いのですが、無闇に信じてそれに振り回されることの無いよう
 に。お隣さんが、三隣亡の日に棟立てしたからって気にしない気にしない。
 理性的に対処致しましょう。

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2006/10/20 号

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