こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■エジプト暦・・・シリウス星暦
 『世界の様々な暦について教えてください』というメールを頂きました。

 「暦」の歴史を眺めると、実に様々な暦があり、いくつかは現代まで生き残
 り、そして多くは、現在の暦にその痕跡を残して消えてゆきました。
 そうした現存のあるいは、今は姿を消した暦について、特に重要な暦や特徴
 的な暦について時々拾い上げて行きたいと思います。

 第一回目は、現在の太陽暦の先祖と言われるエジプト暦を採り上げてみます。


◇エジプト暦は太陽暦ではない?
 エジプトでは遅くとも紀元前3000年頃には 1年が 365日であることが知られ
 ていたと言われます。

 また現在世界中で広く使われているグレゴリウス暦の基となったユリウス暦
 はエジプトの進んだ暦を参考にして作られたと言われますから、その点で言
 えばグレゴリウス暦(太陽暦の一つ)の先祖。

 現在の太陽暦の先祖と言うことが出来そうですが、その作り方から考えると
 エジプト暦は太陽暦と言うより、『シリウス星暦』と言った方が正しそうで
 す。では、その作り方とは?


◇エジプト暦が生まれた理由
 エジプト文明は「ナイルの賜」と呼ばれるように、ナイル川が毎年運んでく
 る肥沃な黒土(ケムト)が生み出す豊富な収穫がその文明を支え発展させま
 した。

 その点では、ナイル川が運ぶ黒土は大変貴重なものですが、その黒土はナイ
 ル河の氾濫という恐ろしい自然現象によってもたらされるものでしたのでし
 た。豊かな収穫は、洪水の危険と表裏を為すものでした。

  「豊かな収穫は手に入れ、洪水の危険はこれを除きたい」

 というのは誰しも考えるところ。そしてそれを可能とするための道具として
 エジプトの暦は発達しました。


◇洪水とシリウスの周期
 ナイル川の洪水は、その上流域の熱帯雨林地帯に雨期がおとずれ大量の雨が
 降る結果起こる現象ですが、砂漠地帯であるナイル川下流域ではそんな事情
 は分かりません。

 分かることと言えば夏至に近い時期になると、ナイル川が増水し氾濫すると
 言うことだけ。この増水の時期を正確に予測出来れば、洪水の危険を除き、
 豊かな収穫だけを手にすることも可能です。
 そしてエジプト人が発見した増水時期の始まりの目安となる現象が、

  シリウスの日出直前出現(ヘリアカル・ライジング,Heliacal rising)

 でした。シリウスはおおいぬ座のα星。全天でもっとも明るい恒星です。
 このシリウスは現在の暦の5〜6月頃は昼間に空にあるため見ることが出来ま
 せん。それが夏のころになると、日が昇る直前に、少しの時間だけ見えるよ
 うになります(これは、太陽が恒星に対して 1日に約 1°西から東に移動し
 て行くためです)。
 この日出前のシリウス出現の最初の日がヘリアカル・ライジングです。

 ヘリアカル・ライジングの観測は難しいものですから、年によって多少の誤
 差は有ったでしょうが、その平均の間隔を調べると、ヘリアカル・ライジン
 グは 365日毎に繰り返されることが分かりました。

 シリウスのヘリアカル・ライジングを基準として考えられた暦ですから、こ
 れは太陽暦と言うより、「シリウス星暦」と呼ぶのが相応しそうです。

   ・・・ 長くなりましたのでここから先は、また次回に ・・・


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2006/12/12 号

こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック