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■エジプト暦・・・シリウス星暦 (その2)
 さて、昨日はエジプト暦がシリウスのヘリアカル・ライジング(日出直前出
 現)の観測から暦を作り始めたところまで話を進めました。
 本日はその続きです。


◇エジプト暦とは
 エジプト暦は12ヶ月の30日の月と、最後の月に付け足される 5日間の余日に
 よって 1年としていました。つまり、

  12ヶ月 × 30日 + 5 = 365日

 と言うわけです。12ヶ月に 1年を分けている点を見れば原始エジプト暦も太
 陰暦であったことが推察出来ますが、5000年前(BC3000)には既に太陰の周期
 と暦は無関係になっていたと考えられます。


◇エジプト暦は移動年の暦
 さて、 1年は 365日とされましたが、作り出されたころのエジプト暦には
 「うるう日」の概念がありませんでした。そのため毎年 1年の日数は 365日。
 だとすると何が起こるでしょうか?。

 暦を司る神官達は、長い月日の間に洪水の時期が暦の上の日付では徐々に遅
 れて行く現象に気が付いたことでしょう。これは、 1年が 365日とすると実
 際の 1年より約 1/4日短くなってしまい、このため年の始めの位置(年初)
 が移動してしまうためです。年初が移動して、再び元の位置に戻るまでに要
 する時間はと言うと

  365×4 = 1460(年) ・・・ ソチス周期(シリウス周期)

 となります。「ソチス」はエジプトでのシリウスの呼び名。つまり、

  1461エジプト年 = 1460太陽年

 と言う関係にあるのです。この移動についてはエジプトの神官達は知ってい
 たのですが、民間で使う暦には相変わらず、 1年 365日が使われていました。
 移動年と言っても、100年で25日というゆっくりしたペースでしたから、現実
 の生活には困らなかったのかもしれません。

 これを修正して、 4年に一度のうるう日を入れるようになったのはBC 238年
 のこと。それだって充分昔の話ですが、5000年以上もあるのエジプト暦の歴
 史からすると、最近の話なのかもしれません。


◇エジプト暦の末裔
 現在もエジプトやエチオピアの古キリスト教(コプト教)の教徒が用いるコ
 プト暦はこのエジプト暦の流れを汲み、月の名称、12ヶ月の末の 5日の余日
 と4年ごとのうるう日など、エジプト暦の伝統に則っています。

◇時機(じき)に遇った星
 エジプト暦が生まれた頃はナイルの氾濫予測に有効であったシリウスのヘリ
 アカル・ライジングですが、シリウス自体の固有運動(恒星もそれぞれ固有
 の運動をしており、少しずつ位置が変化する)と歳差(地球自転軸の向きが
 約 25800年の周期で移動する運動)の影響で現在はその時期が変化し、洪水
 予測には使えなくなっています。

 ちょうどよい時を「時機」と言います。シリウスはエジプト文明の黎明期に
 たまたま洪水予測に適する位置にあり、エジプト文明を通じて暦にその痕跡
 を残しました。数千年時代が違っていれば、シリウスが暦におけるそうした
 役割を担うことは無かったでしょう。
 そういう意味で、シリウスは時機に巡りあった星だったのです。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2006/12/13 号

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