こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■クリスマス
 本日はクリスマス・イブ。明日はクリスマスと云うことで、避けては通れな
 い(?)クリスマスの話です。

◇クリスマスはイエスの誕生日?
 クリスマスは何の日かと質問すれば、返って来る答えはイエス・キリストの
 誕生日と言うのがほとんどでしょうが、果たして。

 福音書の記述にはイエスの誕生日が書かれていません。そのためキリストの
 誕生日は福音書が書いている誕生の前後の事実から推定するしかないのです
 が、そうした推定された誕生日の中に、12/25 というクリスマスの日付は見
 つかりません。

 たとえば、イエスが厩で生まれたとき、一番にこれを祝福に訪れたのは近く
 で野宿していた羊飼いであったとされていますが、冬のこの時期には氷点下
 にまで気温が下がると言うシナイ半島で野宿しているというのはかなり無理
 が有りますし、大体冬の草のない時期に羊飼いが荒野で野宿する必要性がな
 い(草がないので、この時期に放牧するはずがない)。
 この羊飼いの記述が事実であるとすれば、イエスの誕生日は初夏の頃辺りが
 それに相応しそうです。

◇クリスマスはイエスの「誕生を記念する日」
 イエスの降誕記念日については三世紀始め頃、アレキサンドリアのクレメン
 スが5/20と推測しています(これだと、先に書いた「初夏の頃」に合致しま
 すね)。

 現在の12/25 がクリスマスとして祝われている記録はAD336 のローマの行事
 を記述したフィロカロスの暦が最古と言われています。ここには12/25 にキ
 リストはベツレヘムでお生まれになったと書かれていると言うことですが、
 これは史実としての日付と言うより「太陽の誕生」の日と考えられた日付に
 「義の太陽の誕生」という意味で当てられたものだろうと言われています。

 キリスト教歳時記(八木谷涼子著・平凡社新書)によれば、12/25 日はイエ
 スの「誕生を記念する日」であって、この日にナザレのイエスが生まれたと
 本気で主張するクリスチャンは子供を除いてはいないと書かれていました
 (本当か否かは、周辺にクリスチャンがいないので確認していません)。

◇キリスト教の布教とクリスマスの関係
 キリスト教は世界宗教として拡がって行く過程で、聖人の記念日の多くをキ
 リスト教布教以前にその地で行われた行事の日付に当てるという戦略をとっ
 てきました。

 これは、その地域で行われている行事はそのままにして、行事の意味だけを
 キリスト教的なものにすり替えることによって、大きな抵抗を受けることな
 く、徐々にキリスト教的世界に人々を感化する戦略と言われます。

 12/25 のクリスマスもこの戦略の一環。
 この日は当時のローマでは「冬至祭り」の意味合いの日で、キリスト教以前
 にローマ帝国で広く信仰されていた太陽崇拝のミトラ教では、

  不滅の太陽の誕生の日

 として大々的に祝われる日だったのです。太陽の誕生日が、冬至に当たって
 いたこの日とされたのは至極当然と考えられます。
 これに対して、キリスト教ではこの日を

  義の太陽(すなわちキリスト)の誕生の日

 としてこの冬至祭りを、キリストの誕生を祝う日へと変質させていったので
 す。太陽に対して「義の太陽」というキリストの象徴に置き換えたと云うこ
 とですから、人間としてのイエスの誕生日という意味はそこにはないことが
 お解り頂けると思います。あくまでも象徴としての

  キリストの誕生を記念する日

 なのです。

◇二つのクリスマス
 西方教会と呼ばれるローマ・カソリックやプロテスタントの多くは、祭礼の
 日付を現在のグレゴリウス暦で祝います。

 これに対して東方正教会と呼ばれる正教会系の教会では祭礼の日付はユリウ
 ス暦を用いている場合が多いので、ユリウス暦での12/25 に当たる日(現在
 なら、翌年の 1/7がクリスマスとされています(日本の正教会系の教会では、
 クリスマスだけはグレゴリウス暦での12/25 日としているところもあるそう
 です)。

◇・・・
 息子( 5歳)に、「クリスマスって何の日?」と尋ねたら

  「ケーキを食べて、サンタさんにプレゼントをもらえる日」

 と答えました。現代日本の大部分の人にとってのクリスマスの意味ってこの
  5歳児の答えのようなものでしょうか。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2006/12/24 号

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