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■時刻と時間 ・・・ その1
 暦の話をする上で、避けては通れないのが「時」の話。
 そして「時」の話をするときに避けては通れないのが「時刻」と「時間」の
 話。本日はこの時刻と時間という言葉について考えてみます。

◇日常会話における「時刻」と「時間」
 時刻も時間も同じものじゃないのとおっしゃるかたも多いと思いますので、
 実例として次の言葉を考えてみましょう。

 ア.今何時? 誰か今の 「○○」 を教えて。
 イ.約束の 「○○」 に遅れそう。
 ウ.現在の 「○○」 は零時。日付が変わりました。
 エ.急いで急いで、もう 「○○」 が無いんです。
 オ.明日の日の出の 「○○」 は 午前 6時10分です。

 さて、日常会話でもよく使われるような例文を 4つ作ってみました。この例
 文の中の「○○」に「時刻」または「時間」という言葉を入れて使ってみて
 下さい。

 「時刻」でも「時間」でもどちらでも入りそうなものと、そうでないもの、
 あるいは、入りはするけど違和感を覚えるものなど有るはずです。その違い
 に気が付くようでしたら、なぜ違いがあるのか考えてみて下さい。

◇辞書に書かれた「時刻」と「時間」・・・広辞苑第四版より
 言葉に迷った時には、まずは辞典からということで、国語辞典を引いてみま
 す。

 【時刻】 
  A.一瞬一瞬を刻みつつ流れるものとしての「とき」。
  B.時の流れにおける或る一瞬。

 【時間】
  a.時の流れの二点間の長さ。
  b.俗に時刻と同義。
  c.空間と共に人間の認識の基礎を成すもの。時間(a)と時刻とを併せ
    たような概念。

 解ったようで、解らない辞書の記述ですが、時刻と時間の違いを示す重要な
 キーワードはやはり入っています。それは、

  ・時の流れにおける或る一瞬 → 時刻
  ・時の流れの二点間の長さ  → 時間

 時刻は「一瞬」で時間は「長さ」。これがキーワードですね。

◇暦と「時刻」の関係
 暦は元々は天文観測から作り出されてきたものです。こうした天文現象の観
 測から求められる或る瞬間とは、時刻でしょうか、それとも時間?

 簡単な例をあげて考えてみましょう。太陽中心が真南を通過する瞬間(南中
 といいます)を正午(12時)とすると言うとき、この「正午」は時刻か時間
 か。これに対する答えは「時刻」です。

 太陽が真南を通過するのは(長さのない)一瞬のこと。辞書の説明Bにある
 「或る一瞬」です。

◇暦と「時間」の関係
 暦の中には、 1年とか 1月、 1日と言った時の長さを表す時間の単位があり
 ます。もっとも身近で解りやすいものとしては、例えば 1日。昔から太陽が
 南中し、翌日再び南中する長さを 1日の長さとしています。現在はこの「太
 陽」に現実の太陽でない「平均太陽」という架空の天体を用いるのですが、
 まあその話はひとまず置いておきます。

 時間の単位である 1日とはこの説明でもわかるとおり、「太陽の南中を二度」
 観測しないと長さが決まりません。辞書の解説aの通り、時間ですね。

◇時刻は「点」、時間は「線」
 辞書の説明でも暦との関係との説明でも述べたとおり、

  時刻は長さのない「点」
  時間は長さのある「線」

 を表す言葉です。時刻という点を二つ以上もうければ、その点と点の間に長
 さを持った線が出来ます。この線が「時間」。

 長さを持った線は、つなげて延ばすことも出来ますし、細分化することも出
 来ます。
 1 日をつなげて行けば、 1年というより長い単位を作ることが出来ます。24
 等分に分割すると 1時間という短い単位も作ることが出来ます。

 これに対して長さを持たない点である時刻は、つなぐことも分割することも
 出来ません。
 太陽が南中する瞬間は、ただ一度きりで、つなぐことも分割することも出来
 ません。ただ、「今日の南中」と「明日の南中」という別々の点が存在する
 だけです。

 卑近な例として定規を考えてみて下さい。定規には長さを測るための目盛り
 が刻まれて(印刷されて?)います。
 この目盛り一つ一つは時における「時刻」であり、この目盛りを使って計ら
 れる長さが「時間」なのです。

◇「日の出の時間」は「日の出の時刻」
 冒頭で採り上げた例で、「日の出の○○」と言うものを掲げています。
 日常の会話では、「明日の日の出の時間」と言うことも多いのですが、日の
 出という現象は定義上、「或る一瞬」を表す言葉ですから、正しくは

 「明日の日の出の時刻」

 となります。

 「時刻」と「時間」、同じなようで同じでは無い言葉。
 この違いは、とっても大切なので「時刻と時間」の話はまた続きを書くこと
 にします(明日になるか、ずっと先か?)。

 ではまたそのときに。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2007/01/25 号

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