こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■山がちな場所での日の出の時刻は・・・その2
◇山があったら、どれだけ日の出が遅れる?
 昨日は山の頂が水平線上どれくらいの角度に見えるかを 1000mの山を例とし
 て示しました。ここでもう一度その数字を見てみます。

  A.山まで 10km ・・・ 見える (+5.7度)
  B.山まで100km ・・・ 見える (+0.2度)
  C.山まで200km ・・・ 見えない(-0.5度)

 C は仰角がマイナスですから、水平線下に見えると言うことです。地球が透
 明で無い限り水平線下なのでこれは「見えません」から考える必要なし。
 残りのA,B について考えてみましょう。
 話を判りやすくするため、春分の日の朝日を考えます。また朝日を観測して
 いる場所の緯度は北緯35°としてみます。

 この条件だと春分の日太陽は真東から昇り、昇る角度は地平線に対して55°
 となります。また天の赤道と呼ばれる場所に有ります。
 このとき、太陽は日周運動で天の赤道に沿って 1分間に0.25°で動いて見え
 ます。この速度で太陽が地平線から一定の仰角 H°に達するまでの時間 T分
 を求めるとどうなるか考えると、

  T(分) = H / sin(55) / 0.25 ・・・ 式 1

 先に掲げたA,B の仰角+5.7°,+0.2°を Hに入れて計算してみると、

  A の場合 : 5.7 / sin(55) / 0.25 = 27.8(分)
  B の場合 : 0.2 / sin(55) / 0.25 =  1.0(分)

 となります。これはあくまで簡略な近似計算なので厳密ではありませんが、
 目安にはなる数値です。A の場合の結果を見ると 1000mの山が10km先にあり
 そこから日が昇るとすると、その日の出の時刻は、水平線を基準に計算した
 日の出時刻より30分近くも遅れることになります。

 ご存じの通り、日の出は西に行くほど遅くなりますが、A の例の27.8分も遅
 れるためにはどれくらい西にいかないといけないかと言うとざっと 630km。

 これは、東京・大阪間より長い距離。ちょっとビックリする値ですね。
 こんなに大きな変化なのに、山がちな場所での日の出時刻計算にはなぜこの
 影響を考慮していないのでしょう(個別に特別に計算する例は別として)。
 次からはその理由を考えてみます。


◇日の出を見る場所と山までの距離と日の出
  Aの場所に住んでいる人と、そこから西に 2km離れたA'の場所に住む人が
 日の出の時刻を調べたとします。左記の例の春分の日の条件で考えてみます。
 A'で見た山の仰角を計算してみると

  A'.山まで 12km ・・・ (+4.7度)

 お、A での仰角は+5.7°だったのに、A'だと+4.7°。 2kmの違いで、 1°も
 違います。日の出の時刻の遅れを計算した(式 1)に入れて考えると、A と
 A'での日の出の時刻の差は

   4.9分 (A' は Aより4.9分日の出が早い)

 という結果になります。A'は Aよりほんの少し西にありますから、本当は日
 の出は遅くなるはずですが、この西にあるため日の出の遅くなる効果は、2km
 と言う距離では、

    5秒 (A'は Aより 5秒日の出が遅くなる)

 程度でしかありません。差し引くと、《4.9分 - 5秒 ≒ 4.8分》。西に行く
 とと言う効果は、山までの距離の変化による効果に比べると微々たるものだ
 と言うことが分かりますね。
 逆に言うと、山までの距離がちょっと変わると、日の出時刻は大きく変わる
 と言うことがお解りになると思います。


◇山がちな場所でも「水平線からの日の出」を計算する理由
 前段で山から、10kmと12km離れた場所(相互には 2km離れている)での日の
 出の時刻の違いを求めました。そしたらその差はおよそ 5分。

  2kmなんて近所と言ってよい距離です。例えば、「○○町の日の出時刻」と
 いったとします。○○町の端から端までは10km位あるのはちっともおかしな
 ことではないでしょうから、山がちな場所にある○○町であった場合、同じ
 町内でも日の出時刻が十数分違う何て言うことは、よくあることになってし
 まいます。

 なら、例えば町役場や、駅の位置で計算したら・・・と言う案もあるでしょ
 うが、町役場から離れた場所に住む人にとっては結局そうした値もあまり役
 に立つものではないと思います。

 山がちな場所における日の出はこのような事情から、日の出を観測する場所
 を「ピンポイント」で指定しない限り正確に求めることができないのです。
 また、障害物になる山にしても、全部が山頂の高さというわけでは無く、日
 の出がその山のどの部分で起こるかも計算しないといけません(そして日の
 出の起こる場所は日毎に変化します・・・)。

 ピンポイントで指定して山の形も考慮して自宅での日の出の時刻を一所懸命
 に一週間分求めたとしても、一週間後にあなたが近所で散歩中に日の出を見
 たとすると、もうその計算した結果と何分も違ったものになります。
 こう考えてくると、

   そこまでして計算してどうなる?

 と思いませんか?
 このようなわけで、現実の対応としては「目安として水平線を使った当たり
 前の日の出時刻計算」で終わるわけです。

 どうしても厳密に知りたいという特種な用途に関しては、個別に計算すると
 して、ごく普通の「日出没時刻計算」には、山からの日の出時刻を計算しな
 い理由はこの辺りにあります。


 さて、2回にわたって「計算」に重点を置いた記事を書いてきたのですが、
 日の出の時刻計算には、単なる「太陽という天体の出現時刻」とは違う意味
 があり、それもこの話には関係するので、更に続編を書く必要がありそうで
 す。ただ、長くなりすぎましたので本日はここまで。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2007/02/08 号

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