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■ベトナム・中国・日本、それぞれの旧正月
 Web こよみのページの連絡用メールアドレスに次のような質問が入っていま
 した。

 ------------ Web こよみのページへの質問メールより抜粋 --------------

  友人(ベトナム在住)からのメールにてベトナムでは今年の正月(旧暦)
  は2月17日だったそうです。
  また中国本土の正月は2月19日だったと聞いています。

  ところが「こよみの頁」によれば旧暦1月1日は2月18日とされてい
  ます。このようなずれはどうして生ずるのでしょうか?

  (質問者 T.T さん)
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 このうち中国の旧正月(中国では「春節」という祝日に当たります)の2/19
 と言う話はどこから出たものか。

 中国の旧暦(「農暦」と呼ばれます)も基本的には日本の暦と同じ方式と考
 えてよいものなので、時差の問題を考慮すれば、同じように計算出来ます。
 実際に中国(北京標準時)で計算すると、答えは2/18。日本と同じです。

 一応、ネットで中国の新聞社のニュースなどもチェックしてみても、2/18に
 「春節」が祝われているので間違いなさそう。

 ただ、中国大使館の「お休み」の予定には「春節のため2/19〜23まで休館」
 とありましたけれど、これは2/18が日曜日でもともと休館だったから書かな
 かったようです。思い当たる2/19の例はこれくらい。
 中国の件は、多分T.T さんの勘違いのようです。


◇ベトナムの旧正月は2/17だった?
 中国の2/19は多分何かの間違いで、本当は2/18だったはずと書きましたが、
 ベトナムの2/17も何かの間違い?

 ベトナムも長く中国の影響下にあった国ですから、昔は暦も中国の暦を使っ
 ていました。ですから、ベトナムの旧暦も基本的には中国の旧暦と同じもの
 です。ベトナムの旧暦が中国のいつの時代の暦を基にしたのか、あるいは、
 独自に改正した部分が有るのか不勉強のため知らないのですが、仮に中国の
 最後の太陰太陽暦である時憲暦に準拠し、現在の天体暦の数値で計算されて
 いるとしたら、私でも計算出来るので、

   きっと同じもの

 と考えて計算してみました。
 旧暦の正月とは、二十四節気の「雨水(正月中)」を含む月。そしてこの月
 の区切りはお月様の新月から次の新月までです。雨水を日本の旧暦や時憲暦
 が行っているように「定気法」で計算すると次のようになります。
 (それぞれの国の世界時との時差は、ベトナム +7時間、中国 +8時間、日本
  +9時間 として考えています。)

  A.ベトナムでの雨水の日時・・・2007/2/19 08時09分
  B.中国での雨水の日時  ・・・2007/2/19 09時09分
  C.日本での雨水の日時  ・・・2007/2/19 10時09分

 日時は、何れもその国での「現地時」です。
 これによると、「雨水」は何れの国でも2/19日。
 旧暦元日は、この雨水の直前の新月(朔)の日付となりますから、これを計
 算してみましょう。計算結果は以下の通り。

  a.ベトナムでの新月の日時・・・2007/2/17 23時14分
  b.中国での新月の日時  ・・・2007/2/18 00時14分
  c.日本での新月の日時  ・・・2007/2/18 01時14分

 おっと、こちらでは日付が違っていますね。ベトナムだけ2/17です。
 この差は日付の後の時間を見て頂ければ判るとおり、中国や日本とベトナム
 では、1〜2時間の時間差だけですが、ちょうど日付が変わる辺りですから、
 こうしたずれが生じてしまいました(原因は時差です)。

 この計算からすると、ベトナムの旧正月(元日)は現在広く使われるグレゴ
 リウス暦(日本の新暦も)では2/17となり、中国と日本では2/18と 1日のず
 れを生じます。

◇ベトナムと中国・日本の旧暦は違うの?
 学問的な問題としては同じものでは有りませんが、それは

   専門家でないと判らない微妙な違い

 程度の話で、今回の話では「基本的に同じもの」と見なして差し支えないも
 のです(ベトナムの暦が判らないので、最後の中国の時憲暦の伝統を引いて
 いると言う前提での話ですが)。

 そして、旧暦の計算方式では、同じ計算をしても「時差がある地域」では暦
 の日数が変わることがあります。今回の例はそれ。
 こうした違いは、今に始まったことではなくて、旧暦が正式に使われていた
 時代だって起こっていました。

 ちなみに、元日が 1日違ったので二月、三月も日付がずれるのかと言えばそ
 んなことは有りません。
 今回の例では、

  ベトナムの旧正月は  「大の月(30日の月)」
  中国や 日本の旧正月は「小の月(29日の月)」

 となるので、ここで直ってしまいます。

◆現在世界で広く使われている「グレゴリウス暦」では月毎の日付が決まって
 いて、この暦を採用している国々では国毎にカレンダーが異なるなどと言う
 ことは有りません。

 日本の新暦もこの暦ですから、我々もこれを使って百年以上。そして世界中
 同じカレンダーを使うことに疑問を持たなくなりました。

 そのため、旧正月の日付が国によって違うという話をすると、使っている暦
 (暦法)が違っているのかと思われがちですが、そうではなくて同じ暦(暦
 法)を用いても、計算の原理的から日付が変化してしまう可能性が有るので
 す。

 本日は、Web 宛に送られてきた質問からスタートしましたが、暦についての
 面白い内容を含んでいたので流用させて頂きました。
 T.T さんへは、このメールマガジンを回答として送らせて頂こうっと。
 (質問にも答えられて、一石二鳥)


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2007/03/03 号

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