こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■土用丑の日・・・その2
 本日7/30は土用丑の日。
 鰻たちにとっては一年最大の「受難の日」であるこの日の話を昨日に引き続
 きお送り致します。


◇夏やせには鰻
 土用の丑の日には鰻という話となると必ず採り上げられるのが万葉集の大伴
 家持の和歌、

  石麻呂に吾物申す夏痩せに吉しと云うふ物ぞむなぎ取り食せ

 というのが有ります。「むなぎ」は鰻のこと。
 きっと夏痩せしてしまった石麻呂という人に、夏痩せには鰻がいいというよ、
 とってきて食べなさいと言った意味ですね。
 万葉集に登場するくらいですから、精力のつく食べ物としての鰻の歴史は大
 変古いようです。

 ちなみに「むなぎ」とは、鰻の胸(腹)が薄黄色で有ることから、

  「胸黄(むなぎ)」 → 「鰻(うなぎ)」

 となった、鰻の語源だと云われています(天然物は確かに腹が薄黄色)。


◇土用の丑の日に鰻の始まり
 土用の丑の日に鰻を食べるという習慣は江戸においては「安永・天明の頃よ
 り起こる《明和誌》」と有ります。安永・天明の頃というとAD1764〜1781年
 頃と言うことになりますから、ざっと 250年程前からと言うことになります。
 思ったより新しい行事という気もします。


◇土用丑の日と鰻の組み合わせ・・・春木屋説
 神田の春木屋善兵衛という鰻屋に、どこぞの殿様から大量の鰻の蒲焼きの注
 文がやって来ました。とても一日で焼けるような分量ではないと言うことで、
 三日間焼き続けて納入することにし、「子・丑・寅」の三日間焼き続け、焼
 き上がった蒲焼きは床下の甕の中に保存しました。

 さて、いざ殿様へ納入という段になって甕から出してみると、子と寅の日に
 焼いた鰻は傷んでおり、丑の日に焼いた物だけが状態が良かったということ
 で、それ以来「鰻を焼くのは丑の日」と云うことになったという由来説が江
 戸買物独案内という本に書かれています。

 しかしこれはあまりに作為的という気がします。だいたい三日かけないと焼
 けないほどの大量の注文を一つの店で受けるのはおかしい。結果的に子・寅
 の日に焼いた蒲焼きは傷んでいたわけで、そんな物まで納入されたら食中り
 してしまいます。かといって、丑の日の分だけ納入したら注文分の 1/3しか
 ないのですから、これもダメでしょう。

 どっちにしたって春木屋さんはただでは済みませんね。
 まあ、その注文主が「どこぞの殿様」とはっきりしない段階で眉唾かな?

◇土用丑の日と鰻の組み合わせ・・・平賀源内説
 食欲の減退する猛暑の時期、こんな時に脂っこい鰻は勘弁と敬遠されて困っ
 ていた鰻屋が江戸末期の万能学者として有名な平賀源内に何とかならないか
 と知恵を借りに行ったところ、源内先生が一計を案じて、

  「本日土用の丑」

 と大書して鰻屋の前に張り紙をしたところ、これが評判になって大繁盛した
 ことが始まりであるという説があります。

 この説はいろいろな本に、「土用の丑の日の鰻」の始まりとして採り上げら
 れる説なのですが、なぜ「本日土用の丑」と書いただけで繁盛したのかとい
 う謎解きが不足しているように思いますがいかが?

 この謎については、私は、

  a.鰻屋に「本日土用丑の日」とあるので、鰻を食べろと云うことだと思う
  b.土用の丑の日になぜ鰻なのかは判らないが、判らないとは言えない
  c.判らないけど、土用の丑の日には鰻を食べるものらしい
  d.そんなのあたりまえだと、知ったかぶりしてここは買うしかない

 と知ったかぶりの江戸っ子が考えるのを予想しての巧みな宣伝だったのでは
 ないかと考えております。さて本当はどうなのでしょうね?

◇土用丑の日と鰻の組み合わせ・・・五行説による呪術説
 夏の土用は、五行説では「火気」の夏と「土気」の土用が「火生土(火土を
 生ず)」という関係にあって、火の気が異常に強まってしまう時期(つまり
 暑すぎる時期)と言うことで、これを抑えるのに水気(「水剋火(水は火に
 剋(か)つ」)で導入するため、この期間の水気の日である「丑の日」を導
 入するという呪術的な行事だという説が有ります。

 水気は色は「黒(玄)」。
 鰻は魚ですから水気の象徴でありかつその色は黒と言うことで、火気を抑え
 る水気の象徴としてピッタリ。
 また、夏ばて防止の精の付く食べ物として知られていたこともあって、これ
 が取り入れられたものだというのです。
 こちらは少々理屈っぽい話なのですが、うなずけるところもあります。


 さて皆さんはどの由来説がお好み?
 どの由来が正しいとしても兎に角本日は日本中で鰻が大量に蒲焼きにされる
 ことだけは間違いなさそうですね。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2007/07/30 号

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