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■「始めて○○」・・・七十二候の言葉
 Web こよみのページ宛に次のような質問を頂きました。

 >  現代七十二候の中の「桃始めて咲く」とか「雀始めて巣くう」とか、漢
 > 字的には「初めて」だと思うのですが、古い資料などは「始」という字に
 > なっていますね。
 > どちらが正しいのでしょうか?
 > 普通に使う言葉なら「桃初めて咲く」だと思うのですが。
 (N.K さんからのメールより抜粋)

 そう言われると確かにそうですね。七十二候から、いくつか拾ってみると次
 のような例があります。

  虹始めて見る  (清明末候  4/15頃)
  蛙始めて鳴く  (立夏初候  5/06頃)
  天地始めて寒し (処暑次候  8/28頃)
  水始めて涸る  (秋分末候 10/03頃)
  地始めて凍る  (立冬次候 11/13頃)

 などがあります。
 「始」と「初」ではどう意味が違うのか、気になりますので調べてみました。

  はじめ【始め・初め】
   <名詞>
    1.起こり。始まり。
    2.最初。初め。
    3.(序列の)第一。主要のもの。
    《学研古語辞典》

 と古語辞典ではいきなり躓きました。この書き方だとどちらでもいいと言っ
 ているようです。
 古語辞典でダメだったので、今度は漢和辞典に当たってみます。

  【初】
   1.{名詞}はじめ。ことのおこり。最初。もと。<対語>⇒終・後。
   2.{名詞}はじめ。物語のおこりを説きおこすことば。
   3.{副詞}はじめて。最初に。
   4.{副詞}はじめて。やっと…したばかり。

  【始】
   1.{動詞}はじまる。はじめる(はじむ)。<対語>⇒終。
     <類義語>⇒初。
   2.{名詞}はじめ。物事のおこり。当初。《対語》⇒終・末。
   3.{副詞}はじめて。その時になってはじめて。やっと。
   4.「未始(イマダハジメヨリ・・・ズ)」とは、最初からこうであっ
     たためしはない、はじめからそうではない、の意。
   《学研漢和大字典》

 これもよく似ているのですが、「始」の最初の意味として動詞があげられて
 いるのがちょっと違っていることに気がつきます(類義語として「初」とな
 っていますが)。
 また、字義としては「初」は布地に最初に「刀」を入れるという意味(だか
 ら、衣+刀)で、一つの布地においては一度きりしかない瞬間を指します。

 これに対して、「始」は、鍬で大地を耕す(「ム」は鍬を表す)、口でもの
 を言う(「口」そのもの)、子供を宿す(「女」。「始」は「胎」と使われ
 ることもあるとか)等の始まりという意味で、はじまってから後、継続する
 ことに使われるようです。

 暦の上で「始めて○○」と言った書き方はたくさんありますが、それを見る
 と「始まって、その後継続するもの」ととらえるとわかりやすい表現が多い
 ように思います。最近の七十二候で言えば、8/28は処暑の次候で、

  「天地始めて寒し」

 もその例です。
 ここで注意しておくべきことは、七十二候も二十四節気もその日だけのこと
 を言っているのではなくて、ある一定期間の状態を表しているということで
 す。上記例ですと、このころから、

  「天地が寒くなってゆく」

 という変化が始まりこの寒くなってゆくという変化が継続してゆくことの始
 まりだと言えるのではないでしょうか。
 だとすると、この日が「天地が寒い最初の日」ではないということです。そ
 れが七十二候などが「始めて○○」で「初めて○○」でないことの理由なの
 では無いでしょうか。

 一応辞書の記述を見てもわかるとおり「始」と「初」とはよく似た使い方を
 されるようなので、どちらを使っても「間違い」とは言えないのではないで
 しょうか。私の場合は、すでに書いたとおり何かの継続する変化の始まりと
 言う考えでとらえているので、ここは「始めて」と使うことの方がより妥当
 だと考えています。

 今回は、暦の話と言うより言葉の話。言葉の話なので私の考えはただの素人
 考えの域を出ないのですが、暦の上に見かける

  「始めて○○」

 の表現について考えると、以上のような結論にたどり着きましたので、参考
 まで書いてみました。
 皆さんはどう思いますか?


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2007/08/24 号

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