こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■『満月』今昔
 本日は、伝統的な満月と現在の満月についての話です。
 話の発端は、いつもの如くWeb こよみのページ宛に送られてきた質問メール
 です。その質問の内容はと言うと、

 > 「お月様の満ち欠けと呼び名(月の名前)」の中の「立待月」の項に、
 > 「月の出は日没からだいたい 1時間40分後なので・・・」とありますが、
 > 国立天文台のHPで「日の出入り」、「月の出入り」を調べますと、 9月
 > 27日の日没は 17:50、月の出が 17:56(観測地:神戸市)となっていて、
 > その差は 6分となっています。

 「国立天文台のHPで「日の出入り」、「月の出入り」を調べますと」とある
 のがちょっと悲しいです。こよみのページにも日出没、月出没計算のページ
 があるのに・・・。Web こよみのページで計算してみる(意地になってる?)
 と9/27日没と月出時刻は、

  9/27 日没 17:51 , 月出 17:56 (計算地 神戸市。月出は上辺で計算)

 となります。ちょっと違っているのは計算地点の経緯度の違いと出没に関す
 る定数が天文台のものとちょっと違っているからですが、まあ問題になる差
 ではないでしょう。
 新暦の9/27(2007年)は旧暦に直すと、8/17日となります。と言うことはこ
 の日の夕方に昇る月は立待月(たちまちづき、十七夜の月)と言うことにな
 ります。

  「立待月の月の出はだいたい日没後 1時間40分」

 という解説と現実は確かに全然違いますね。


◇伝統的な月の呼び名と旧暦日
 皆さんよくご存じの通り、旧暦と呼ばれる暦は月の満ち欠けによって日付が
 決められる暦でしたから、暦の日付を見ればその日の月の満ち欠けの様子が
 おおよそ判ります。例えば、一日なら新月、七日なら上弦の月、十五日なら
 満月頃だなという具合です。

 立待月のような伝統的な月の呼び名は、この暦日と月の満ち欠けが密接な関
 係を保った旧暦の頃に生まれた呼び名です。ですから、「立待月」と言うだ
 けで、旧暦ではその日が何日か判ります。十五日以降のよく使われる月の名
 前を書けば、


  十五日 : 十五夜、満月
  十六日 : 十六夜(いざよい)月
  十七日 : 立待月
  十八日 : 居待月
  十九日 : 寝待月

 と言った具合です。上記の月名の中でも十五夜、十六夜月、立待月などはよ
 く使われる言葉で、十六夜と言えば満月の翌日、立待月なら二日後とすぐに
 頭に浮かぶはずです。


◇今昔『満月定義』
 さて、月の満ち欠けによって決められた旧暦時代にみんなが考えた満月とは
 「十五夜の月」でした。ですから今でも中秋の名月は、旧暦の八月十五日の
 夜の月、つまり旧暦八月の十五夜の月を指す言葉として使われます。

 ところがこの十五夜の月は、現代においては必ずしも満月とはなりません。
 これはどうしたことかというと、現代における満月の定義は、

  「太陽と月の黄経差が 180°となる瞬間を含む日」

 です。これが天文学的な満月で、現在新聞などに「満月」と書かれるのは、
 この定義に従って決定された日付です。現在我々はこの天文学的な満月を満
 月と考えるのが普通になっていますが、この満月の日は必ずしも旧暦の十五
 日とはならないのです(それどころか、実は十五夜の月が満月にならないこ
 との方が、満月であることより多い)。

 例えば今日は旧暦では七月十四日。明日が十五夜となりますが、本当の満月
 の日は明日ではなくて、明後日となります。今月も十五夜と満月が一致しな
 い月となっています。


◇立待月の出の時刻と日没時刻がほぼ同じになった理由
 既に書いたとおり、「立待月」は旧暦の十七夜の月。これは、十五夜の月を
 「満月」とする考えからすると、満月の翌々日の月の呼び名となります。

 今回問題となった9/27(2007年)は旧暦では、八月十七日ですから、立待月
 と言えますが、「満月の翌々日の月」という観点からは立待月とは言い難い
 月です。天文学的な満月(現代の我々が普通に言う満月)という観点からす
 ると、9/27日の月は「満月」そのものになってしまうのです。

 仮に「立待月は満月の翌々日の月」だと解釈するならその日は9/29。そして
 この日の神戸での日没と月出の時刻は、

  9/29 日没 17:48 , 月出 19:04 (計算地 神戸市。月出は上辺で計算)

 となり、その差は 1時間16分。 1時間40分には足りませんが、あたらずと言
 えども遠からずと言うところでしょう。


◇平均的には・・・
 天文学的な満月(現代の満月)と十五夜の月(伝統的な満月)のずれが、今
 回の問題の大きな原因となったことはご理解頂けると思います。
 では、毎回こんなにずれているのかというと、そんなことはなくて、平均化
 すれば、十五夜の月は天文学的にも満月になるといえます(ずれの最大日数
 は 2日)。

  「立待月の月の出はだいたい日没後 1時間40分」

 と言う記述は、伝統的な月の呼び名に関する解説の一部として書いたもので
 すので、厳密な時間ではなくて、「平均化した月」の状態について書いた説
 明です。そのため今回のように「平均からのずれが大きいとき」には大きな
 違いが現れたというわけです。


 本日はひとしきり、お月様の話を致しました。お月様の話と言えば、明後日
 は満月(天文学的な)で、皆既月食がありますので、その前日にあたる明日
 は、この月食にまつわる話を書こうと思います。二日続きでの月の話ですが、
 「もう飽きた」なんて言わずに、明日もお付き合い願います。では。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2007/08/26 号

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