こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■新盆
 お盆は関東など一部を除いては今でも旧暦や擬似的な旧暦とでもいうべき月
 遅れの日付で行われるようです。そのためお盆の本来の日付は7/13〜15(or
 16) の期間ですが、お盆行事は 8月に入ってから行われることが多いです。

 さて、昨日の夕方近所をうろうろしていると、一軒の家に高灯籠(たかどう
 ろう)が掛かっているのが目に入りました。それを見て、ああ 8月に入った
 のだなと実感しました。

◇旧暦と月遅れの旧暦
 新盆の話しに入る前に、ちょっと旧暦と月遅れの暦についておさらいをさせ
 ていただきます。

 古くからの行事を旧暦で行う地方はまだ有りますが、ご存じの通り旧暦は一
 年の日数が新暦とは大分違い、その日数もまちまちなので新暦と旧暦の日付
 の関係は年毎に変化して分かりにくいです。例えば今日の 8/2という日付が
 旧暦では何日に当たるかここ数年を例として掲げると次の通りになります。

 ・新暦 8/2の旧暦での日付
  旧暦 → 2007/06/20 ,2008/07/02 ,2009/06/12 ,2010/06/22 ,2011/07/03

 2007〜2011の 5年間だけで見ても 8/2という新暦の日付に対応する旧暦の日
 付は 5種類。つまり全部違っているわけです。
 「伝統行事を旧暦で」といっても実生活では新暦を使って暮らしていること
 を考えると、こうまちまちでは分かりにくいということで、考え出されたの
 が単純化した疑似旧暦とでもいうべき「月遅れの旧暦」です。

 何のことはない、旧暦の日付に「プラス一ヶ月した新暦」を仮の旧暦と見な
 すというものです。つまり旧暦 7/15なら、

  旧暦 7/15 + 1ヶ月 → 新暦 8/15 (月遅れの旧暦)

 という具合です。「月遅れの旧暦」何ていっても全く旧暦とは違うものです
 が分かりやすいこと、新暦での生活と整合させやすいことから現在では広く
 使われている方式です。
 なお、偶然ですが今年(2008年)の 8月は 8/1が旧暦の 7/1と新暦と旧暦の日
 付がちょうど一月違いなので、月遅れの旧暦 8月と旧暦 8月が一致していま
 す。毎年こうなら悩むことがないのですが。

◇高灯籠(たかどうろう)と新盆(あらぼん)
 さて、冒頭で高灯籠を見て、「ああ 8月だ」と思ったのは高灯籠が掛けられ
 る日付が 6月の晦日か或いは 7月の朔日だからです。日付はもちろん「旧暦」
 でのもの。とすれば新暦では 8/1頃にこれが掛けられることになるからです。

 さてこの高灯籠ですが、その家で出た死者が最初に迎える盆、新盆にこの死
 者の霊を導くために建てられるものです。
 新盆は「あらぼん」「にいぼん」「しんぼん」などと呼ばれます。私自身は
 「にいぼん」と聞いて育ちました(「あらぼん」とも聞いた気がしますが)。

 新盆にかつての家に帰ってくる「仏様」はまだ仏様に成り立てでこの「帰省」
 も最初ですから、あの世からの道順にも不案内。そう言う訳で、道に迷わず
 に真っ直ぐ帰って来ることが出来るようにその目印として建てられるのが高
 灯籠です。
 江戸時代に書かれた「守貞漫稿」には

  死亡ありて三年あるひは七年の間、六月晦日より七月三十日に至り、
  高灯籠を栽(た)つ

 と有ります。さてこう書かれていてもこの高灯籠の形が分かりません。守貞
 漫稿は更に続けて、

  長さ六、七間の杉丸太上に三角のいらかを結び、杉の葉にて包み、四手
  を切りてつけ、灯籠は辻番の行燈の形に小さく作り・・・

 と説明しています。これではピンとこないのですが、守貞漫稿の良いところ
 は、こうしたものに対して筆者が「絵」を書いて残してくれていることです。
 そしてその絵が上手なので、この絵を見るとなるほどそうかと分かります。
 このメールマガジンには絵が載せられないのでみなさんには「想像」して頂
 くしかないことが残念です(ごめんなさい)。

 ※「守貞漫稿」は国立国会図書館近代デジタルライブラリに収録されていま
  した。高灯籠の該当ページは次のURL でご覧になれます。
 http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=52009386&VOL_NUM=00002&KOMA=159

◇お盆の期間は一ヶ月?
 お盆行事の最初はというと、七月一日(旧暦の)。
 この日を釜蓋朔日(かまぶたついたち)といいます。地獄の釜の蓋が開く日
 だそうです。

 ご先祖様方はこの日「あの世」を旅立ってお盆のためにかつての我が家に帰
 省してくる訳です。ちょっと早すぎないかと思いますが、あの世は遠いので
 これくらい前から出発しないとお盆にこちらの世界まで到達出来ないのだそ
 うです。片道半月の旅行ということになります。

 ちょうどこの釜蓋朔日の日付は高灯籠を建てる日(かその翌日)に当たりま
 すから、新しい仏様が道に迷わないように目印のために建てるという目的か
 らするとぴったり。

 また、高灯籠は丸一月これを建てておくのですが、戻るのに半月かかった仏
 様方があの世に帰り着くのにも半月かかると考えると、ちょうどこの仏様方
 の帰省旅行期間中、その道を照らしているのが高灯籠と考えると期間的にぴ
 ったり。もしこの通りなら、お盆の行事の期間というのは、仏様があの世か
 ら出発して、再びあの世に戻るまでの一月と考えることが出来ると思います
 が如何でしょうか?

◇昔ながらの高灯籠
 さて、昨日目にした高灯籠ですが、大きさは大分小さめ(高さは 3〜4m、約
 2 間の高さ)。大体昔の 1/3くらいの大きさです。これは最近の住宅事情、
 土地事情でやむを得ない。大きさこそは小降りですがそれでも作りは全く守
 貞漫稿の挿絵の通り。
 結構、古い伝統って残っているものなんですね。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2008/08/02 号

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