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■暦と二十八宿の関係
 今日の暦データにも

  二十八宿 角   [かく] 衣類裁断、柱建、井戸掘吉.葬式は凶
  二十七宿 室   [しつ] 祭祀,祈願,婚礼,船乗,造作吉.

 とあるように現在ではすっかり「占い」に成り下がってしまった二十八宿と
 二十七宿ですが、本当は暦の上で重要な役割を担った時代もありました。
 今日は二十八宿の「暦の上での重要な意味」を話してみたいと思います。

◇二十八宿は中国式の「星座」の一種。
 二十八宿は、角・亢・テイ(「抵」のつくりの部分の文字)・房・心・・・
 と続く二十八個です。角宿とか室宿とかも書きます。現代の我々にはなじみ
 の薄いものですが、これは全て中国の星座の名前です。

 中国の星座はとても細かく分けられていて全部で 300程もあります。二十八
 宿はこの沢山の星宿(星座)の中で天の赤道付近に並んだ28個を指していま
 す。

◇暦と二十八宿の関係
 さて、明治の改暦以前には日本では長く太陰太陽暦と呼ばれるタイプの暦が
 使われていました。これは、月の満ち欠けの周期で暦の「月」を区切る暦で、
 この点から太陰暦の一種となります。この暦は元々は中国で生まれて種々の
 改良が行われた長い歴史を経た後で日本に輸入されたもので、日本に入って
 きた時には既にほぼ完成した暦でした。

 二十八宿はこの太陰太陽暦を作るために考案されたものです。
 中国式の新月(朔)を暦の月の区切りに使う方式の太陰太陽暦を作るために
 はなによりも新月の日付と、その位置を知ることが必要になります。

 新月は月が見えない日です。ですから直接この瞬間・位置を観測することは
 出来ません(例外は希に起こる日食)。そこで、この見えない新月が何時な
 のか、どこにあるのかを間接的に知る方法が考え出されました。

 新月が何時かという問題は、新月後に月が最初に観測された日から遡る方法
 で推定出来ます。月が最初に目撃されるのは大体三日月の時ですから、これ
 を二日遡った日が新月(朔)の日と推定されます(ちなみに「朔」は遡って
 知るものでしたから、ここから「遡」の字が生まれました)。

 新月の時期はわかりましたが、では位置はどうやってしるか、そこで登場す
 るのが二十八宿です。月の位置を毎日、星の位置と比較しながら観測してゆ
 くと月が背景の星座に対して28日弱の周期で移動してゆくことがわかります。
 毎日、月がどの星座に近い位置にあるかを観測してゆくと、大体一定の割合
 で移動してゆく様子もわかりました。

 月が星座の間を一定の割合で移動すると解ったので、その周期に近い28日分
 の目印を決めればよいということでその目印として利用されたのが二十八宿
 です。新月の位置が三日月の位置から二日分遡ったところだと考えれば、三
 日月が二十八宿のどこにあるかを観測すれば、新月がどこにあったかを知る
 ことが出来るわけです。

 二十八宿は

  角→亢→テイ→房→心→・・・

 です。もし三日月が房宿にあったとすれば、新月はその二つ前の星宿、亢宿
 にあると解るというわけです。

◇新月の星宿で季節が解る?
 さて今まで二十八宿で新月の位置を知る仕組みを書いてきたのですが、暦を
 作るという観点から考えると「新月」の位置を知ることには、さしたる意味
 はありません。「暦月の区切り」という意味で新月を知ることは必要ですが
 それは「新月の位置」ではなくて「新月の日」でよいので、三日月の日から
 二日前が新月の日と解れば事足ります。ではなぜ、新月の位置など知ろうと

 したのでしょうか? その答えは、新月の位置が示すもう一つの天体の位置
 を知るためだと言うことです。

 新月の位置が解れば解るもう一つの天体とは太陽です。新月とは太陽と月が
 同じ方向にあって見えないわけですから、新月のときの月の位置を知ること
 はすなわち太陽の位置を知ることになるのです。

 なんとも回りくどい方式ではあるのですが、太陽は明るすぎて、これが出て
 いる間は空の上での位置の目印になる星座が見えませんので、こうした間接
 的な方式でその位置を知ろうとしたわけです。
 では太陽の位置が解ると何が解るかと言えば、それは

  季節の動き

 です。季節の変化は太陽の動きによって生まれるものですから、季節の動き
 を知るためには太陽の動きを知る必要があるのです。そして太陽がある位置
 を通過して再びその位置に戻ってくる期間が「一年」ですから、こうした観
 測を繰り返すことで一年の長さを知ることが出来ました。

◇用の無くなった二十八宿?
 さて新月の時期と位置の両方が解ると暦の一月の区切り、一年の区切りを決
 めることが出来ます。この新月の位置を知るという過程で二十八宿は重要な
 意味をもっていたのですが、天文学が発達して直接月の位置を測らなくとも、
 計算でこの位置を推測出来るほどになると、暦を作る上での二十八宿の必要
 性は薄らいでゆきます。

 中国から日本に太陰太陽暦が輸入された頃( 6世紀頃の話し)には既に、そ
 の暦は「ほぼ完成の域」に達した暦でしたので、二十八宿を使って月をわざ
 わざ測る必要は無くなっていました。チェックのため、また昔からの伝統に
 従って観測するということはあっても、実質的な意味は無くなっていました。

 暦の発達で意味の無くなってしまった二十八宿はその後どうなったのかとい
 うと、それが皆さんが普段ご覧になる「占いとしての二十八宿」なのです。
 今ではすっかり天文学からは切り離されて、占いの世界だけで生き残ってい
 るのです。そう思うとなんだか哀れ。可愛そうですね。

 ちなみに、二十七宿は二十八宿の変形。
 占いの世界では二十七宿は月切り、二十八宿は不断といわれる全く違った計
 算方式で求められるものですが、二十八宿が本来どのような役割をもってい
 たかをよく考えれば、違ったように見える二十七宿も二十八宿の計算方式も
 その理由がわかります。
 今日は話しが長くなってしまいましたので、この辺の話しは亦何れ何処かで。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2008/09/11 号

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