こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■フランス革命暦
 暦にはそれぞれ長所もありますし短所もあります。
 現在私たちが使っている暦(新暦、グレゴリウス暦)は良くできた暦ですが
 それでも欠点はあります。

 ・月の日数がまちまちで、法則性がない
 ・年首(としの始め)の位置に意味がない
 ・うるう年と平年で月の日数が変化する(2月が)。
 ・日付と曜日の関係が年毎に異なる

 など。最後の一つは一週七日という、特定の宗教と強く結びついたサイクル
 との関係なので暦の問題とばかりは言えませんが、宗教行事とは無関係に生
 きているといったところで、日本ですら日常の生活はこの一週七日のサイク
 ルで回わされることが多いことを考えると、宗教色を否定したところでこの
 サイクルを無視して生活することは困難です。

 隠居生活に入ったときは「野人暦日なし」の毎日を過ごすことを夢見る私も
 隠居前の現在は、この一週間七日のサイクルに従って生きています(という
 ことで、今日は週末の休日を過ごしています)。

 欠点のあるものを使っていると気付いた場合、これにどう対処するかと考え
 ると、

  A.欠点を容認して「慣れる」。
  B.根本はそのまま残し、欠点の影響が小さくなるように「改良する」。
  C.欠点を分析して根本から「作り直す」。

 といった選択肢があるのでは無いでしょうか。現在の私たちはAです。
 Bはユリウス暦からグレゴリウス暦への改暦などがこれに当たります。基本
 的には前の暦の規則を踏襲しながらその一部だけを修正する(この例の場合
 は閏年の規則を直し、それまで累積した誤差を取り去る処置をとった)する
 もので、これなら暦を使う側への影響は小さいのですが、小さくなったとは
 いえ欠点は残ったままです。

 A,Bは社会生活上の混乱がおきない(か小さい)方法です。
 ですがこれではあいかわらず欠点があることには変わりがないので、こんな
 小手先の技ではなく根本から直してしまおうというCは、社会的な影響が大
 きいのでなかなか実行することは出来ません。このCが出来るタイミングと
 しては社会の変革期が一番。このタイミングではどうせ社会生活は混乱して
 いるはずですから、改暦の混乱が加わっても同じじゃないかというわけです。

 明治の天保暦から現在の新暦への改暦などはこのCの例だと思われます。た
 だし明治改暦は新たな暦を作った訳では無く、すでにヨーロッパを中心に広
 く使われていた暦への切り替えでしたが。
 Cの例としてもう一つ思い浮かぶものを挙げるとしたらそれは

  フランス革命暦への改暦

 だろうと思います。
 このフランス革命暦は暦の合理性と宗教色の排除を追求して新たに作られた
 暦ということで、改暦の歴史上でも一際異彩を放った暦です。

◇フランス革命暦の誕生
 フランス革命暦は西暦1792/09/22に始まります。
 この前日1792/09/21はフランスの王制が廃止された日です(ちなみに最後の
 国王ルイ十六世はこの 4ヶ月後に断頭台で処刑されました)。

 王制廃止後、国民公会(議会)は合理的かつキリスト教的な色彩を排除した
 暦の作成に着手しわずか二ヶ月ほどで新しい暦を作り上げ、これを公布しま
 した。この新しい暦が「フランス革命暦」です。

◇フランス革命暦の概要
 フランス革命暦は次のような規則で組み立てられました。

 ・一年の始はパリにおける秋分を含む日とする。
 ・1792/09/22に始まる年を「共和国第一年」とする。
 ・一月を30日、一年を12ヶ月とし、年末に 5日( 4年に一度は 6日)の余日
  を置く。
 ・一月を10日ごとの三旬に分け、旬の最終日(10,20,30)を休日とする。
 ・一日は10時間。一時間は 100分、一分は 100秒とする。
 ・暦月名は新たに決めた名を用いる。

 暦の上での宗教色を排除し、それまでの伝統との暦との連続性なども否定し
 た新しい暦でした。ちなみに新しく決められた暦月名は

  1.葡萄の月  2.霧の月  3.霜の月
  4.雪の月   5.雨の月  6.風の月
  7.芽吹きの月 8.花の月  9.草の月
  10.収穫の月  11.熱の月  12.実りの月

 と、 3月毎に一つの季節としてそれに併せた名前が付けられました(もちろ
 んフランス語ですけど)。元々のフランス語の発音では四季それぞれに属す
 る 3月の名前は韻を踏むように作られているとか。編暦委員に著名な詩人も
 加わっていたそうなので、気を配って名付けたようです。

◇革命暦ができたけど
 新しい暦が生まれた訳けですが、あまりに急でまたあまりに大きな変革を行
 ったため、いろいろな混乱が生じました。

 笑えるところとしては、10進法にあわせた時計製造が間に合わなかったなど
 と言うものもあります(本当は笑い事ではないことですが)が、それ以上に
 困ったことは、フランス以外ではこの暦を使っていませんから、外国とのや
 り取りでは日付の変換表が欠かせなくなってしまったこと。
 月の名前にしてもよその国では全く通じない・・・。

 日本のように鎖国でもすればそれでも何とかなったと思いますが、地続きの
 ヨーロッパではそうも行かなかったようで、斬新で合理的な暦のはずのフラ
 ンス革命暦でしたが、みんなが非合理な暦を使い続ける国際社会の中で考え
 れば、やっかいな変わり者以外の評価は得られませんでした。

 現在のフランスではどんな暦を使っているかといえば、グレゴリウス暦。な
 んのことはない欠点の多い普通の暦です。
 社会の大変革期に行われた歴史的実験、フランス革命暦ですが結局は実験で
 終わり、実用として定着することはなくわずか12年でその寿命が尽きました。

 今から考えればフランス革命暦の変革は急速すぎ大きすぎたようです。
 暦の合理性を追求することは必要なことですが、その暦を使うのが非合理極
 まりない人間達だということを忘れていては長続きしないということのよう
 です。
 現在の暦の欠点を挙げて、改暦の必要性を訴える人は後を絶ちませんが、そ
 の改暦案がフランス革命暦より上手く根付くものかどうか、よく考えた方が
 良いようです。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2008/10/04 号

こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック