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■節分の日の鰯の頭と柊
 節分は季節を分けるという意味で年四回有りますが、その中でも年の区切り
 ともなる立春前の節分は特に重要視され、現在では節分といえばこの立春前
 の節分を指す言葉となっています。

 節分は一年の区切りといいますが、ここでいう一年とは立春から翌年の立春
 前日の節分までの「節切りの一年」のことです(いわゆる「旧暦」と節切り
 の暦とは混同されがちですが異なりますのでご注意を)。

 節分は、節切りの暦では一年の最後の一日ですから今でいえば大晦日にあた
 ります。大晦日といえば厄払いをすることがあると思いますが、節切りの暦
 の一年最後の一日である節分の日にもこれは当てはまり、節分行事には厄よ
 け、厄払いの意味を持つものが多くあります。

 節分行事といえば豆まきがまず頭に浮かびますが、これも厄払い行事です。
 そしてこれ以外にも広く行われた行事、「焼きかがし」もまた厄よけ厄払い
 の行事です。

◇焼きかがし
 鰯の頭に唾をかけながら焼いて、これを豆殻(豆の乾燥した茎)に刺して柊
 と一緒に入口や井戸、便所や蔵などに刺して厄よけにするというのが焼きか
 がしです。
 焼いた鰯の頭の匂い(悪臭)で邪気を追い払い、一緒に刺す柊は悪鬼の目を
 刺すその棘でこれを追い払う効果があると考えられました。

 この鰯の頭を焼くときには唾をかけるのですが、それ以外にももう一つする
 ことがあります。それは、虫の名前を唱えること。
 虫の名前を唱え、唾を吐きかけながら鰯の頭を焼くことを、「虫の口焼き」
 といいます。
 虫の名前の唱え方は、およそ次のような具合です。

  『菜の虫も焼き申す、桑の虫も焼き申す、
   米の虫、大豆小豆の虫も焼き申す・・・』

 この唱え方は地方や、家々で異なり沢山のバージョンが有るようですが、基
 本的には農作物に害を為す虫(や鳥など)の害をのぞくという意味がありま
 す。虫の口を焼いて、作物を食べられないようにということでしょう。大き
 く口を開けた鰯の頭は、作物を食い荒らす害虫の代役で、鰯の頭を刺す豆殻
 は邪気を追い払いたいもの(作物)を代表させているのでしょう。

 おそらく、鰯の頭を焼く際に唾をはきかけるのは鰯の頭で代用した害虫、害
 獣に対する呪いのためでしょうか(←この辺は勝手な推測)。

◇焼きかがしの今
 私が子供の時には、この焼きかがしを家の玄関や勝手口、便所など主要(?)
 な場所に刺すのが仕事でした。
 少しでも高い場所に刺そうとしましたが、小さかったのであまり高くまで手
 が届かなくて、難渋したことを覚えています。

 時には、唾を吐きかけながら鰯の頭を焼くこともしたように思いますが、そ
 の時に虫の名前を唱えたことは記憶にありません。
 そう言えば、唾を吐きかけた鰯の頭に竈の灰もつける何てこともしたような
 気がしますが、この辺の記憶は曖昧ですので、違っていたかも知れません。

 よく覚えていないということからすると、私の生まれた家でも私が程々に大
 きくなった頃にはもう、こうした行事をしなくなってしまったようです。
 単に私の物覚えが悪いだけだったのかも知れませんが。

 さて、節分といえば今でも豆まきはポピュラーな行事として行われています
 が、この焼きかがしはどうでしょうか。
 近頃ではこんなことをしている家を見なくなりました。

 農作物を害虫、害獣から守るといった意味合いの強い行事だったので、農業
 とかかわる人が減った現代では失われてしまった行事なのでしょうか。
 今にして思えば、無くなって欲しくない懐かしい行事の一つです。
 まだ何処かでは、鰯の頭に唾を吐きかけながら焼いていてくれてたらうれし
 いです。

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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2009/02/02 号

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