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■誤伝? ブルームーン
 昨日号で今年の 1月(と 3月)は、日本では一月に二度の満月がみられる月
 だと書いたのですが、この一月に二度の満月の二度目の満月の方をブルー・
 ムーン(Blue Moon) と呼ぶことがあります。
 Moonについてを辞書を引くと

  once in a blue moon ・・・ めったにない、極まれに

 という熟語の解説が見つかります。
 辞書の説明によると「大気中の塵などの影響でまれに月が青く見えることか
 ら生れた言葉」とあります。

 最近作られた辞書ではどうなのか、調べていないのですが、私の持っている
 英語の辞書にはBlue Moon に関して「一月の間に見える二度目の満月」とい
 った解説はありませんでした。
 その理由として考えられるのは、この

  Blue Moon ・・・ 一月の間に見える二度目の満月

 という意味が最近使われ出したものだということがあります。

◇現代の「ブルー・ムーン」は誤伝から始まった?
 ブルー・ムーン ・・・ 一月の間に見える二度目の満月

 という解釈はどうやらとある雑誌の間違った記事に起因する新解釈の言葉の
 ようです。
 その雑誌とはアメリカの有名な天文雑誌、「Sky & Telescope(スカイ・ア
 ンド・テレスコープ)」、略してスカテン(こんな略し方するのは私だけか
 な?)。

 日本にも「月刊天文」「天文ガイド」などといった天文雑誌がありますが、
 Sky & Telescope 誌はそうした天文雑誌の草分け的な存在で、非常に著名な
 雑誌です。

 このすごく著名な天文雑誌の1943/7号及び1946/3号でBlue Moon という言葉
 について取り上げ、後者の号で「その月 2回目の満月」という意味を付け加
 えてしまったことが、どうやら「現代のブルー・ムーン」の解釈の元になっ
 ているようです。
 まあ、それはそれでいいのですが、困ったことがあるとするとその雑誌の記
 事の説明は間違いであったということです。現代のブルー・ムーンはいわば、
 誤伝ブルー・ムーンなのでした。

 とはいえ、その記事だけの問題であればその雑誌を読んでいる天文愛好者の
 間だけの問題だったのでしょうが、1980/1にアメリカのラジオ局がこの話を
 紹介することがあってから、どうやら急速にこの誤伝ブルー・ムーンが広が
 ってしまったらしい。

 この誤りの件に関しては、Sky & Telescope 誌自身が調査し、元の記事に誤
 りがあったことを認めた記事を1999/3号に掲載しています。私はさすがに元
 の記事は読んだことがありませんでしたが、この1999/3号の記事の方は見た
 (私の英語力ではとても「読んだ」とはいえない・・・)記憶があります。
 おもしろそうな記事だったので覚えています。
 
 ちなみに、この雑誌社のWeb サイトでこの1999/3号の記事を読むことができ
 ますので、興味のある方はどうぞ。

 What's a Blue Moon?
  http://www.skyandtelescope.com/observing/objects/moon/3304131.html

◇本当は一つの季節に 4度の満月がある時の 3番目の満月だった?
 元々のSky & Telescope 誌の記事は「Blue Moon」 という言葉の語源探しだ
 ったらしく、その語源を探るうち、「メイン州農民年鑑」の中にBlue Moon 
 という記事を見つけ、これを紹介する過程で間違いが生じてしまったようで
 す。もし本当に「メイン州農民年鑑」にあったBlue Moon という言葉からこ
 の話が始まったのだとしたら、それは明らかに誤りから始まったといえます。

 Sky & Telescope 誌が1999/3,1999/5 にこの誤って広まってしまったBlue M
 oon の意味について検証した際に1819〜1962年の間に発行された「メイン州
 農民年鑑」のうちの40冊を調査し、そこに示されたBlue Moon の日付を調べ
 た結果、そのすべては

  2,5,8,11月の 20〜23日の間の日付であった

 からです。この日付を見れば「メイン州農民年鑑」のBlue Moon が「一月の
 間の 2度目の満月」であるはずがないことがわかります。

 昨日の日刊☆こよみのページで一月に二度の満月が見られる条件として最初
 の満月が

   2月を除く他の月の 1日か 2日

 にあることが必要でした。そしてこの場合 2度目の満月はその月の30日か31
 日のいずれかの日であって、「20〜23日」なんていう日になるはずがないの
 です。

 では何かと考えるとヒントはやはりその日付、2,5,8,11の20〜23日にありま
 す。現在世界で広く使われているグレゴリオ暦で20〜23の日付といわれて浮
 かぶのは二至二分(冬至・夏至・春分・秋分)の日付。
 次に2,5,8,11月の20〜23の満月と考えると、これは

  二至二分の直後の満月から 3番目の満月

 であると考えられます。二至二分で 1年を 4分割したとするとその一つの期
 間の 3番目の満月で、さらにこの日付であると、同じ期間にもう一度満月が
 来る確率が高い。そう考えるとどうやら「メイン州農民年鑑のBlue Moon」
 が、一つの季節に 4度の満月がある場合の 3番目の月を指していたようです。

 (※西洋では「春分を春の始まり」と考えるので、この考えからすると四季
 の区切りは、二至二分の日となります。日本の場合は立春、立夏、立秋、立
 冬の四立が季節を区切る日と考えられますので、このあたりには考え方の違
 いがあります。)

 四季それぞれには 3度の満月があるのがふつうで、西洋では宗教上の都合や
 農耕の目安としてこの 3つの満月にはそれぞれ固有の名前を付けて呼ぶ習慣
 がありました(昔は)。おもしろいことにこの、 3度の満月は1番目,2番目,
  3番目の月と数えず、1番目,2番目,最後と数えられます。

 満月が各季節に 3度づつと決まっていれば何の問題もないのですが、2〜3年
 に一度は、一つの季節に 4度の満月が見られるときがあり、この 4つの月に
 呼び名を振ると、1番目,2番目,最後の満月には呼び名がありますが、 3番目
 には名前が付かないことになってしまいます。どうやらBlue Moon とは、そ
 うした

  名無しの満月

 に与えられた名前のようです。
 こう考えていけば得心がいくのですが、こうした説明は暦や天文に興味のな
 い人には「面倒くさい話」でしかないですから、それよりは一月の間に見え
 る二度目の満月の方が受け入れやすくて、これが誤った意味のBlue Moon が
 広がった理由かもしれません。

 そしてこの受け入れやすさから、誤ったこのBlue Moon の使い方の方が、定
 着していってしまい、本来の意味は忘れられてしまいそうな気がします。


 (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2010/01/31 号

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