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■宵の明星・2010
 「一番星見つけた」

 夕方の空に最初に見える星を、誰が一番最初に見つけるか。そんな競争をし
 たことはありませんか?
 私は兄弟とこの「一番星発見競争」をした覚えがあります。

 これを書いている時期(2010年 5月末)にこの一番星発見競争をすると、ま
 ず最初に見える星は西の空に輝く金星です。今日の金星の明るさは-4等級。
 星の明るさは「等級」という言葉で表されます。星座を形作る星(恒星)の
 中でもっとも明るい部類の星を 1等級の星、街の明かりなどのない場所で月
 の無い夜に肉眼で見えるもっとも暗い星を 6等級の星として表します。

 この等級ですが、1等級違えばその明るさは約 2.5倍、5等級違うと 100倍の
 違いとなります。現在の金星の「-4等級」は星座を形作るもっとも明るい部
 類の 1等星と比べても 5等級明るいので、今見つかる一番星は 1等星を 100
 個も集めた明るさと云えます。

 これだけ明るい星は他にありませんので、金星が夕空にある限り、金星の一
 番星の地位は安泰です。ちなみに、金星は今後少しずつ明るさを増し、 9月
 下旬には -4.6等級にまでなります。

◇怪しいものではありません
 さすがに「極まれに」ではありますが、この宵の明星を見て

  昨日まで見えなかったのに。
  すわ、UFO?

 と言い出す人がいます。
 UFO は「Unidentified(正体不明) flying object(飛行物体)」の略です
 から、UFO と間違われては金星も良い迷惑。もし金星が話せたとすれば

  私は、怪しいもの(正体不明のもの)ではありません

 と言うことでしょう。
 金星の場合、太陽と同じ方向に見える「合」と呼ばれる状態の時には確かに
 見えなくなるので、「昨日までは見えなかった」ということが絶対にないと
 はいえませんが、こんなことは見かけの位置が太陽に極く接近した特別な状
 態の時ですから、まあ滅多にあることではありません。

 普通に考えると目で見てすぐそれと分かるほど明るい金星が見えた場合、大
 体は昨日も一昨日もその辺りで見えていたはずで、「昨日までは見えていな
 かった」という話自体が思い違いです。

 この「金星・UFO 誤認事件」は、常識的にはありそうもないことに思えるの
 ですが、私自身の経験でも何度かこうした問い合わせを受けたことがあるの
 で、全然無いことではありません(頑張ってくれ、日本の理科教育!)。

◇「宵の明星」と「明けの明星」
 現在は夕方に「宵の明星」として見える金星ですが、ずっと夕空に見えてい
 るわけではありません。何ヶ月かすると見える位置が変わっていって、つい
 には夕方の空から姿を消してしまうことがあります。

 消えてしまった金星は何処へ行ったのかというと、短期間の休養期間(合)
 を挟んで、明け方の空へと移っていったのです。こうして明け方の東の空に
 見えるようになると呼び名も「明けの明星」と変わることになります。

  宵の明星 → 明けの明星 → 宵の明星 ・・・

 と一回りする周期は約 1.6年。宵の明星の時期はその半分と考えるとおよそ
  9ヶ月程続くことになります。現在の「宵の明星」の期間は今年の 1月下旬
 に始まり、10月の下旬まで続きます。

 これは、金星が地球より太陽に近い軌道を巡る内惑星だからです。内惑星の
 特徴の一つには、その姿が満ち欠けするというものもあります。現在見える
 金星は、月で言えば満月を少し過ぎたほどの形です(向きは逆で、大きさは
 うーんと小さいですが)。

 これから金星は少しずつ明るくなり、また大きさも大きく見えるようになり
 ます(地球との距離が近づくので)。形はというとだんだん欠けて細くなっ
 てきます。今はまだ見かけの大きさが小さいのですが、 8月を過ぎた頃から
 見かけの大きさが大きくなりますから、望遠鏡で眺めると楽しいです。

◇ちょっと優雅に
 これからしばらくの間、金星は午後 9時過ぎ頃まで西の空に輝いています。
 夕方に見えることから、「夕星(ゆうつづ)」とも呼ばれることがあります。
 「ゆうつづ」なんて呼んでみると、なんだか優雅な雰囲気ですね。
 語源辞典で引いてみると

  「ゆうつづ」は夕方から続けて見えることから「夕続」・・・

 のような説明が載っております。ちょっとつまらない説明で残念。でも言わ
 れてみると明けの明星を「朝星」とか「あさつづ」という呼び方はしないで
 すから、「続く」もあるのかな?

 ちなみに「どれ金星を眺めてみよう」と夜中に起き出してもだめですよ。
 金星は夜中には見えませんからね。
 「え、なぜ?」といわれたら・・・ガンバレ日本の理科教育!・・・です。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2010/05/29 号

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