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■立秋の日の「立春正月」の話 ・・・ その1
 今日、2010/8/7は立秋。暦の上では今日から秋となります。
 「暦の上では秋」というと、

  その暦とは旧暦と言うことですか?

 と言われることがありますが、この辺りはちょっと誤解があります。
 旧暦では一年十二ヶ月(時々閏月が入って十三ヶ月の年もあります)を四季
 に振り分けて

  正、二、三月  ・・・ 春
  四、五、六月  ・・・ 夏
  七、八、九月  ・・・ 秋
  十、十一、十二月・・・ 冬

 とします。
 この分け方で言えば秋の始まりは旧暦の 7/1ということになりますが、今日
 が旧暦では何日かというと6/27。旧暦の 7/1は今年は新暦では8/10。三日後
 です。冒頭で「今日から秋」と書いたのはあくまでも二十四節気の立秋の日
 であるからと云う観点からの言葉です。

 旧暦月の区切りでは秋は七月からとなっていますが、では暦の上での秋の始
 めの日という場合、立秋の日が正しくて、旧暦の 7/1ということではないの
 ですねとたずねられると、ちょっと困ります。あくまでも人間の決めた目安
 の話なので、旧暦の 7/1を「暦の上の秋の始めの日」といっても間違いとは
 云えません。

 この辺の事情は今に始まった話ではなくて、旧暦がまだ正式な暦として使わ
 れていた時代にも、「立秋の日」も「七月一日」もともに「秋の始めの日」
 として使われていました。

◇旧暦と二十四節気の関係
 以降の話は、旧暦と二十四節気の関係をしっかり捉えておかないと判りにく
 い点がありますので、ここらで旧暦と二十四節気の関係をおさらいしておき
 ます。

 二十四節気(古くは「二十四気」といいました)のことを「旧暦の二十四節
 気」という方がいらっしゃるのですが、この表現には少々違和感を覚えます。
 なぜなら、二十四節気は旧暦が無くともそれ自体は問題なく求めることが出
 来るからです。逆に旧暦の日付は二十四節気が無いと求めることが出来ませ
 ん。

 旧暦は太陰暦と言われることが有ります。これは旧暦の暦月が月の朔望(満
 ち欠け)で区切られるからです。つまり朔(新月)となる日が暦月の始めの
 日となるという決まりの暦です。

 太陰暦というだけであればこれだけでよくて、二十四節気の出る幕はありま
 せん。月の満ち欠けだけを追いかければ太陰暦をつくることが出来るのです
 から。現にイスラム教の宗教行事などで使われるヒジュラ遷都暦は純粋な太
 陰暦で、この暦は月の満ち欠けによってつくられる暦月だけで組み立てるこ
 とが出来ます(まあ実際の暦計算には、もう少し細かな取り決めが必要です
 が)。

 ではなぜ二十四節気が必要になるかというと、四季の巡りという太陽の動き
 に強く繋がった周期変化を暦に取り入れるために必要だったのです。現在の
 二十四節気は太陽がその瞬間、どの位置に見えるかを示しています。

 今日は「立秋」ですが、この日には太陽は黄道座標という座標で表すとその
 経度(黄経)が 135°の位置を通過する日として求められています。このよ
 うにして太陽の位置で決められる二十四節気によって示される四季の巡りと、
 既にあった朔望によって決められる暦月を何とか折り合いを付けて同居させ
 た暦、それが旧暦と呼ばれている暦です。

 どうやって太陰の仕組みと太陽の仕組みを組み合わせるかというと、これは
 意外に単純。立春、雨水、啓蟄、春分・・・と並ぶ二十四節気を一つとばし
 に拾った十二の気、雨水、春分、穀雨・・・(これらは「中気」と呼ばれま
 す)を使って暦月の名前を固定するのです。

 雨水が含まれる月は正月、春分を含めば二月・・・秋分を含めば八月、・・
 冬至を含めば十一月、大寒を含めば十二月という具合です。これだと簡単に
 違った二つの仕組みを組み合わせることが出来ますし、組み合わせた結果暦
 月と季節(を表す二十四節気)とのずれは最大でも一ヶ月以内に収めること
 が出来るのです。目出度し、目出度し・・・。

 しかし「ずれが最大でも一ヶ月以内に収まる」ということは裏を返せば最大
 一ヶ月程度はずれる場合があると云うことでもあります。
 「春分を含めば二月」といっても春分の日が 2/1のこともあれば2/30のこと
 もあるのです。

 なかなかアバウトではありますが、旧暦はこうして月(太陰)の朔望による
 暦月の仕組みと、二十四節気(太陽の動き)による四季の巡りをある程度上
 手く組み合わせた暦です。太陽暦的な成分も含む太陰暦ですので、太陰暦で
 はなくて、正しくは太陰太陽暦と呼ばれる暦です。

◇ある質問メール
 amachan_001 さんから「旧暦は立春正月の暦」について、次のような質問メ
 ールが寄せられました。

 -------------- amachan_001 さんのメール ---------------
 「置潤法」で「19年に7回閏年を設ける」と新暦と旧暦がほぼ一致するよ
 うです。
 (うまく説明できませんが、専門家の人はご理解いただけると思います)

 旧暦の基本(理想?)は「立春正月」でしょうから、仮にスタートの「立春
 正月」から19年目には「2回目の立春正月」がめぐってくると思うのです
 が・・。

 ある旧暦の解説本で「立春正月」の出現は「計算できない」「それは偶然で
 しかあり得ない」と云う意味合いの事が書いてありました。

 人為的な改歴などが無ければ「19年に7回閏年を設ける」「置潤法」であ
 れば、必ず19年ごとに立春正月が来ると思うのですが如何でしょうか?
 -------- amachan_001 さんのメール ・ ここまで ----------

 「旧暦は立春正月の暦」という話はよく耳にする話ですが、この話は仕組み
 としては「旧暦は立秋七月の暦」と言い換えることも出来るものなので、立
 秋の日である本日、この話を書こうと思ったのが本日のこぼれ話を書き始め
 たきっかけでした。

 が、その話を書く前提となる基礎知識の話を書いているうちに話がえらく長
 くなってしまいましたので、本題の話は明日に「つづく」ということにしま
 す。『立秋の日の「立春正月」の話』とか書いておきながら本題がないなん
 て、羊頭狗肉もいいところですが、ご勘弁下さい。
 ということで、明日の「その2」をお楽しみに。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2010/08/07 号

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