こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■凩(こがらし)と星と星の瞬き
 凩やかぎり知られぬ星の数 (加藤 楸邨)

 「今年は暖かいね」という言葉をほんの少し前まではよく耳にしましたが、
 ここニ三日は一気に冷え込み、間違っても「暖かい」という言葉は出てこな
 い気候となってきました。
 冬の初めには、1号、2号と吹いた順番に名前を付けられていた凩も、この
 時期になればわざわざ数える人もいないでしょう。。

◇凩の吹く日は星がきれい
 凩が吹く日は寒くて寒がりの私には「とっても」辛い日ですが、この辛い日
 にも慰めは有ります。それは、星空。

 凩が吹くような日は、雲が風に吹き散らされて姿を消すことが多いです(特
 に太平洋側の地域では)。こんな日は夜になると満天に星が瞬きだします。
 それこそ数限りないほどの星々。

 冒頭に登場頂いた加藤楸邨の句も、そうした凩の吹く日の夜の情景を詠んだ
 ものでしょう。

◇星の瞬き
 凩の吹くような日の夜は満天に星が瞬くと書きましたとおり、こんな日の星
 は瞬いて見えるものです。
 星が瞬くのは地球の大気による屈折現象です。

 遠くからやって来た星の光は地球の大気層を通過して私たちの目に届きます
 が、通過してくる大気層に温度の違う領域が有ると、その部分での屈折率は
 他の箇所の屈折率と異なるので、星の光はわずかに見える方向が変化します。

 地上に凩の吹くような風の強い日は、上空でも強い風が吹いていることが多
 く、風は温度の異なる空気の塊を次々に吹き流してきます。するとそうした
 異なった空気の塊を通過してきた光はその空気の塊毎の異なる屈折率で屈折
 し、見える方向が小刻みに右に左にと変化します。この変化が連続して起こ
 っているのが星の瞬きの正体です。

 流れの速い川底の石の見える位置が、水の流れの具合で変化することを目に
 した経験は誰にでも有ると思いますが、星の瞬きもこれと良く似た現象なの
 です。

 この星の瞬きは、上空でも強い風が吹くことの多い冬はそうでない夏に比べ
 てずっと顕著に見えます。
 星が烈しく瞬きを繰り返すような日は、空の上ではすごい風が吹いていると
 考えて間違い有りません。

◇瞬かない星
 凩のような強い風が吹く日と星の瞬きの話をしましたが、よく見ると余り瞬
 かない星も有ります。どんな星かというと、それは惑星です。

 星の瞬きの原因は、その星の光が大気を通過する際に起こる屈折の具合で、
 星の光が右に左にとその見える位置を微妙に変えるためです。夜空に見える
 星々はそのほとんどが太陽と同じ恒星と呼ばれる星です。

 恒星は、どれも非常に遠くに有るため、その見かけの大きさは無いに等しく、
 「点」と考えてよいものです。恒星の見かけの大きさがこのように小さいた
 め、その見える位置がほんのわずか変わっただけで、それまで見えていた位
 置の星が消えて、ちょっとだけ離れた場所に急に現れたように見えるのが瞬
 きの正体です。

 これに対して惑星は、一見すると恒星と同じく点のように見えるのですが、
 実はそうではなくて、ある程度の見かけの大きさを持って見えます。

 もし屈折の具合で変わる見かけの位置の変化が、その惑星の見かけの大きさ
 より小さいとすると、「星が消えて、別の場所に現れる」といった恒星の瞬
 きのような見え方はせず、ずっと同じ場所に見え続けるので、惑星の場合は
 恒星のように瞬くことは有りません(原理的に考えれば、ものすごく気流が
 悪い時には瞬くこともあるかも知れませんが)。

 今(2010/12) は夕方から深夜にかけては木星が、明け方には金星が明るく良
 く見えますので、本当に惑星は瞬いて見えないのか、他の星々(恒星)と見
 比べて見てください。

 ただ、星が瞬くような夜に望遠鏡などで倍率をかけて見れば、瞬かない惑星
 も、ゆらゆらと川底の小石のように揺らめいて見えるはずです。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2010/12/10 号

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