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■節分と鰯の頭
 「鰯の頭も信心から」

 一般には値打ちのないものでも信心の対象とする人にとっては、非常にあり
 がたく思えるということを、こんな風に表現することがあります。
 この諺では「鰯の頭」は値打ちのないものの代表として採り上げられている
 わけですが、わざわざ鰯の頭としたのは、節分の行事として古くから民間で
 行われてきた「焼きかがし」の行事を念頭に置いたものでしょう。

 節分ももうすぐということで、本日は節分の日の鰯の頭の焼きかがしについ
 て書いてみることにしました。

 ※「鰯の頭も信心から」という諺については、既に一度、日刊☆こよみのペ
  ージのコトノハのコーナーで採り上げていますので、言葉の意味について
  は、その記事をご覧下さい。
  ⇒ http://koyomi8.com/doc/mlko/200702030.htm

◇焼きかがし
 焼きかがしとは豆まきと並んで古くから節分に行われてきた行事の一つです。
 「やいかがし」「やっかがし」などとも呼ばれます。

 焼きかがしとは、鰯の頭に唾をかけながら焼いて、これを豆殻に刺して門口
 や玄関、井戸や便所などに刺して魔よけにするものです。この時一緒に柊の
 の枝を刺したりもします。
 悪臭を放つ焼いた鰯の頭は、その悪臭で魔や厄を除けるといい、柊はその葉
 の鋭い棘で、悪鬼の目を刺してこれを退散させる効果があるのだそうです。
 魔物も悪臭には弱いとは、なんだか魔物にも親近感を抱きそうです。

◇虫の口焼き
 唾をかけながら鰯の頭を焼くことを「虫の口焼き」と言うのだそうです。
 ジャガイモ、稗、粟、麦、小豆など、それぞれの作物に付く害虫の口を焼く
 という、害虫除けの呪いであって、

  豆の虫もじりもじり、
  菜っ葉の虫もじりもじり、
  大根の虫もじりもじり、
    ・・・
  茄子の虫の口を焼け、
  胡瓜の虫の口を焼け、
    ・・・

 といった、呪(まじな)いの言葉を唱えながら焼きます。この時唱える呪い
 の言葉は地方によって様々あるとか。
 そう言えばそんなことしたな、と心当たりのある方もいらっしゃるのでは。

◇鰯の頭の思い出
 かく言う私は、節分の日には豆殻に刺した鰯の頭を家の玄関など要所要所に
 刺して来るように、子供の頃に父に言われた記憶があります。

 当時は、この鰯の頭にこんな謂われや効果が有る(と信じられていた)とは
 知りませんでしたから、鰯の頭を唾をかけながら火であぶることがなんだか
 汚くて嫌だなといささか罰当たりな感想を持ったものです。

 残念ながら、鰯の口を焼く父が呪いの言葉を唱えていたかというところまで
 は覚えがありません。
 折角父がこんな風習を行って見せてくれていたというのに、きちんと覚えて
 いないとは。まことに不肖の息子でありました。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2011/02/01 号

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