こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■初夏・盛夏・晩夏そして「中夏」?
 何か書くことないかな・・・
 と、困ったときの常套手段。
 皆様から寄せられた質問から拾い出そう!
 何かかくことないかな・・・、そう困った本日の私の網にかかったのは T.K
 さんからの質問でした。では、早速その質問を引用させて頂きます。

◇T.K さんからの質問(質問箇所のみの抜粋です)
 今頃も「初夏」と新聞、報道では言っていますが・・・「梅雨」でもあり
 陽がでればもう「夏」と言った感じです。
 実際、30度前後も気温が上がる場所と日もあります。
 「初夏」という語感の清々しさは無いですが、しかし「真夏、盛夏」のよ
 うなギラギラした暑さはないですが・・・

 その丁度中間だから・・・
 初夏、盛夏、晩夏があるいなら今「中夏ちゅうか」という季節の表現はな
 いのでしょうか・・・

◇中夏(ちゅうか)という言葉
 まず、中夏という言葉ですが、使われることは多分希だと思いますが、全く
 使わないわけでは無いと思います。

 【中夏】(ちゅうか)
  1.夏のなかば。
  2.諸国の中央。京師(けいし)。
   太平記23「天下武徳に帰し中夏静まるに似たれども」
  3.(→)中華に同じ。
   《広辞苑・第六版》

 言葉の話しということで、最近コトノハをさぼっていて、出番の少なくなっ
 た広辞苑に本日はご登場願いました。
 御質問にあった「中夏」という言葉の意味は 1番目にある「夏のなかば」が
 いちばん近いものです。しかし、初夏・晩夏と並べられるかというと、これ
 は、ちょっと違うかな?

◇中夏と中秋
 「中+季節」で成り立つ言葉としては、私には中夏と中秋だけで、中春や中
 冬という言葉を見たり聞いたりしたことが有りません。どうもあまり一般的
 な使い方では無いようです。

 暦の話をしていると中夏はともかく、中秋という言葉は毎年出番が有ります。
 「中秋の名月」の話です。
 中秋の名月の話を書くときには必ず、

  中秋と仲秋とは違います。使い方に注意ですね

 のように書いています。そして、
 「中秋は秋の真ん中の日を表す言葉で、仲秋は秋の真ん中の月(暦月)を表
  す言葉です」
 と説明をつけます。

 この中秋と仲秋の使い分けからすると、どうやらT.K さんの御質問にあった
 「中夏」は人偏のついた「仲夏」のほうがピッタリのようです(どっちも
 「ちゅうか」ですが)。

◇「仲+季節」という使い方
 一年は十二ヶ月、季節は四季ですから、等分すると一つの季節は三ヶ月。
 この考え方から、「立春正月」の考えに基づいて作られていた旧暦時代の暦
 の各月と季節は、次のように対応すると考えられていました。

  一〜 三月 ・・・ 春
  四〜 六月 ・・・ 夏
  七〜 九月 ・・・ 秋
  十〜十二月 ・・・ 冬

 なかなか区切りよくてわかりやすい。さて一つの季節が区切りよく三ヶ月毎
 に分けられましたが、三ヶ月は結構長い。一つの季節でも同じ気候とは言い
 難い。細分しましょう。そう考えると誰しも考えつくだろう分け方が、月単
 位に分ける方法。一つの季節は三ヶ月(閏月が入って四ヶ月になることもあ
 りますけどね)ですから、分けるとすると三つの名前が要ります。

  初夏・盛夏・晩夏 (それぞれ、旧暦の四、五、六月に対応)

 の「初・盛・晩」もこうして考え出された三つのパターン。
 では、仲夏は?

 これももう一つの「三つの名前方式」の一つで、「仲」と組み合わされる他
 の言葉は「孟と季」です。夏をこの方式で表すと

  孟夏(もうか)・仲夏(ちゅうか)・季夏(きか)

 となります。もちろんそれぞれが旧暦の四、五、六月に対応します。
 この言葉は古くから中国で使われていて、それが日本にも伝わって、使われ
 るようになったものです。

 「孟・仲・季」と分けるといわれても、あまりピンと来ないかも知れません
 がこの言葉の生まれ故郷の中国では至極わかりやすい分け方です。
 この言葉は、普通は兄弟の順番を表わすのに用いられます。

 例えば孔子様の字(「あざな」、一般的に使われる別名)は「仲尼」です。
 この字からすると、孔子にはお兄さんがいたことがわかります。もし孔子が
 長男であったならきっと「孟尼」、末っ子なら「季尼」となっていたかな。

 このように、「孟・仲・季」は兄弟の生まれた順番を表す言葉として中国で
 は当たり前に使われていましたから、季節に属する暦月に名前を付ける際に
 この兄弟の順番を表す言葉を流用したのだとおもいます。

 この記事は旧暦の五月に書いておりますから、この方式で言えば仲夏の月に
 かいているということになります。
 T.K さんの「中夏という表現はないのか」という質問の答えは、

  「仲夏」ならありますけど、いかがでしょう?

 ということになります。
 T.K さん、こんなものでいかがでしょうか?


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2011/06/11 号

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