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■一月は将来も冬なのか? 歳差と季節の話(1)
 本日の暦のこぼれ話は、3/8 号の皆様からのお便り紹介コーナーで「予告」
 しておりましたokushin2さんからの御質問に答えてみたいと思います。
 まずは、okushin2さんの御質問から。

 > 1月2月が寒いのは、その時期に地軸が太陽と反対向きに傾いているからだ
 > と理解しています。ですが、歳差運動で回転軸が動くと1000年後には 1,2
 > 月が寒い季節(冬?)ではなくなるのでしょうか。
 > あるいは、2000年前は冬が5月だったりしたのでしょうか?

◇歳差(さいさ)
 質問の中で登場した「歳差」という言葉は、聞き慣れないものかもしれませ
 んの、この言葉の意味について、まず説明いたします。

  「将来、こと座のベガが北極星になる」

 なんて云う話を何処かで聞いたことは有りませんか?
 こと座のベガは、日本では七夕の織り姫星といった方が有名な、夏の夜空に
 見える明るい星です。
 現在の北極星とは随分離れた場所に有る星ですが、今から大体 12000年ほど
 未来には、天の北極の位置はこの織り姫星のあたりに移動しているはず。

 現在は夏の空に見える織り姫星ですが、 12000年後には一年中夜になると、
 天の北極付近に見ることの出来る星(日周運動で沈むことの無い星)になっ
 ているはずです。

 この時代になると織り姫星の相方、彦星さんは織り姫星を中心に置いた円の
 上を毎日くるくると動き回るということになっているはずです。
 「家庭の中心はお母さん」、そんな日本の多くの家庭の状況が空の上にも投
 影されるようになるわけですね・・・。

 まあ、私どころか、「亀は万年」と云われ、長寿の生き物とされる亀(私の
 飼っている動物)ですらも、生きてはいないずっと将来の話ですけれど。

 こうした北極星の移動も、「歳差」によるものなのです。
 地球の自転軸、独楽の中心軸のようなもの、の延長上に、天の北極と南極が
 有るので、この独楽の中心軸のようなものの向きが変化すれば天の北極や南
 極の位置は変わります。これが北極星が変わるわけです。

 地球は、太陽の周囲を一年かけて公転しており、この公転している面を黄道
 面と呼びます。この公転面上を地球は一年かけて公転しながら、毎日自転軸
 を中心軸として自転運動を続けています。地球の赤道は、この自転軸と直交
 する面上にあり、この面のことを赤道面と呼んでいます。

 この黄道面と赤道面がもし一致していてくれたら、面倒なことは考え無くて
 済むのですが、この二つの面の間には約23.4度の傾きが有ります。
 その上、地球の形はまん丸な球ではなくて、南北の極より、赤道部分の方が
 ちょっと膨らんだ楕円形をしているため、地球は太陽から常に、

  傾いた赤道面を黄道面に一致させよう

 という方向の力を受け続けています。
 もし手近に独楽があるという方は試して頂きたい(そんなもの、手近にない
 ぞという方は、独楽で遊んだ昔を思い出して下さい)。高速で回転している
 独楽の軸をつついて、独楽の軸を傾けようとしたらどうなるか。

 回転する独楽にこうした外からの力を加えると、独楽の軸は傾きますが、そ
 のままというわけでは有りません。その傾いた軸は垂直な方向を中心にして
 まるでスリコギの棒のようにゆっくりと回転を始めます。

 自転する地球の赤道面を黄道面に一致させようと太陽が力を加えるというこ
 とは、この独楽で行った実験を地球の規模で行ったのと同じです(この場合
 の独楽は地球自体。独楽の軸をつついた貴方の指は太陽です)。

 無理矢理回転軸の傾きを変えられた独楽が起こすスリコギの棒の動きのよう
 な動きが「歳差運動」と呼ばれるものの正体です。

 もっと正確に言えば歳差には、これまで説明してきた太陽の力が原因となる
 赤道面に働く赤道歳差と、地球の公転面(黄道面)の向きを変えようとする
 他の惑星の影響による黄道歳差という成分が有るのですが、一般に歳差とい
 う場合は、この二つの成分を合成したものを指します。
 この話の説明でも、「歳差」についてふれる場合は、この二つの成分の合成
 したものを指します。

 独楽の実験では、スリコギ運動の周期は数秒から、せいぜい十数秒ですが、
 そこはでっかい独楽である地球だとこの周期もでっかい。どれくらいの周期
 かと云うと、一周するのに約 26000年かかります(地球の場合、このスリコ
 ギ棒は、黄道面に直交する軸と23.4度傾いたまま26000年かけて回ります)。

 このゆっくりしたスリコギ運動の中で現在の地球という独楽の回転軸は現在
 の北極星(こぐま座のポラリス)の方向を向いているので、私たちはこの星
 が北極星だと思っていますが、回転軸の向きがゆっくりと回転するため、北
 極星は、その時代時代によって違った星になります。

 もっともその変化はとてもゆっくりとしたものであるので、人一人の一生く
 らいの長さでは気がつかないでしょうけれど(亀は万年程でないとしても、
 せめて鶴は千年くらいの寿命がないと)。

◇一月は冬なのか? ・・・ やっと説明???
 ご承知のとおり地球の赤道面と黄道面が23.4度傾いていることが、地球上に
 季節が生まれる原因です。地球中心から見た太陽と地球自転軸の向きと季節
 の関係は

  90° + 23.4°= 113.4° ・・・ 冬(冬至)
  90° ・・・ 春・秋(春分・秋分)
  90° - 23.4°=  66.6° ・・・ 夏(夏至)

 のようになります。冬至は12月の末時期にありますから、北半球ではこの冬
 至のある時期周辺が「冬」となります。
 okushin2のおっしゃる「一月は将来も冬か?」の一月は、この冬至の近辺で
 すから現在は確かに冬。

 ですが、既に説明したとおり歳差運動で地球自転軸の向きが変わっていった
 ら、26000の半分の13000年後頃(だいたい織り姫星が北極星になる頃)には
 一月は「夏」になっているのでしょうか。

 ・・・とやっと、話の入り口に到達したところですが、ちょっと(いや、大
 分かな)話が長くなりすぎましたので、後半はまた次の機会に。
 中途半端で済みません。

 (明日は、ホワイト・デーだから、ひょっとしたら別の話かもしれませんの
 で、「後半は明日」とは言わないでおきます)。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2012/03/13 号

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