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■麦の秋
 夏の季語の中に「麦の秋」という言葉があります。
 夏の季語なのに「秋」とは・・・。

◇「秋」という言葉
 秋(あき)という言葉の語源として、

  作物の収穫がアキ(飽き)満ちる季節
  収穫をアキ(飽き)るほど食べる季節

 という、いずれも作物の収穫と結びついた説があります。
 このような語源説があるように「秋」は昔から作物の収穫の時、実りの季節
 という意味がありました。

 確かに四季の「秋」は多くの作物や木の実が実る季節です。しかし、作物が
 実る時期はこの四季の「秋」ばかりではありません。その他の時期に実る作
 物だってあります。

 「秋」という言葉に作物が実り、収穫する時期という意味があるとするなら
 四季の「秋」以外の時期にも「秋」はあるはず。
 春の秋、夏の秋、秋の秋、そして冬の秋と、四季それぞれにそれぞれの秋が
 あることでしょう。

◇麦の秋
 本日取り上げた、麦の秋もそうした秋以外の秋を表す言葉の一つです。
 「麦の」とあるとおり、この言葉は麦の実る時期を表す言葉で、初夏の頃、
 現在の暦で5〜6月頃、旧暦でいえば 4月頃を表します。
 立春から数えておよそ 120日前後( 6月初旬)が麦の収穫の好適機とか。
 本日は立春から数えて 113日目、そろそろ麦の秋と云って良さそうな時機と
 なりました。

 今では麦を作る農家も減ってしまって、麦の秋の時機となっても収穫を待つ
 麦畑の風景を探すことは難しくなってしまっていますが、「麦の秋」なんて
 言葉が出来るほど、昔はよくある風景だったのでしょう。

 古い記憶を探ってみると、まだ小学生だった頃には、その通学路から麦の畑
 を見ることが出来ました。その当時(今から40年程前)でも麦畑はわずかし
 かありませんでしたけれど。

 新しい学年にも慣れた頃、おそらく 5月の半ばを過ぎた頃だと思います。
 うららかな陽射しの中、道草を食いながら帰る道すがら、吹く風に波立つ
 麦の畑を眺めていました。
 あのころは、何でもなかったあの風景が、今では貴重な「麦の秋」の眺めだ
 ったんですね。

 暦の中には、旧暦の 4月には「麦秋(ばくしゅう)」という異称として麦の
 秋が登場します。また七十二候には「麦秋至」という言葉で登場します。七
 十二候の「麦秋至」は、二十四節気の四月中、「小満」の末候で、2012年の
 日付でいえば5/31〜 6/4がこの期間にあたります。

◇最後に一句
 「麦の秋」は季語ということで、この季語の入った句を一つ。

   麦の秋さびしき貌(かお)の狂女かな  蕪村

 晴れた初夏の一日、麦の収穫で忙しい村人たち。
 からかう暇も無く働く村人たちの姿を眺める狂女。
 初夏の青い空と風と狂女の姿が映像となって思い浮かびます。
 妙に明るくて、妙に寂しい麦の秋の風景です。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2012/05/26 号

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