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■還暦はいつから?
 読者の方からいただいたメールから、本日は「還暦」という年齢を表す言葉
 について考えてみました。
 まずは、頂いたメールから。

 −−−−−−− 妖怪逆さ蛍さんから(5/26のメール) −−−−−−−−
 こんにちは、妖怪逆さ蛍です。

 私も数年後には還暦です。
 子供のころ、そのうち大人になるんだという意識はあったのですが、その
 先のことまでは考えていなかったようです。
 かわうそさんがおっしゃるように、まさか自分がトシヨリになるなんて思
 ってもいなかったのですから、バカなもんですね。

 さて、昨日、満60歳になられたお兄様が、もう還暦だとおっしゃったそ
 うですが、その先まで読んで少々考えてしまいました。
 文面から拝察すると、満60歳の誕生日から還暦になるとお考えのように
 受け取れます。

 今さら言うまでもなく、還暦を迎えるとは、生まれた年と同じ干支の年を
 迎えることです。
 つまり、満60歳の全期間が還暦にあたるのではなく、満60歳となる年
 が還暦であるはずです。

 数え年を使っていた昔は、正月にとしをとるので、61の全期間と還暦は
 当然一致していましたが、満年齢を使う現在では、一致しません。
 一般的には、還暦=満60歳と思われていますが、そうすると、1月1日
 生まれの人以外、年があけて次の干支になっても、満61歳の誕生日が来
 るまでは還暦の状態が続くことになります。

 2月か3月に生まれたのならまだ妥協することもできますが、12月生ま
 れの人は、還暦の期間のほとんどが違う干支になってしまいます。
 じつは私は丙申の年の12月生まれなので、還暦を迎えてすぐに丁酉にな
 ってしまうため、還暦=満60歳とぃう考え方には、どうしても納得でき
 ないのです。

 やはり還暦というのは、生まれた年と同じ干支の年のこととするべきでは
 ないでしょうか。
 そうすると、私の場合は還暦の大部分が満59歳となりますが、それはや
 むをえないと思います。

 年齢の別称には他にも、初老、古希などがありますが、それらは干支とむ
 すびついているわけではないので、満年齢と直結しても差し支えありませ
 ん。しかし還暦だけは別だと思うのです。 いかがでしょうか。
 −−−−−−− 妖怪逆さ蛍さんから(5/26のメール) −−−−−−−−

 このメールは5/26号の埋め草の記に書いた私と兄との会話の内容についてふ
 れたものです。
 お忘れの方は、バックナンバーをご覧ください。
 → http://koyomi8.com/cgi/magu/index.php?date=20130526

 ちょっと長いメールでしたが、暦と関係した話でもありましたので、そのま
 ま紹介させて頂きました。

 妖怪逆さ蛍さんは、いろいろと悩まれた(考えられた)ようですが、元とな
 った会話をしていた私は、全然悩みませんでした。なぜか、

  だって、還暦は年齢を表す言葉なんだもの

 と考えているからです。
 なぜ悩まなかったのか、その辺りを少々書いてみます。

◇問題はどこに?
 問題があるとすれば「年齢の数え方の変化」でしょうか。

 還暦は元々は妖怪逆さ蛍さんがおっしゃるとおり、生まれた年の六十干支と
 同じ干支が巡って来る年齢となったことを指す言葉で、数え年(生まれた時
 に一歳、あとは正月になれば一歳ずつ年齢を加算する年齢の数え方)の六十
 一歳(←六十歳じゃないですね)という年齢の呼び名の一つでした。

 その呼び名が考え出された時に「暦(六十干支)が生まれた年に還る」から
 還暦と名付けられたとしても、現在ではそうした語源を離れ、年齢の呼び名
 として使われています。

 還暦のほかにも語源を離れて年齢の異称として今も使われるものの一つに、
 「古希」があります。

 古希は、杜甫の曲江詩にある「人生七十古来稀なり」から、七十歳という年
 齢を表す言葉として使われるようになりました。長寿化の進んだ現在なら、
 七十歳まで生きることが希では無くなりましたが、語源となった故事の時代
 とは事情が異なるようになっても、古希は七十という年齢の異称として通用
 しています。

 還暦をある年齢を表す異称の一つ(「還暦」をそれ以外に使うことはほとん
 ど無いと思います)ととらえると、重要なのは暦年より年齢ということにな
 ります。私はそうとらえているので、現在は一般に年齢を満年齢で数えるの
 で、誕生日を迎えて「六十歳になった。還暦だ」という兄の言葉に違和感は
 覚えませんでした。

 昔は個人の誕生した年月日、「誕生日」を重要視せず(「重要視出来ず」と
 いうのが理由だと私は考えています)、暦年の区切りを年齢の区切りとして
 おりましたので、暦年と年齢のずれといった問題は発生しませんでした。

 現在のように満年齢が一般化して、加齢のタイミングは人それぞれ、誕生日
 毎に異なるというようになると、還暦という言葉が生まれた時代には問題で
 なかった暦年の区切りと年齢の区切りの違いが問題となりました。
 しかし、年齢を表す言葉の一つとして還暦ととらえる以上、年齢の数え方に
 従って使えばよいのでは。

 「私は年齢を数え年で数えています」という方がいてももちろん問題ない。
 そうしてもらえば、今日の話題の元になったような問題も発生しないし。
 いかがでしょう。

◇七十歳で古希なのに、六十歳で還暦?
 数え年での還暦は六十一歳。でも、満年齢での還暦は六十歳。これは、数え
 年が生まれた瞬間から「一歳」と数えるのに満年齢では「零歳」から数える
 ことによる一歳の差があるからです。

 では、古希は満年齢では六十九歳を指すのかというと、どうもそんなことは
 ないようです。「人生七十古来稀なり」と「七十」という数字があるのに、
 これは数え年の年齢だから、満年齢では六十九歳が正しいとはならないので
 しょうね。

 「人生六十九古来希なり」

 じゃ、あまりにおかしいですから。
 同様に、年齢の数字を言い切られると、やはり満年齢でもその数字のままの
 年を表すことになるようです。

  十五 → 志学 、 三十 → 而立 、 四十 → 不惑
  五十 → 知命 、 六十 → 耳順 、 七十 → 従心

 また、漢字の組み合わせで数字を表している

  七十七 → 喜寿 、 八十 → 傘寿 、八十八 → 米寿
  九十 → 卒寿 、 九十九 → 白寿

 などもやはり、満年齢でもその数字のまま使っているようです。
 最後は、「還暦はいつから?」というタイトルからは大分離れてしまいまし
 たね。申し訳ない。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2013/06/02 号

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