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■2013年、日本と中国の旧暦の日付が違ってます
 最近、読者の方お二人から日本と中国の旧暦(中国では「農暦」ですか)の
 日付が違っているというメールを頂きました。
 お二人のメールから抜粋させて頂きますと次のような内容です。

 ・タチバナさんから(6/12のメールより抜粋)
 > いつだったか、いわゆる旧暦の元となった中国の暦と、日本の暦とで異
 > なる日付になることがあるとの記事を読んだ記憶がありますが、今日 6
 > 月12日がその日でしょうか?
 > というのも、本日 6月12日は中国、台湾等中華圏では『端午節』で旧暦
 >  5月 5日ですが、こよみのページでは旧暦 5月 4日。
 > これは、経度の差による日付決定の差ということなのでしょうか?
 > それとも用いた暦法の差?
 > また、ときどきおこるこういったヅレを、簡単に予測する方法はないも
 > のでしょうか?
 > 暦の行事に合わせて海外旅行に行ったら、(イベントは)もう終わって
 > ました、なんてことにならないようにしたいものです。

 ・若林さんから(6/11のメールから抜粋)
 > 旧暦の1日は、新月(朔)を含む日ですが、中国の標準時と日本標準時は
 > 1時間違っています。今月の朔は日本標準時2013年 6月 9日 0時56分で
 > す。そこでこの日が旧暦 5月 1日になりました。
 > 中国では朔が 6月 8日23時56分です。
 > 中国では 6月 8日が旧暦 5月 1日となり、この月は日本と中国で旧暦の
 > 日付が 1日ずれることになりますが、これでいいのですね?
 > このようなことは時々発生し、中国の方が日付けが 1日早いことがあり
 > すね。

◇違っている日本と中国の旧暦と新暦の日付の対応
 お二人のご指摘のとおり、今年の日本の旧暦の 5月と中国の旧暦(「農暦」
 と呼ばれています)の 5月の日付を新暦の日付に直すと、一日ずつずれてし
 まいます。

 2013年の日本の旧暦と、中国の旧暦の 5月の期間をそれぞれの国の新暦の日
 付で表すと、

  日本の旧暦 5月の期間を新暦で表すと 6/9 〜 7/7
  中国の旧暦 5月の期間を新暦で表すと 6/8 〜 7/7

 となります。終わりの日付は同じですが、始まりの日付が日本の方が 1日遅
 いですので、旧暦 5月の日付と新暦の日付の対応が日本と中国ではずっと 1
 日違うことになります。
 細かな話をすれば、新暦の 6/8は日本では旧暦の4/30ですが、中国では 5/1
 となりますので、この時点で旧暦と新暦の日付の対応がずれています。
 ちなみに、今年の旧暦4月、5月の日数は日本では30日、29日で「大小」の月
 の並びですが、中国では29日、30日で「小大」の月の並びとなります。

 メールを下さったタチバナさんが、中国(か台湾か?)の端午節の模様を見
 ようとして日本の旧暦の 5/5である新暦の6/13に現地に行くと・・・端午節
 は終わってしまっていたという悲しい結果になってしまうわけです。
 こうなってしまった原因は、若林さんがすでに書いて下さった両国での朔の
 瞬間を含む日付の違いです。

◇旧暦の暦月の区切りと暦日の区切り
 旧暦の暦月の始まりの日は「朔(新月)の瞬間を含む日」です。
 今回問題となった朔の瞬間とは

  ・世界時では  6/8 15時56分
  ・中国時では  6/8 23時56分 (ただし北京標準時)
  ・日本時では  6/9  0時56分

 朔(新月)の瞬間は地球中心から見た太陽中心と月中心の黄道座標の経度
 (黄経)が同じになった瞬間です。
 世界時、中国時、日本時と 3つの「朔の瞬間」を書きましたが、実はいずれ
 も同一の瞬間を異なる時計で表示しただけのものです。時刻が異なるのは時
 差のためです。

 中国時(北京標準時)は世界時+8時間、日本時は世界時+9時間です。中国と
 日本では 1時間の時差があることになります。わずか 1時間ですが、今回は
 その 1時間の違いで日付が替わってしまった。これが旧暦と新暦の日付の対
 応が日本と中国とで異なることになった理由です。

 旧暦の暦月の区切りは、朔の瞬間という地球中心で考えた時の月と太陽の位
 置関係で決まります。つまり「旧暦」を作る国が地球上の何処にあっても、
 この暦月の区切りの瞬間は同じなのです。

 旧暦の暦月の区切りの基準となる朔の瞬間はこのように、地球上の何処でも
 同じ瞬間なのですが、困ったことに地球上の何処でも同じにならない暦の上
 の区切りがあります。それは、「日(暦日)」です。

 「日」というのは、おそらく私たちが最初に手に入れた時間の長さの単位で
 しょう。暦(こよみ)の語源は「日読み」だという説が有力なように今もっ
 て暦の上の各期間の区切りの最小単位は、この「日」ですね。

 ではこの「日」とは何かと考えると、日が昇ってから次の日が昇るまでの期
 間とか、太陽が南中(真南を通過する瞬間)から次の南中までの瞬間、昼と
 夜が一回繰り返される期間・・・といろいろ考えられますが、どれもこれも
 地球の上で見た太陽の動きと関係しています。
 グローバル化の時代なんて云っても

  世界時では正午だから、そろそろ昼食を食べに行くか

 なんて云いながら、夜の街(日本時では午後 9時)に昼を食べに出かける人
 はまだいないでしょう。夕食というのならわかりますけど。
 旧暦の月日(暦月と暦日)の区切りにはこのように

  地球上何処でも同時に起こる現象を基準とするもの・・・暦月の区切り
  地球上各々の場所で異なる現象を基準とするもの ・・・暦日の区切り

 が混在しています。暦月がそれより短い区切りの単位である暦日を分断する
 ことは、もちろんありません(「今年の 5月の日数は29.7日だ」なんて云う
 ことはない)から、時差があれば、それがわずか 1時間の時差であっても、
 この影響で時々、旧暦の暦月の始めが 1日単位でずれてしまう場合が発生す
 るのです。

◇新暦の暦月と暦日の関係
 旧暦の場合に起こるこうした面倒な問題は新暦にはないのでしょうか?

 暦の歴史を遡れば、新暦の場合でも同じような問題があったと考えられます
 が、新暦の場合はずっと昔に各暦月の日数を固定してしまい、日の積み重ね
 だけで暦を作るようにしたことで、こうした問題は無くなりました。

 日本が×月○日に日付がかわると、その 1時間後には中国も×月○日になり
 日付の関係がずれることはありません。時差の分だけ、その始まるタイミン
 グが異なるだけです。

 旧暦は天体の動きを予測するという暦の原初の姿を残したため、今回のよう
 な問題を発生させることがあります。新暦は、ずっと早い段階で太陽以外の
 天体の動きを予測するという役割を捨てて、人間の社会生活に使いやすいシ
 ンプルな暦となる道を選んだため、こうした問題とは無縁です。

 今回の日付のずれのようなことが起こると、異なる道を歩んだ二つの暦の違
 いをあらためて考えさせてくれます。

◇今後の宿題かな?
 時差の問題は二十四節気の日付の違いによる旧暦月の月名の違い、閏月の挿
 入時期の違いなどの問題も発生します。
 この辺の話は、またいつか日を改めて。

 さらに、タチバナさんが日本と中国等との時差による旧暦日の違いを確認出
 来るような仕組み(簡単に予測するというのは難しいので、計算で求めて一
 覧表などにして)も Webこよみのページで公開していきたいと思います。

 ちなみに、日本時と中国時(北京標準時)で時差により朔の日付が異なるの
 は、次は2019年(日本 11/27, 中国 11/26)です。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2013/06/15 号

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