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■節供は旧暦の日付?
 「九月九日」は重陽の節供ということで、新暦の 9/9の今日の記念日の欄に
 重陽の節供と書いておりましたところ、

  「重陽の節供は旧暦の九月九日なので、これは違うのではないか」

 といった内容の御質問というか、ご指摘が数件ありましたので、本日はこの
 件について考えてみることにします。

◇五節供はいつ?
 重陽の節供は、五節供といわれる5つの節供の最後を飾る節供です(その割
 には知名度が今一つ、二つ足りませんが)。
 五節供とは、

  人日の節供 (一月七日。別名「七種の節供」)
  上巳の節供 (三月三日。別名「桃の節供」「雛祭り」など)
  端午の節供 (五月五日。別名「菖蒲の節供」)
  七夕の節供 (七月七日。別名「笹の節供」)
  重陽の節供 (九月九日。別名「菊の節供」「刈り上げの節供」など)

 です。人日の節供は、一月一日の元日に押し出されたのか、一つだけ他と異
 なって、月と日が同じ数字にはなっておりませんが、その他の4つをご覧い
 ただければ分かるとおり、節供は月と日が同じ日付(しかも奇数)の日とな
 っています。

 これは、月と日が同じになることは目出度いという考え、「重日(ちょうじ
 つ)思想」という考えに基づきます。奇数ばかり選ばれるのは奇数を「陽の
 数字」と考えたからです。

 ずーっと昔に遡ると、「上巳の節供」や「端午の節供」の名前に遺るように
 「○○月の初めの△の日」となっていたのです(上巳は、上旬の巳の日)が
 先に説明した重日思想と結びついて、現在のような形になりました。重日思
 想と結びついたのは、三国志の時代といいますから、現在のような形になっ
 てからすでに、二千年に近い歴史をもっています。

 月と日が同じ日付の日というのは覚えやすくて便利です。元来節供というも
 のは、一年の節目節目に、その身を清めて農作業を始めたり、収穫に感謝す
 るといった行事です。社会共同体の祭りのようなものですので、その共同体
 を構成するものが皆一斉に行うことが重要です。そうした意味から考えると
 みんなが覚えやすい日付であるということは、大変重要なことです。

◇さて、旧暦か新暦か?
 ここでおわかりのように、節供で問題になっているのは日付です。
 確かに、旧暦時代はその日付は旧暦によって行われていましたが、それは当
 たり前のことです。だって、その時代の暦といえば旧暦しかなかったわけで
 すから。

 そして、旧暦の日付で二千年以上も続けられてくると、旧暦の日付の頃に手
 に入りやすい、祭事植物と結びついて「桃の節供」だとか「菖蒲の節供」の
 ような別名が生まれました。

 この後から生まれた別名からすると、「重陽の節供は、菊の節供。新暦 9/9
 では菊の花の時期ではないからおかしい」という考えが生まれるわけでしょ
 うが、「暦」という観点からみるとこれは少々おかしな話です。

 旧暦時代の人が旧暦の日付で祝うのは当然ですが、新暦を使いながら、これ
 だけは旧暦の日付でというのは、現代の考えであって、旧暦時代からの「伝
 統的な考え」などではないのです。

 もっとも、年中行事として先にあげたように二千年も行われて、日付以外の
 様々な風物と結びついて現在に至っているので、そうした点では確かに新暦
 の日付との間に齟齬があるようにも見えますけれど。

 しかし、上巳の節供、端午の節供、七夕の節供など、現在も広く行われてい
 る節供行事は次第に新暦の日付で行われるところがおそらく過半数となって
 来ているところを見ると、様々な問題はあっても

  「覚えやすい日付」

 で行われるという昔の姿に戻りつつある気がします。
 重陽の節供は、残念ながら先に挙げた三つの節供と違って、今では忘れられ
 た節供といっていいほど影の薄いものとなってしまいましたので、少々懐古
 趣味的ものの見方をする方だけが注意を向ける節供となってしまい、そこに
 この「旧暦の日付で」という懐古趣味的な解釈が入り込んでしまったのでは
 ないかと考えます。

 もちろん、旧暦の九月九日を、「旧暦では今日が重陽の節供」といって祝う
 ことに何の異論もありませんが、だからといって重陽の節供は旧暦の日付で
 行うのが正しいとは思っていません。

  古くからある行事は、すべて旧暦の日付が正しい

 という考えは、物事の一面だけを見た短絡的な考えだと思います。
 節供の意味は、一年の節目節目で共同体を構成するもの皆が、その日を意識
 し、身を清めて自然の恵み等々に感謝するためのものです。新暦を日常に使
 う時代が長く続けば、やがて新暦の日付の節供に何の違和感も覚えない時代
 がやって来るのではないでしょうか。

 今はまだ、その途上にあるということで、混乱が生じているだけだと、私は
 考えています。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2014/09/17 号

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