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■メトン周期と暦
 「19太陽年は、 235朔望月の日数と一致する(近似的に)」
 この19太陽年の長さを「メトン周期」と云います。

 メトン周期は紀元前 433年にギリシャの科学者、メトンが発見した周期だと
 云われています。メトンは当時使われていた暦(太陰太陽暦の一種)の誤り
 を修正するために、この周期を利用することを提案しています。

◇メトン周期と太陰太陽暦
 太陰太陽暦の暦月は月の朔望月の長さになりますから平均、暦月の平均の日
 数は平均朔望月の 29.53日に近い値となります。では、この長さで 1年12ヶ
 月を過ごすと

  29.53(日) × 12(ヶ月) = 354.36(日)

 となります。これだと私達がよく知っている季節のめぐりである太陽年の1
 年の日数 365日、もう少し詳しく表すと365.2422日に比べておよそ11日も短
 く、この月の朔望の周期で数えた12ヶ月で1年を過ごし続けると、暦月と季
 節の関係が、3年でおよそ1ヶ月、8年で季節一つ分にあたる3ヶ月近くも
 ずれてしまいます。

 このずれを修正するために太陰太陽暦では、時々「閏月」という13ヶ月目の
 月を何処かに挿入することになります。
 古い時代の素朴な太陰太陽暦では、この閏月をどこにいれるかは、目にする
 作物の成育の状況や気候と暦を見比べて、経験的に決めていました。

  「経験的に」

 と云えば聞こえは良いのですが、一歩間違えると「適当にいれる」ことにも
 なり、もう一歩間違えると、閏月をいれる者にとって都合が良いように勝手
 に挿入の時期を決めてしまうと云うことにもなりかねません。
 「そんな馬鹿な!」と思えますが、そんな馬鹿なことが、結構あちこちで行
 われました。

  「そんなんじゃダメだろう!」

 と考えたメトンが、システマティックに閏月を挿入するための基礎となる周
 期として考えたのがメトン周期です。
 1年12ヶ月とすると、

  19(年)×12(ヶ月)= 228(ヶ月)

 となります。メトン周期は19太陽年が 235朔望月と一致するというものです
 から、19年間に 235の暦月を設ければ、季節のめぐりと暦月の巡りはほぼ一
 致することになります。1年を単純に全て12ヶ月とすると、既に書いたとお
 り、 228暦月となってしまいますので 235暦月に 7暦月分足りない。それで
 19年の間に閏月を挿入した1年13ヶ月となる年を7回作ってやれば、よいと
 いうのがメトン周期の暦への利用方法です。

 では、19年に7回の閏月を設けて 235朔望月とすると

  19太陽年 = 365.2422日 × 19 = 6939.6018 日
  235平均朔望月 = 29.53059日 × 235 = 6939.6887 日
  その差 0.0869日 (約2時間5分)

 ですから、この方法を用いると季節と暦月のずれは、小さく押さえることが
 出来ます。
 日本の旧暦は、中国で生まれた太陰太陽暦にその根源がありますが、中国で
 生まれた旧暦のご先祖様の暦にもこの「19年に7回の閏月を挿入する」とよ
 いという考えは取り入れらていて、この長さを「章」と呼んでおり、19年に
 7回の閏月を挿入するという規則に基づいた暦を「章法の暦」と呼んでいま
 した。

◇より長い周期
 19年 235朔望月というメトン周期の他にも、太陽年と朔望月の整数値の長さ
 が近似的に一致する周期があります。有名なところはメトン周期の4倍の長
 さの「カリポス周期」、さらにカリポス周期の4倍であるヒッパルコス周期
 です。
 ただし、ヒッパルコス周期は 

  19年×4×4 = 304年 = 235朔望月×4×4 - 1日 = 3760朔望月 - 1日

 という、調整の「-1日」がつきますが・・・。ヒッパルコス周期が3760朔望
 月から1日引くというのは、メトン周期における19太陽年と 235朔望月の日
 数の差が0.0869日であることを見ると解ります。
 小さなこの差も、

  0.0869日×4×4 = 1.3904日

 と1日を超える差になるため、1日分差し引いているわけです。

◇周期の限界
 メトン周期やカリポス周期などを用いると、太陰太陽暦がかなりすっきりし
 たものになるのですが、こうした周期を使うものの限界は、全て「平均した
 場合の話」と云うところにあります。

 朔望月の長さは平均すれば何度か使った、29.53059日になりますが、実際に
 個々の朔望月の長さを見ればその長さは29.27〜29.83日の間で変化しますの
 で、厳密に考えて行くと希にメトン周期や「章」といった平均周期で考えた
 状態から外れた年も出現してしまいます。

 中国の暦法は平均的に考えた年と朔望月から組み立てた「章法の暦」から、
 時代が進むにしたがって、章法を脱した、より現実の月の朔望に近い暦へと
 変化(進化したと云うべきか?)し、これを「破章法の暦」と云います。

 日本に中国から暦が伝来した時代には、中国ではこの章法の暦から破章法の
 暦への変化の時期に当たっており、日本で使用された暦はそのごく初期をの
 ぞけば、全て破章法の暦ということが出来ます。
 現在の「旧暦」と呼ばれる暦も破章法の暦です。

 「旧暦は19年に7回の閏月のある暦」だという解説を書いたサイトや書籍を
 見かけることがありますが、これは旧暦を少々誤解なさったものですので、
 気を付けてお読み下さい。

◇便利な時代
 さて、メトン周期等は長い間の観測結果と、沢山の手計算の結果導き出され
 たものです。これを二千年以上も前に行っていたというのは、驚きです。

 しかし、現在は太陽年の長さも平均朔望月の長さも理科年表を開いたり、ウ
 ィキペディアで調べれば簡単にわかり、計算もコンピュータがやってくれま
 すので、メトン周期やカリポス周期のように太陽年の整数倍と平均朔望月の
 整数倍が近似的に一致する周期を見つけることは簡単です。
 表計算ソフトなどに数値をいれて、ちょちょいと探すだけで

  19/235,  38/470 , 57/705 , 76/940 ,258/3191 ,277/3426 ,296/3661 ,
  315/3896 ,334/4131 ,353/4366 ,372/4601 ,391/4836 ,410/5071 ,・・・
 ※(太陽年数/朔望月数)を表す

 のような組み合わせを見つけることが出来ます。
 興味があれば、他に面白い組み合わせなど探してみて下さい。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2015/02/21 号

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