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■夏至を過ぎても日入が遅れる?
 ことの始まりは、昨日の、「皆様からのお便り紹介」で取り上げましたando
 さんからのメールでした。

 「日の出、日の入りの時間が24日と25日で逆転しています」

 というのがそれでした。
 もとになっていた資料は、「毎日新聞あいちページ」だそうで、その暦の欄
 に記載されていた各種の値をandoさんが、メールで教えてくださいました。
 その内容は次の通り。

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 (毎日新聞あいちページ ・・・ 名古屋港)
  年月日    旧暦    六曜    月齢    日出    日入
  150622    0507    大安    4.5    4:38    19:10
  150623    0508    赤口    5.5    4:38    19:10
  150624    0509    先勝    6.5    4:39    19:10
  150625    0510    友引    7.5    4:39    19:11
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 夏至は6/22でしたが、その後の6/25の日入時刻が遅れています。昼が短くな
 るのであれば、日入の時刻は早まってきてもよさそうなはずなのに。
 (日出も遅れていますが、こちらの方は「昼が短くなる」ということでは、
 正常な状態です)

◇原因は均時差(きんじさ)
 この日入の時刻の遅れは、均時差というものが関係しています。
 日本の標準時を計算する、標準経度は東経 135°。
 普通に考えると、毎日正午になると、この経度上にある町、たとえば兵庫県
 の明石市では、太陽が真南にきているはず(この状態を「南中する」といい
 ます)と思われがちなのですが、そうではありません。

 実は、同じ場所で太陽が南中して次に再び南中する時間の間隔は実は、24時
 間ではありません。季節によって変化するのです。

 私たちが現在使用している標準時のもととなる1日は、昔は実際に太陽の南
 中から南中までの時間であったのです(この1日を「真太陽日」といい、こ
 れを24等分して決めた1時間を真太陽時といいます)が、既に述べたように
 この長さは季節によって変化するので、不便であることから、現在は、平均
 太陽日、平均太陽時というものを1日、1時間の長さとして用いています。
 要するに、1年間の真太陽日、真太陽時の長さを平均した長さというわけで
 す。

 この平均太陽時を用いることで、いつも一定の時間間隔で電車は走り、季節
 による時計の進み遅れなどを気にする必要もなくなったわけです。ですが、
 その代り、今回のような奇妙な現象も起こるのです。
 こうした真太陽時と平均太陽時の差のことを「均時差」といいます。

◇夏至のころの太陽の南中の間隔
 では実際に夏至のころの太陽の南中と南中の間隔を調べてみることにしまし
 ょう。2015年の夏至の日とその翌日の太陽の南中時刻を、東経 135°にある
 場所(たとえば明石市)で測ったとすると

  6/22 12時 1分52秒
  6/23 12時 2分 5秒

 その差わずかに13秒ですが、南中と南中の間隔が24時間より長いことがわか
 ります。この時期の太陽の動きを私たちの時計で測った時刻で眺めると、太
 陽はわずかずつですが、遅れてやってくるように見えてしまいます。

(均時差については
 「冬至は一年で一番日の出の遅い日か?・・・均時差の話」
  http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0508.htm
 という解説記事を書いております。参考まで宣伝)

 この見かけの太陽の「遅れ」は日出、日入の時刻にも影響します。
 夏至を過ぎて、昼の時間が短くなるため、日入時刻は早まりそうに思えます
 が、均時差が絡むとそう単純にいかなくなるのです。

 とはいえ、先にみたように夏至のころの南中間隔は24時間よりわずかに13秒
 長いだけです。こんな小さな差で本当に、日入時刻の逆転現象など起きるの
 でしょうか? 答えはもちろん、「起こります」です。
 ただし、これが起こるためには、均時差による遅れの効果が昼の時間が短く
 なるために日入が早くなる効果を上回る必要があります。

 andoさんが日入時刻の逆転現象にお気づきになったのは、昼の時間の長さの
 変化がとても小さな時期、夏至(と冬至)にあたっていたからです。

 たとえば、名古屋における6/22と6/23の昼の長さ(日出〜日入までの時間と
 考えます)を計算して求めてみると

  6/22 14時間31分26秒
  6/23 14時間31分24秒
  ※名古屋港(北緯35°05′ 東経 136°53′)で、太陽の中心高度角が
   -0.85°に達した瞬間として計算。

 と、その差はわずかに 2秒しかありません(もう少し細かく計算すると差は
  2.8秒)。これだけ、小さな変化しかしない時期ですから、均時差の変化量
 である、13秒でも日入時刻の逆転現象が起こったわけです。
 これが他の季節、たとえば春分や秋分のころだと、1日当たりの昼の長さの
 変化が2分を超えるほどになるので、こうした逆転現象が見られなくなりま
 す。

 あと、普通は日出、日入の時刻などは分以下を四捨五入して表示するので、
 日入の時刻の末が、30秒前後にあると、1秒の差でも1分の差に見えてしま
 といった、表示上の効果もありますね。

(なお、この文章で使用した日出、日入時間の詳細な計算結果は、毎日新聞の
 日出、日入時刻の計算条件がわかりませんでしたので、大気差は0.6° 、太
 陽の視半径0.25°、太陽視差は太陽地心距離から求めた値として独自に計算
 した値を用いました。)

◇夏至より昼の時間が長く見える日?
 今回は、日入の時刻は逆転していますが、

  日入時刻 - 日出時刻

 の答えである昼間の時間自体には逆転現象が見られませんでしたが、今日説
 明した均時差と時刻表示の四捨五入の関係で、昼間時間の長さ自体が逆転し
 て見える場合もあります。
 この辺の実例(?)については、また別の機会に書いてみたいと思います。

◇最後に気になること
 andoさんが書き送ってくださった毎日新聞の暦の数値で、日入より気になっ
 たのが月齢の数字。
 なんか、1日分ずれているような気が・・・。
 毎日新聞、買って確かめてみようかしら?

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2015/06/26 号

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