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■大正十六年の神宮暦
 今も官暦時代の伝統と格式を残して、刊行され続けている神宮暦という暦が
 あります(神宮司庁が作っています。巷に溢れる「○○易断神宮暦」の類い
 では有りません)が、この神宮暦には「大正十六年」と印刷されたところを
 あとから筆で「昭和二年」と訂正したものがあります。
 なぜこんなことが?

 本日は、この「大正十六年の神宮暦」にまつわる話です。

◇元号と改元
 「こんな話をするのは、不敬なことのような気がする」と気がとがめる話題
 では有るのですが、「一世一元(いっせい いちげん)」という天皇一代の
 間にひとつの元号を使うという制度をとる限り、避けては通れない話があり
 ます。それは改元の問題。

  今上天皇が崩御して改元となったら・・・カレンダーはどうするのかな?

※「一世一元」
 現在の元号は元号法によって、「元号は、皇位の継承があつた場合に限り改
 める」となっています。

◇「元年の暦」は無い
 明治への改元以降、一世一元の制度をとるようになり(それ以前には、一人
 の天皇の在位に改元したこともたびたびありました)、天皇が崩御するとそ
 の日、またはその翌日に改元が行われるようになりました。
 改元の行われた日付を見ると、

  明治→大正:明治45年 7月30日が改元して大正元年 7月30日に。
  大正→昭和:大正15年12月25日が改元して昭和元年12月25日に。
  昭和→平成:昭和64年 1月 7日の翌日が改元し平成元年 1月 8日に。

 となっています。
 今後は、平成への改元と同じく天皇崩御の翌日に改元がされると考えると、
 崩御の日が大晦日にあたっていない限りは、年の途中で元号が変わりますか
 ら、前の元号の年の最後の年と新しい元号の元年は同じ年となってしまいま
 す。その年の暦、カレンダー類は既に印刷され、使われ始めているので、新
 たに刷り直さない限り、元年の暦というものは無いことになります。

 平成の始まりは1月8日と、一年の始まりの辺りでしたので、大急ぎで新しい
 元号のカレンダーを作れば、ほぼ一年、新しい元号のカレンダーが使えます
 から、作り直すということも考えられるでしょうが、年も半分を過ぎた 7月
 30日や、年の瀬の12月25日に改元があったら、作り直すことは、まずしない
 でしょう。ということで、基本的に印刷された「元年の暦」というのは無い
 ことになります。

 還元があると、カレンダーだけじゃなく、元号を使って年月日を表記したよ
 うな出版物、印刷物は、いろいろと不都合が起こることになります。
 頭が痛い。

◇「元年」どころか「二年」も無かった昭和の暦
 基本的に「元年の暦」は無いことは説明したとおりですが、大正から昭和に
 かけては、さらに「二年」の暦もありませんでした。

 明治から大正へ変わった 7月30日や、昭和から平成に変わった1月8日ならば
 二年の暦を作る余裕はあります。しかし、大正から昭和への改元が行われた
 ような12月25日などという、年の暮れだと「昭和元年」になったと思ったら
 その元年もたった 7日で終わって、昭和二年となってしまいます。

 つまり、昭和二年の暦を作るまでの期間は1週間。それに、この時期なら既
 に翌年の暦の作成、販売、配布が終わっているはずなので急遽「昭和二年」
 の暦を作ったとしても、果たして使われるかどうか・・・。

◇大正十六年の神宮暦
 大正から昭和への改元の当時、官暦の地位にあった神宮暦も事情は同じ。
 既に「大正十六年」の暦が作成され頒暦も進んでいましたから、今さら昭和
 二年の暦を刷り直すことは出来ません。

 しかたが無いので、既に完成している暦の「大正十六年」を「昭和二年」と
 訂正して配布しました。このため、表紙に「大正十六年」というあるはずの
 無い年が書かれた神宮暦が存在しているのです。
 私も、欲しいな・・・

 かわうその「物欲」の話はさておき、大変不敬な話とは思いながらも、天皇
 陛下のご高齢を考えると、いずれは考えておかないといけない改元問題。
 私は、「どうするのかな?」と興味本位で眺めていれば済みますが、現に物
 を作らなければいけない、カレンダーや手帳を作っている方々は、頭を悩ま
 せていることでしょう。

 今は、電子媒体であればインターネットを使ってすぐに更新することもでき
 ますが、どうしたって「印刷物でないと」というものが残りますから、まだ
 まだこの問題は続きそうです。もしかしたら、そうしたリスクを考えて、西
 暦のみの表記に移行しているというところも多いかもしれませんが。

 私としては、「旧元号を訂正した暦」なんていう、レアものが欲しいところ
 ですけどね。あ、やっぱり不敬な、物欲の話で終わっちゃった!

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2015/10/06 号

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