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■2017年 2月の朔の日付騒動
 今回は、読者の冬春夏秋さんからいただいたメールから、話題を拾わせてい
 ただきました。
 早速ですが、冬春夏秋さんからいただいたメールの紹介から始めます。

 ---------------- 冬春夏秋さんのメール(必要箇所抜粋) -------------
 > 今回は質問がありましてメールいたしました。
 > 来年2017年2月の朔日についてです。
 > 西暦2/26と2/27の両説があります。六曜がずれ、ブライダルの方で騒ぎ
 > になってましたね。
 > 国立天文台の2/26 23:58の発表で2/26説でほぼ決着した感がありますが。
 > それでは2/27説はどこから出てきたのかという質問になります。

 > 1 天文運動計算の間違い
 > 2 朔日決定法の違い

 > など考えたのですが、どうなんでしょうか?
 > お時間ありましたら、お答えいただけたら幸いです。
 
 > またこのような微妙な時刻があったら場合、東京、京都、明石などのど
 > こを基準にするかで変わってきますよね。
 > 難しいです。
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 「ブライダルの方で騒ぎになってましたね」とあったのですが、そんな騒ぎ
 になっていたとは知らなかった。
 この情報から拾ったキーワードで、インターネットで検索してみると、確か
 にそれらしい記事が出てきました。

  カレンダーの「2017年問題」 ブライダル業界が大慌て
  (livedoor NEWS http://news.livedoor.com/article/detail/11057133/ )

 本当だ。知らなかった。

◇問題となった「朔の瞬間の時刻」
 2017年の朔(新月となる瞬間)の時刻を見て行くと、2/26の朔の時刻が

  2017/02/26 23時58分23秒 (日本標準時)

 と日付の変わる24時(翌日 0時)に近いところにあることがわかります。
 24時に近いとは云え、2/26日のうちに朔を迎えているので、「朔の日」云え
 ば、2/26で2/27ということにはなりません。

 それに、近いと云っても1分以上も違っているので、なんで間違えるかなと
 いうのが、率直な疑問。冬春夏秋さんは、この原因として

  1 天文運動計算の間違い
  2 朔日決定法の違い

 の二つを候補として挙げて下さっていましたが、さてさて。

◇「天文運動計算の間違い」の可能性
 計算間違いの件で、もしかしたらと考えられるのが、天体の位置計算などに
 使われる力学時と日常の生活に使われる世界時とのずれを修正し忘れたとい
 うこと。

 2017年の段階で予想されている力学時と世界時との差は68秒程度。力学時の
 方が進んでいます。もし、朔の時刻を力学時のままで表すと

  2016/02/26 23時59分31秒 (力学時 + 9時間)

 となります。もしここで時刻を分までに丸めると

  23時60分 -> 24時00分 ・・・ 翌日の 0時

 と見なしてしまったなんてこともあるかも。
 もっとも、こうした場合に日付まで繰り上げはしないということが朔や望
 (満月の瞬間)の日付を計算する場合の基本ですので、そんなことをしたの
 であれば、それはもう論外。

 そう考えると、計算間違いというのはなかなか考え難いことです。
 本当に計算を間違えた・・・という可能性もありますが、これに関しては確
 かめようもないですので、これも論外とさせていただきます。

◇「朔日決定法の違い」の可能性
 これに関しては、江戸時代の始めの頃まで使われていた宣明暦には「進朔」
 という規則があり、朔がその日の 3/4を過ぎた後に起こった場合には、朔日
 を、翌日に先送りする(進める)ということが行われていました。

 今回の場合だと、このその日の 3/4を過ぎた後で起こった朔なので、進朔の
 対象になるので、この規則を用いれば、朔の日付は 2/27となります。

 しかし、この「進朔」という規則は宣明暦より後の日本で使われた太陰太陽
 暦では使われたことがありませんので、まさか今さら進朔の規則を用いたと
 は考えられません。
 それ以外に思い浮かぶ「朔日決定法の違い」も浮かびませんので、この可能
 性も無さそうです。

◇それ以外の可能性
 二つの可能性が無さそうだとすると、後は何が?
 冬春夏秋さんは更に、

 > またこのような微妙な時刻があったら場合、東京、京都、明石などのど
 > こを基準にするかで変わってきますよね。

 と書いて下さったので、この件についても考えて見ます。
 もし、明石(現在の日本の標準経度、東経 135度にある都市)ではなくて、
 京都の経度

  京都の経度:東経 135度47分

 を日時の計算の標準経度とすると、朔の日時は

  2/27 00時01分23秒

 となり、朔日が2/27になります!
 と書きましたが、まあ、これはあり得ません
 もしこれを許すなら、新暦から旧暦の日付の変換なんかは、

  「新暦 2016/04/02 に対応する旧暦の日付は 2/25です。
   ただし、旧暦の日付の切り替わりは、新暦の前日23時57分です・・・」

 なんていう書き方をする必要があります。
 旧暦が現役の暦であった時代の、天文などの観測記録の日時を、現在の暦の
 日時に変換すると云った用途であれば、それぞれの暦における日付の切り替
 わる瞬間の違いなども考慮する必要がありますが、今回の問題(ブライダル
 業界が騒いだという)は、そうした問題ではないでしょう。

 だとすると、朔日の日付の区切りは、普通の日付の区切りと同じ基準の経度
 を使わないといけないでしょうね。

◇もう一つおまけ
 冬春夏秋さんのメールにはありませんでしたが、もう一つの可能性として、
 視太陽時(真太陽時)と平均太陽時との違いによる日付の違いというのも考
 えて見ましたが、問題になる2017/02/26のあたりの均時差を考えると、視太
 陽時で求めてもやはり朔日は2/26であって、2/27にはなりません。

 それに、これも一つ前の標準経度を変更して計算するのと同じで、日付の切
 り替えに用いる時刻系を、現在使用している平均太陽時以外に変えるという
 反則技ですから、これもダメですね。

◇結局わからずじまい
 色々考えて見ましたが、冬春夏秋さんの

 「2/27説はどこから出てきたのかという質問」

 には答えることが出来ませんでした。
 うーむ・・・
 まともに考えれば、間違えるはずのない間違いなので、まともに考えていな
 いのか、まともに計算していないのか?
 それくらいしか私には云えません。

  間違う理由

 は様々。論理的な間違いなら推測も出来ますが、そうでない間違いの原因推
 測は無理みたいです。答えになっていないかも知れませんが、この辺でご容
 赦下さい。

 ※注意
 力学時や世界時については、込み入った話がありますが、書き始めたらとっ
 ても面倒なことになるので、この説明ではさらっと「力学時と世界時」と書
 かせてもらいます。
 悪しからず。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2016/04/02 号

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