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■「満月の瞬間」と「満月の日」の話
 Web こよみのページのアクセスログを見ていると来訪者数が平均より2〜3割
 増える日が毎月あります。その毎月ある日というのは、満月の日(か、その
 直前の日)です。

 更に詳しく調べると、その増加分の大部分は「月齢カレンダー」などの満月
 の日付を調べることの出来るページへのアクセスです。それだけ「満月」の
 日に興味を持つ人が多いということですね。

 この傾向は、10年くらい前には無かったように思いますから、満月の日に興
 味を持つような人が、増えてきたのかな? 元々存在した、そうした人達が
 ここ数年で、データソースとしてこよみのページを利用するようになったと
 いう見方も可能なので、断定は出来ないですけれど、「満月の日に月光浴」
 なんていう話は、確かに昔は聞かない話でしたから、満月の日に興味を持つ
 人が増える傾向にあることは、ありそうなことです。

 さてさて、この「注目されることが増えてきた満月」について、質問をいた
 だきましたので本日は、これをとりあげてみます。

◇-------------- イナゴ様から(1/12のメール) ------------------
 いつも楽しく拝見しています。
 質問があってメールしました。

 今日1/12の説明に「満月 望。月と太陽の黄経差が180°となる日。天文学
 的満月。」とありました。

 過去ログの「満月と十五夜の月の話」
 (http://koyomi8.com/doc/mlwa/201610200.htm) 

 を見返すと、天文学的満月の平均は月齢14.76。

 1/12正午に月齢13.8、1/13正午に月齢14.8ですので、
 満月の瞬間は明日1/13のお昼前になると思います。

 お聞きしたいのは、満月の日を1/13でなく1/12とされる根拠です。

 深夜のおよその月齢は
  1/12の深夜 (1/13 0:00) 14.3
  1/13の深夜 (1/14 0:00) 15.3
 なので、より14.76に近い1/12の夜が満月ということで合っていますでしょ
 うか。

 たぶん私の中でひっかかっているのは、1/12の夕方から1/13の明け方にか
 けて見える月は1/12の月なのか、1/13の月なのかということがひとつ。

 それについては普通夜というと未明ではなく夕方以降を連想するので正し
 いとして、では僕らがもっとも目にするであろう夕方から深夜にかけて
 (たとえば22:00ごろ)の月は、今 夜よりも明日の方が丸いんだよなあと
 いうのがもうひとつ。

 難癖をつけるつもりは毛頭ありません。そもそも定義づけの問題なので、
 何日が満月かとこだわることがナンセンスであることは理解しております。
 -------------- イナゴ様からのメール・ここまで) ------------------

 誤解を防ぐ意味で、少々長めの引用をさせていただきました。
 もちろん、難癖とは受け取っておりませんので、ご心配なく。
 また、イナゴさんが純粋に疑問に思ったことを質問して下さったことも了解
 しております。
 あくまでも本日の暦のこぼれ話の話の切っ掛けとして引用させていただきま
 した。

 以上、お断りした上で本日のこぼれ話を開始いたします。

◇「満月の瞬間」と「満月の日」
 「満月」となる日はいつかという問題に関しては簡単です。
 「(地球中心から見た)月と太陽の黄経差が180°となる日」
 という説明そのままだからです。

 質問が、「満月が見える日はいつですか」ということになると、少々悩む
 ことになります。なぜなら、観測地点を例えば「東京」のように限定した場
 合、満月の瞬間の月が必ず見えるわけではないからです。
 問題となっている2017/1月の満月の瞬間は

  2017/1/12 20h34m (日本時。ちなみに、この瞬間の月齢は 14.195)

 ですから、満月の日も満月の見える日も1/12で問題ありませんが、2月の満
 月を調べると

  2017/2/11 09h33m (日本時。ちなみに、この瞬間の月齢は 14.018)

 となっています。この日の東京での月の出没時刻を調べると

  2/11 月没 06h25m (この間は見えない) 月出 17h38m

 となります。満月の瞬間は09h33mですから、東京では「満月の瞬間」が見え
 るかといえば、見えるはずはありません。お月様は地平線の下にあるはずな
 ので。ならば、2017/2の満月の瞬間は東京では見ることが出来ないのである
 から、この月(暦月)には東京では「満月の日が無い」というべきか?

 天文学的な満月の瞬間は「地球中心」で考えたものですから、東京だろうが
 ロンドンだろうが、ニューヨークだろうが関係ありませんが、月が見えるか
 どうかは、それぞれの地点ごとに異なります。

 ならば、「満月にもっとも近い月が見える日を満月の日とすれば?」なんて
 考えると、また困った問題が出てきます。満月にもっとも近い月が見えると
 いうのは、月の出の時刻の話、それとも南中時刻、はたまた月没の時刻?
 何か新しい「定義」を作って「新・満月の日」を求めることは可能ですが、
 これをやっても、「それは変じゃない?」という見方をする人が減るわけじ
 ゃないと思います。

 ではどうするか?
 「日」を単位として考えるなら、何らかの方法で区切りをつけないといけま
 せんし、一つの区切りの定義では、どの方法でもそれでは困るという例外的
 な用途もあって、そうした用途では問題となるでしょうけれど、どの方法で
 も問題が出るのなら、満月の瞬間を含む日」を「満月の日」とシンプルに定
 義するのが穏当なのでは。

  そんないい加減な!

 といわれそうですが、そうでもないです。
 それぞれの用途に合わせて厳密に考えたい場合は、満月の瞬間は正確に求め
 られるわけですから、そこから先はそれぞれが考えればいいことですから。

 というわけで、満月の日というのはいつかといわれた場合、一般的には満月
 の瞬間を含む日を答えます。この「穏当な使い方」は、国立天文台の暦要項
 でもそうですし、新聞の月の情報などもこうなっているのがほとんど(暦要
 項がデータソースでしょうから当然)。

 逆にこれ以外の独自の定義で掲載したら、それこそ毎回その定義の違いを説
 明することになるでしょうから、そうした暴挙(冒険かな?)は私はしてお
 りません。悪しからず。

◇ついでに満月と月齢の話
 いただきましたメールにあった話で、もう一つ気になったのが「月齢」につ
 いてです。
 他の箇所でも何度も(何度となく)書いてきたのですが、「満月の瞬間」は
 月齢で決めるものではありません。満月の瞬間と月齢とは無関係ですといっ
 てもあながち間違いではありません。
 月齢で正確に表される朔望はというと、

  月齢 0の時は新月(朔)である

 ということだけです。ま、これは月齢が新月の瞬間からの経過時間を「日」
 を単位として表したものですから、あたりまえといえばあたりまえ。
 確かに満月の瞬間の月齢を平均すれば、14.76となりますが、月齢が14.76に
 なったら満月になるわけじゃありません。

 月齢は、月の朔望のある程度の目安になるものではありますが、あくまでも
 「ある程度の目安」であって、月の朔望の定義はあくまでも月と太陽の位置
 関係。月齢ではありません。

 いろいろなところで「月齢」というものが月の朔望を示す(決定する)特別
 な数値であるという

  月齢神話

 とでも呼びたくなる誤解が蔓延っています。
 どうか、日刊☆こよみのページの読者の皆さんは、「月齢神話」に惑わされ
 ることの無いように。
 お願いいたします。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2017/01/15 号

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