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■旧暦の一年の日数と月の朔望
 新暦と旧暦とでどちらが複雑か?
 明治の改暦が行われた直後には、次のような批判がありました。

  旧暦の月の日数は29か30の 2種類だけだが
  新暦の月の日数は、28,29,30,31と4種類もある。
  ご覧のとおり、新暦は旧暦に比べわかりにくい暦である。

 もちろん、批判者は新暦への改暦に反対する立場で書いています。
 皆さんはどう思いますか?

 確かにこの批判者の言の前段は間違いありません。旧暦の月の日数は 29,30
 の何れかしかありません。でもね・・・。 29,30の月がどの月か毎年変わる
 し、それどころか 1年が12ヶ月の年と13ヶ月の年が入り交じっていることを
 考えるとね。

◇新暦と旧暦の年の日数は?
 前述の新暦と旧暦の比較は月の日数についてですが、これを年の日数に置き
 換えてみるとどうなるでしょうか?

  旧暦の年の日数は353,354,355,383,384,385の 6種類だけだが
  新暦の年の日数は、365,366の2種類もある。
  ご覧のとおり、新暦は旧暦に比べわかりにくい暦である? あれれ???

 年の日数で比較すると新暦と旧暦の立場が逆になってしまいますね。
 1年の日数が6種類もある暦を使っていると、「気温の年平均」なんかとろう
 とすると、悩んじゃいそうですね。

 さて、新暦の年の日数が 2種類ある件については 1太陽年の長さが365.2422
 日という具合に日単位では端数が発生する為、この端数を調整する為にほぼ
  4年ごとに 1日のうるう日が加わるためであることはご存じのとおりです。

 では、旧暦の 1年の日数が 6種類もあるのはなぜでしょうね?
 これは、旧暦が月の朔望の周期に基づいて組み立てられた暦の宿命です。

◇月の朔望と旧暦の 1年の日数
 一口に「旧暦」といってしまうと、まるで一つの暦法のように誤解されてし
 まいそうなので、ここでは

  明治改暦前に日本で公的に使用されていた暦

 としておきましょう。
 さて、この旧暦はご存じのとおり、太陰太陽暦と呼ばれる暦の一つです。
 ここで重要なのは、「太陰」が主で「太陽」の方が従という関係にあること
 です。

 あくまでも、月の朔望に基づいた「暦月」の期間を定め、この暦月を太陽年
 の中に上手く収まる(もちろん、近似的にということで)組み合わせではめ
 込んだ暦ということが出来ます(暦月を太陽年の中に上手く収めるために考
 え出されたものが二十四節気です)。

 このように、暦月が月の朔望に基づくものであることは揺るがないものなの
 で、暦月の日数は月の朔望周期(およそ29.3〜29.8日で変化)から 1日以上
 離れることはありません。もちろん暦月の日数は整数となりますので、どち
 らの条件も満たすことを考えると、その日数は29日か30日かの何れかとなり
 ます。

  1暦年の日数についてもこれと同じことですが、ここにもう一つ条件が加わ
 ります。それは、 1暦年の長さは 1太陽年の長さ(厳密に言うと、冬至〜次
 の冬至の期間として考えた場合の太陽年)から、 1朔望月以上離れることが
 無いということ。もちろん 1暦年の中に含まれる暦月数は整数ですから、こ
 れを考えると 1暦年は、12暦月か13暦月の何れかだということです。

 こうした条件を考えると、旧暦の 1暦年の日数は12朔望月ないしは13朔望月
 の日数で決まるということになります。 1朔望月の長さは前述の通り、異な
 ります。組み合わせは沢山出来てしまいますので、実際の12、13朔望月の期
 間を求めて眺めてみるのが早そうです。比較の期間があまり短いと希な例を
 見落としそうですから、ちょっと長めにAD1000〜2200年までの1201年間の期
 間から求めてみます(面倒なので、連続する12ないし13朔望月の長さとして
 調べており、冬至で区切るといった操作はしていません)。

 結果
  12朔望月 353.960〜354.367日 (353〜355日) ・・・ 14842例
  13朔望月 383.642〜384.122日 (383〜385日) ・・・ 14841例

 ()は、旧暦と同じ方法で、暦月を区切ったときの日数です。
 旧暦の区切りである朔(新月)は、ある日の中であればそれが、何時であっ
 ても同じ扱い(0時0分でも、23時59分であってもということ)となりますの
 で()の日数は、それを考慮した日数です。

  1年の日数を計算するだけでも、その間の朔望月を計算し、合計しなければ
 ならないのですから、大変。「わかりやすい暦」とはいえないと思いますけ
 ど、皆さんはどう思いますか?

◇実際の旧暦の 1年の日数分布
 前述の 12,13朔望月の日数を見ると、353日の年はかなり希で385日の年も珍
 しそうだと見当は付きますが、実際はどうでしょうか?
 情報が沢山あって、誤りの無さそうな江戸時代(1603年〜)〜明治5年までの
  270年間について調べて見ると

  353日・・・  1例 (1744年)
  354日・・・109例 (1603年他)
  355日・・・ 61例 (1606年他)
  383日・・・  9例 (1629年他)
  384日・・・ 88例 (1604年他)
  385日・・・  2例 (1634,1713年)

 ということでした。

◇おまけ・・・例外中の例外?
 と記事を書き終えるつもりでしたが、実際に使われた暦の日数を調べて見る
 と、この 6種類の日数以外の年が 2年だけあります。

  斉衡元年(854年) ・・・ 356日
  寛平三年(891年) ・・・ 356日

 この年は計算上は、どちらも 355日となるはずの年ですが、人為的に元日の
 日付が一日前(本来であれば前年の大晦日)に変更されているため、 1日増
 えてこんな例外的な年になってしまっています。

 古い時代には、こうした人為的な暦の修正があって計算だけではたどりきれ
 ません。こうした人為的な暦の修正についてもいずれ採り上げたいテーマで
 す。またいつかのの日・・・。

 この例外の例外まで入れれば、旧暦の日数の種類は 7種類となりますが、こ
 うした人為的な修正までいれるのは旧暦の暦法説明としてはなじまないと思
 われますので、除外してもよいでしょう。

 ということで、旧暦の 1年の日数は 6種類もあるんだぞ!
 という、本日の暦のこぼれ話でした。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2017/02/12 号

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