こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■標準時の話
 日本とイギリス(英国)とでは、9時間の時差があります。
 例えば、

   日本 5/14 08:30
   英国 5/13 23:30

 のような具合に、両国の時刻の間には9時間の差があります。
 ご覧のとおり、日本の方が9時間進んでいます。この例のとおりで日本の朝
 9時までは、イギリスはまだ「昨日」の日付となります。

◇時差の生まれる原因
 これは皆さんがよくご存じのとおり、「地球は丸いから」ですね。
 1日は24時間といいますが、その1日というのはどういうものでしょう。

 非常に素朴な概念としては、日出から次の日出までの長さが1日。
 もちろん日出でなくて日没でもかまいません。イスラムの宗教暦であるヒ
 ジュラ暦などは今でも日没が一日の起点としています。

 さて、日出あるいは日没で1日を区切るというのは非常に解りやすいのです
 けれど、この方法では1日の長さが季節によって大きく変化してしまうと言
 う問題が起こります。

 日刊☆こよみのページの日出没時刻を毎日見ていればお解りになるとおり、
 おおむね冬から夏へ向かう期間は日出時刻は日々、少しずつ早まり、逆に夏
 から冬に向かう期間は遅くなります。つまり、日出の間隔によって1日の長
 さを決めると、冬から夏に向かう間は、1日の長さが短めになり、夏から冬
 へ向かう間は長めになります(日没を基準にすると、この関係は逆になりま
 す)。

 ということで、日出没よりこうした変化が少ない安定した現象(しかも、解
 りやすい現象)はないかと考えて、使われたのが太陽の南中時刻。つまり、
 太陽が真南を通過する時刻です。南半球では南中時刻ではなくて、北中時刻
 になりますが、ひとまず北半球中心で「南中時刻」としておきます。

※南北両半球で共通に使えることばとして、「上方正中時」という言葉を使う
 こともありますが、ま、あまり聞かない言葉ですね。余談でした。

 さて、南中時刻と次の南中時刻の間隔を1日とすると、この長さは結構一定
 で、使いやすい時間の単位となりました。「結構一定」と書いたとおりで、
 数十秒単位の差は生まれてしまうのですが、本日の話とは直接関係ないので
 この話はまたいずれ。

 さて、太陽の南中の間隔を測って1日という長さが決まり、これを24等分し
 て1日24時間という時刻の体系が作られました。この方式ですと、何処でで
 も簡単に時刻系が作れます。ということで、世界各地でこんな1日24時間の
 時刻体系が使われるようになりました。

 とても便利でいいのですが、既にお気づきのとおり、天体の日周運動は地球
 の自転運動によって起こる現象なので、これによって起こる太陽の南中の瞬
 間を1日の起点とすることを丸い地球の上で行えば、その地の経度の違いに
 1日の始まりの瞬間がまちまちになってしまいます。
 こうして、時差が生まれました。

◇標準時の誕生
 でも、「まちまちでもいいんです」という時代が長く続きました。
 まちまちとはいっても、南中の瞬間の差が1時間となる経度差は15°です。
 経度差15°は日本のある緯度35°あたりで考えると約1370kmにもなります。
 赤道地帯であれば、その距離はさらに長くて約1670km。
 長いことこんなに長い距離を、しかも1時間の差が問題となるほどの短時間
 で移動する手段はありませんでしたから。

 天文学などの分野では、例えばある場所で日食の起こる時刻を予測するため
 には、この時差の問題を考える必要がありました。しかしこの場合は、机上
 で経度差分の時差を足したりひいたりするだけなので日常生活に影響を与え
 るようなことはありませんでした。

 では、何が問題になったのかというと、それは「鉄道」の出現です。
 例えば、東京と大阪の間を移動することを考えます。
 両者の経度差は約4.2°、時差を考えると約17分です(東京の方が進んでい
 る)。さてここで問題です。東京発9:00発の列車に乗って 5時間の鉄道の旅
 をしたとすると、大阪着の時刻は?

 今なら、何の問題もなく 14:00着となるはずですが、まちまちに時刻を決め
 ていたとすると、大阪駅の着時刻は 13:43となるはず。でも乗客であるあな
 たの時計は 14:00。こうなると、仕事先との打ち合わせだけでも大変です。

 国を超えた鉄道網の整備が早くから進んでいたヨーロッパでは、この問題は
 笑い事ではなくて、標準的な時刻系が必用となりました。そして、1884年の
 国際子午線会議において、グリニッジ子午線を本初子午線(基準の子午線)
 とする標準時、タイムゾーン(TIME ZONE)の整備が行われました。

 日本においては1886(明治19)年に東経135°を日本標準子午線とすること
 に決定(時刻は、グリニッジ標準時+9時間)と決定し現在に到っています。
 なお、台湾を統治していた時代には、東経120°を基準とした西部標準時も
 あり、これと区別するために、東経135°を標準とするものを日本中央標準
 時と呼びました(現在も、その痕跡が残っています)。

◇標準時は人間の都合次第?
 標準時は、経度15°単位で区切られたタイムゾーンを基本にします。
 これは、丸い地球を経度方向で24等分し、時刻としては1時間単位で区切っ
 たためです。

 ですが、これを使う人間は経度とは関係ない「国」のような社会単位をその
 活動の基盤としておりますので、単純に経度15°で標準時が分けられている
 わけではありません。

 だいたいは、国単位であったり、ロシアやアメリカのような大きな国土を持
 つ国では州などの行政単位に沿って標準時を定めています。「だいたいは」
 と書いたのは、そうでもない例もあるから・・・。何せ、決めるのが人間で
 すから、いろいろ勝手に変えるのです。

 単に経度15°で分ければ、グリニッジ時刻から-12〜+12時間の間に入りそう
 な標準時が、現在使われているのは-12〜+14時ということで、その辺の事情
 が解ります。また、インドの +5:30,ネパールの+5:45,ちょっと前までの北
 朝鮮の+8:30といった、半端(?)な標準時を用いる国もあります。
 そして、その北朝鮮のように突然標準時を+9:00に変更するなんていうこと
 も。ちなみに、2015/8/14までは北朝鮮の標準時は+9:00でしたので、3年弱
 で元に戻したともいえます・・・。

 暦や時刻などは、科学的に決められていると思っている方が多いのですが、
 それは誤解だと言うことが、この標準時の一つをとってみてもよくわかりま
 す。

  「ある地点の日の出の時刻を知りたい」

 といった場合、その経緯度さえ解れば計算自体は出来るのですが、その答え
 を表す時刻としてどの標準時を用いればよいのかは、計算だけでは知ること
 が出来ません。
 ああ、面倒くさいなー。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2018/05/13 号

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