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■東京盆
 今日はお盆、といっても全国的に見るとこの時期に「盆」の行事を行う所は
 珍しいので、その珍しい場所の名前をとって、特別に呼ばれることがありま
 す。その特別な所というのが

  東京

 よって、この時期の盆を「東京盆」とも呼びます。
 東京以外にはないのかといわれると、自信が無いのですが、今のところ東京
 以外で盆行事をしているという話を聞いたことが無いので、やや恐る恐るで
 はありますが、「東京盆」の名前を使わせていただきます。

※他にも、この時期に盆行事を行っていると言う地域の情報があれば、是非ご
 一報を!!

◇お盆と盆の日付
 言わずもがなかなとも思いますが、一応「盆」とはなんぞやということも書
 いておきます(念のためと言うやつです)。普通は

  お盆とは、盂蘭盆(うらぼん)のこと

 と説明されます。なるほど。ところで盂蘭盆てなに?

 盂蘭盆は中国で成立したとされる盂蘭盆経という仏教の経典に書かれた釈迦
 の弟子の目蓮が地獄に堕ちた母親を救い出すために衆僧に食事を振る舞い、
 供養したという孝行説話が起源だといわれます。
 この供養した日が7月15日だったことから、この日は先祖の霊を供養する日
 となったわけです。

 なお、盂蘭盆とは梵語で逆さ吊りを表す言葉だそうで「逆さ吊りの苦しみか
 ら救う」ための供養を行うわけです。
 我が国では推古14年(西暦606年)の7月15日に法興寺で催されたのが盂蘭盆
 会の最初だそうです。

 また、こうした仏教行事が日本に入って定着する前から、祖先崇拝の行事が
 あって、御先祖様へのお供え物を載せるお盆が行事を象徴する名前となって
 「お盆」と呼ばれるようになったのではと言う説もあります(個人的には、
 こっちの説の方が、好きです。説教臭くなくて)。

 さて、お盆とはどんな行事かと言うことを簡単に書きましたが、その説明の
 中に登場したお盆の日付は、7月15日でしたね。つまり今日です。

 ちょっと異常にも見える東京盆のほうが、日付という点からみると正しい姿
 なのでした。

 この日付という点では正しい東京盆が変わり者に見えるようになったのは、
 明治6年に行われた急な改暦からです。
 一応、「天子様のお膝元」である東京では、天子様がなさった改暦に従い、
 日付と繋がった行事は、基本的に新暦の日付で行われるようになりましたの
 で、盆も新暦の7月15日の行事となりました。

 明治の改暦によって、日付は季節に対して平均しておよそ1ヶ月ほど前方に
 移動してしまいました。たかが1ヶ月とはいっても、農業などの季節の変化
 と連動するものへの影響は大きく、

  改暦? ハイ、そうですか

 と従うわけには行きません。
 お盆の時期には日常の仕事を休んで、親戚一同集まって御先祖様のご供養を
 といっても、新暦の7月15日ごろでは、稲作においてはまだまだ忙しい重要
 な季節にあたってしまい、ノンビリ休んでいるわけにはいきません。

 そんなこともあってか、多くの地域では新暦の日付でのお盆はあまり定着し
 ませんでした。かといって、いつまでも旧暦の日付でというのも、日常生活
 との兼ね合いを考えると難しく、今は

  7月15日+1ヶ月 = 8月15日

 をお盆と見なすことが一般的になって来ています(これを「月遅れの盆」な
 どと呼びます)。

 お盆の日付は?
 というと、「8月15日」という答えが返ってくることが多く成ったと思いま
 すが、「日付」という観点からは「7月15日」が本来。8月15日は便宜的なも
 のなのです。

 日本全体から見ると、かなり奇異な感じとなってしまった東京盆ですが、東
 京の皆さん、胸を張ってくださいね。

◇東京でも影が薄くなっている東京盆
 日本全体で見ると影が薄い東京盆。
 しかし今や、東京においても影が薄くなっている気がする東京盆。

 確かに花屋さんなどをのぞくと、この時期には東京では「盆花」が売られて
 いたりして、一応「東京盆」というものが存在しているのだなと感じるので
 すが、街全体を見ると、「お盆」という雰囲気はありません。
 東京に住む人の間でも、

  「お盆休みはとるんですか?」

 なんて話をすると、暗黙のうちに8月15日前後の休みを意識しているのが分
 かります。
 考えてみれば、東京に住んでいるといっても、東京出身という方より地方出
 身の方が多いようですから、「御先祖様の供養」が目的であるお盆には、出
 身地方に戻ることが多く、そうなるとどうしても、出身地方での「盆」の日
 付を考えることになるのでしょう。

 さらに、学校の夏期休暇などの時期などの兼ね合いもあり、「家族全員での
 帰省」などには月遅れの盆のほうが好都合ということもあるのでしょう。
 そのうち、「東京盆」は、

  「かつては、東京にそういう風習があった」

 という風に過去の話として語られるようになるのかもしれませんね。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2018/07/15 号

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