こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■日出没の時刻計算について
 日刊☆こよみのページに、毎日掲載している各地の日出没(と月出没)の情
 報ですが、「どのように計算するのですか?」というご質問をいただきまし
 た。たまには、こうした計算にまつわる質問があるんです。そんなに沢山は
 ないことなので、こうした計算にまつわる質問をいただくと、ちょっと新鮮
 な気持ちになります。
 そんなわけで、ちょっと新鮮な気分で、

  日出没時刻の計算

 について、書いてみることにしました。
(概要のみ。数式とかは使いませんのでご安心? を)

◇日出没の時刻の計算
 日出没時刻の計算といいますが、いきなり時刻を求めるというものではあり
 ません。どうするかというと、計算したい地点(地球上の経緯度ですね)で
 のある瞬間、例えば本日2019/05/30 の 6時00分の時刻に見える太陽の地平
 線からの高度角を計算します。

 例として東京(北緯35.68°、東経139.75°)における2019/05/30の3時から
 6時までの1時間ごとの太陽の中心の位置の地平線高度角を計算してみます。

  3時 0分 0秒 高度角 -15.4° (時刻は全て日本時)
  4時 0分 0秒 高度角  -5.7°
  5時 0分 0秒 高度角  +5.1°
  6時 0分 0秒 高度角 +16.6°

 高度角がマイナスの場合は、地平線より低い位置を表しますので、この場合
 は太陽(の中心)は見えません。高度角がプラスになると見えるということ
 になります。上記結果からすると、4時の段階では太陽は地平線下にあり、5
 時の段階では地平線の上にあることが解ります。

 ということは、日の出は、4時〜5時の間に起こるはずだと解りますから、今
 度は間の、4時30分の高度角を計算して、答えがプラスかマイナスかを確か
 めます。こうして、どんどんその範囲を狭めていけば、日の出の時刻を知る
 ことが出来ます。これが、こよみのページで行っている日出(日没も考え方
 は同じ)時刻計算の方法です。

 計算においては、この方法で挟み撃ちする時刻の間隔が0.5秒以下になる辺
 りまで(用途によってはもっと細かく)計算して、得られた結果を「分」単
 位にまるめて表示しています。

◇太陽は大きい(太陽視半径)、地球もちょっと大きい(地心視差)
 日出計算の原理は、上に書いた通りですが、ちょっと問題があります。
 一般に日出没の時刻といえば、

  「太陽の上辺が見かけの地平線に接して見える時刻」

 ですから、太陽の上辺が見かけの地平線から測って高度角が 0度となる瞬間
 と言い換えることが出来ます。
 先ほどの計算で求めた高度角は、太陽の中心の高度角でしたが、太陽は点で
 はなく、ある程度の大きさを持った円盤のようにみえます。とすると、求め
 る高度角は太陽の中心の位置より常にその半径分だけ高い位置にくることに
 なりますから、この補正をする必要があります。

 太陽の見かけの大きさは、太陽と地球との距離により変化しますので季節に
 よって多少変わるのですが、その直径は角度にしておよそ0.5°。1°の半分
 ほど。半径は更に半分ですから、0.25°ほどということになります。

 また、天体の位置計算はもっぱら、地球中心から見た場合の計算をすること
 が多いので、地球の大きさを考慮した地心視差と云うものの補正も必要とな
 ります。ほとんどの天体は遠いので、この地心視差は大変小さなものなので
 無視しても大きな問題はありませんが、月や太陽の場合は、影響があるので
 この補正も行います(太陽の場合、0.002°くらいですけど)。

◇地球には大気がある(大気差)
 日出没の計算などを行う場合、地球には困った問題、欠点があります。
 それは地球には、大気があるということです。
 この大気のおかげで、光は屈折します。この影響で、地平線に近い高度での
 の太陽や星は大気が無ければ見えるはずの位置より、わずかながら浮き上が
 って見えます。

 どのくらい浮き上がって見えるのかというと、地平線ではおよそ0.6°ほど
 も浮き上がります。太陽の見かけの直径が0.5°ほどですから、太陽1つ分よ
 りも、大気による浮き上がり量(これを「大気差」といいます)の方が、大
 きいのです。「わずかながら」ではないかな?

 ちなみにこの大気差の影響は、気温や気温と地面(または海面など)との温
 度差や気圧の差などによっても変化します。もっとも、日出没時刻を計算す
 る際に、あらかじめその日の気温や気圧がわかるわけはないので、そうした
 変化までは考えず、標準的な大気差の値を使って計算します。

◇人間には背丈がある(眼高差)
 高い山や高層ビルなどに昇ると、地平線が水平な位置ではなくて、下の方に
 見えます。日出没時刻は「太陽の上辺が地平線に接した時刻」ですから、地
 平線が下に見えるなら、日出没を計算する場合は、この効果も計算する必要
 があります。

 通常は、山の上やビルの屋上から眺めることまで想定して計算することはあ
 りません(初日の出の計算などで、初日の出の名所の山頂から計算してくだ
 さいといった、特殊な要望はありますけれど)が、地面に這いつくばって眺
 めるということもないでしょうから、海岸に近い場所で、標準的な身長の人
 が立って眺めるという、「ありそうな想定」で観測者の視点の高さ(眼高差)
 の補正も行っています(理科年表などでは、眼高差は 0として扱っています
 ので、この辺の考え方は、想定する用途によって異なります)。

◇こよみのページの日出没計算の基準の高度角
 こよみのページでは、太陽視半径、地心視差、(標準の)大気差、眼高差を
 考慮して日出没時刻の計算を行っていますが、現実の日出没時刻は気象の影
 響を大きく受けるため、実際問題として「分」以下の時刻精度を求めること
 は困難ですので、あまり細かな数字をいじってみても仕方がない部分もある
 ので、計算では説明した4つの補正値を合計し、「-0.899°」という値を標
 準の補正量として計算しています。つまり、

  計算上の太陽の中心地平高度が -0.899°となる瞬間の時刻

 を日出、日没の時刻として求めるようにしています。
 今なら、計算機があるので簡単なことですけれど、一つ一つを手計算してい
 た時代は、大変だったでしょうね。
 ああ、便利な時代に生まれてよかった。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2019/05/30 号

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