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■定気法の二十四節気と2033年問題(その4)
 昨日の記事の最後に書きました2033〜2034年の暦月名パズル(?)を天保暦
 の置閏法、

  1.暦月は新月(朔)を含む日に始まる。
  2.暦月中冬至を含むものを十一月,春分を含むものを二月,夏至を含むも
   のを五月,秋分を含むものを八月とする。
  3.閏は2に背かない範囲で適当に配置する。
  4.中気のない月でも閏月とは限らない
   (中気で月名が定まるものではない)

 を当てはめてみると
   朔の日  月大小 天保暦  含まれる中気(中気の表す月名)
  2033/ 7/26 大の月 七月   処暑(七月)
  2033/ 8/25 小の月 閏七月  −−
  2033/ 9/23 大の月 八月   秋分(八月)
  2033/10/23 大の月 九月   霜降(九月)
  2033/11/22 大の月 十一月  小雪(十月) 冬至(十一月)
  2033/12/22 大の月 閏十一月 −−
  2034/ 1/20 小の月 十二月  大寒(十二月) 雨水(正月)
  2034/ 2/19 大の月 正月   −−
  2034/ 3/20 大の月 二月   春分(二月)
  2034/ 4/19 大の月 三月   穀雨(三月)
  ※朔の日の日付はグレゴリオ暦に換算した日付

 このようになります。といっても、天保暦置閏法3に「適当に配置」という
 ところがあるので、
  2033/12/22 大の月 十二月 −−
  2034/ 1/20 小の月 正月  大寒(十二月) 雨水(正月)
  2034/ 2/19 大の月 閏正月   −−

 でも「〇」がもらえるはず。この辺りもすっきりしませんね。
 しかし、この問題以前に、既にかなりおかしな問題が発生してしまっていま
 すが、お気づきですか?
 問題の個所はここです。

  2033/ 9/23 大の月 八月   秋分(八月)
  2033/10/23 大の月 九月   霜降(九月)
  2033/11/22 大の月 十一月  小雪(十月) 冬至(十一月)

◇神無月は何処へ
 何がおかしいかお気づきでしょうか?
 何かが足りない・・・あ、十月が消えた!
 日本全国から八百万の神々が出雲に集まって会議を行うはずの十月が消えて
 しまいました。

  『高天原町内回覧板
   2033年には神無月がありませんので定例の
   「十月縁結び会議」は休会となります。間違えないでね。
                    町内会長 あまてらす 印』

 何てことになってしまいます。
 「やあ、元気!?」
 なんて、神様たちが声を掛け合う年中行事が無くなるなんて。神様たちにま
 で迷惑かけちゃいます。
 冗談はさておき、こうなってしまう理由は、天保暦の置閏法の

  2.暦月中冬至を含むものを十一月,春分を含むものを二月,夏至を含むも
   のを五月,秋分を含むものを八月とする。

 という規則。ここで、「冬至を含むものを十一月、秋分を含むものを八月」
 とありますから、その通り八月と十一月を固定すると、その間に残された暦
 月は1月のみ。どうやっても、九月と十月という2か月の名前を押し込むとこ
 ろがありません。何が問題かといえば、中気に固定した月名を

  十一月 二月 五月 八月

 と4つも入れてしまったこと。2033年は十一月を立てれば八月が立たずとい
 った具合になってしまいました。
 この問題に対して、一部(極々一部)には、天保暦の規則に忠実に、

  八月 → 九月 → 十一月

 にしてしまおうという方もいらっしゃいます。天保暦の規則のどこを見ても
 「九月の後には十月が来る」なんて書かれていないのだから、九月の後に十
 一月が来たっていいじゃないかということらしい。

 「確かに一理ある!」・・・とは思いませんが。「九月の後は十月」という
 のは、暗黙の大前提(言うまでもない前提)でしょうから、この辺は無視す
 ると、天保暦の規則を破って、八月と十一月の何方かを優先させ、他方を移
 動させ、十月が座る場所を作ってあげるというのが妥当な考えでしょう。

◇八月と十一月のどちらを優先する?
 天保暦で、十一月、二月、五月、八月を他の月より優先して固定した理由は
 一年の節目としても特に重要視されていた二至二分、冬至・夏至、春分・秋
 分を含む月(伝統的な恒気法では)だからでしょう。

 二十四節気の中の12の中気のうち、特に二至二分の4つを優先したことは納
 得できます。ではこの考えを延長して、二至二分の4つの中でさらに優先順
 位を考えれば、八月と十一月のどちらを優先するかは自ずと定まります。

  冬至・夏至の二至が優先だ!
  いやいや、春分・秋分の二分が優先だ!

 と、それぞれ言い分はあるでしょうが、これが暦の作り方にかかわる話だと
 いうことを考えると、どうやら軍配は二至(特に冬至)に上がると思います。
 暦を作るうえで大変重要な周期である1年の長さを調べる方法として、古く
 から行われていた方法は、太陽の作る影の長さを測り、南中時の影が最も長
 くなる「冬至の日」を求めること。
 冬至の日と冬至の日の間の日数が1年の日数というわけです。

 このため、旧暦の計算は必ず前年の冬至の日とこれを含む暦月を求めて、こ
 れを十一月とするところから始まります。
 これを考えると「冬至を含む月を十一月とする」ことは、旧暦を作る上での
 大前提と考えることが出来ます。

 八月には申し訳ないですが、十一月のために秋分という定位置から、別の位
 置に移動して頂きましょう。

◇「こよみのページ風」の2033年問題解決案
 これまで説明してきた内容を取り入れて、暦月名パズルを解いたものが、次
 の「こよみのページ風」解答案です。

   朔の日  月大小 川獺案  含まれる中気(中気の表す月名)
  2033/ 7/26 大の月 七月   処暑(七月)
  2033/ 8/25 小の月 八月  −−
  2033/ 9/23 大の月 九月   秋分(八月)
  2033/10/23 大の月 十月   霜降(九月)
  2033/11/22 大の月 十一月  小雪(十月) 冬至(十一月)
  2033/12/22 大の月 閏十一月 −−
  2034/ 1/20 小の月 十二月  大寒(十二月) 雨水(正月)
  2034/ 2/19 大の月 正月   −−
  2034/ 3/20 大の月 二月   春分(二月)
  2034/ 4/19 大の月 三月   穀雨(三月)
  ※朔の日の日付はグレゴリオ暦に換算した日付

 この案では、2033/12/22から始まる暦月を「閏十一月」としましたが、この
 月を「十二月」とし、閏月を二月の直前に置く別案も考えられます。

 (別案)
  2033/11/22 大の月 十一月  小雪(十月) 冬至(十一月)
  2033/12/22 大の月 十二月  −−
  2034/ 1/20 小の月 正月   大寒(十二月) 雨水(正月)
  2034/ 2/19 大の月 閏正月  −−
  2034/ 3/20 大の月 二月   春分(二月)

 私は、二至二分以外の中気の間には優劣(?)の差はないと考えていますか
 ら、そのあたりは気にせず、閏月は出来るだけ早くに処理してしまうという
 考えから別案の方は採用しておりませんが、正月は特別な月であるから、正
 月は正月中気である雨水を含む月にした方がよいという方もいます。
 ここから先は、「好みの問題」となりそうです。

 旧暦の2033年問題の作暦の技術的問題についての説明は以上です。
 ですが、私はこの技術的問題が旧暦の2033年の全てではないと考えています
 ので、もう一度だけ、「その5」として、その他の問題を書いてみたいと思
 います。
 いつかそのうちに。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2019/07/14 号

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