こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■二十四節気の節入り日の「1分1秒を争う問題」
 今日は、「1分1秒を争う問題」の話です。

  1分1秒を争う問題

 というと、通常は「危急の問題」と解釈されますが、今日の話題はそうでは
 なくて、本当に1分、1秒の差が問題になる話です。

◇元々予想された問題
 この問題は日刊☆こよみのページの生みの親とでも申します、Web こよみの
 ページの計算プログラムに元々内包されていた問題でした。

 こよみのページでは二十四節気や七十二候、土用の入りなどの計算を太陽の
 位置によって求める定気法と呼ばれる方式で行っています。定気法は太陽の
 黄道座標という座標ではかった経度(黄経)の値が有る一定の角度になった
 瞬間で決定する方式で、現在の日本の公的な暦データとして官報に掲載され
 る二十四節気の日付を求める方式です。

 Web こよみのページの「二十四節気の計算」他のページの数値はこの形式に
 よって計算しています。計算はWeb サイトを表示している皆さんのブラウザ
 の中で動作する javascript と呼ばれる言語で書かれています。

 さて、太陽や月の位置を計算するのはなかなか大変で、それを多数回実行し
 なければならない二十四節気計算などをストレス無い時間で行うためにこよ
 みのページで使用したものは、計算精度が角度の0.1分(1/600度)以上とい
 う略算式(略算式といっても結構面倒な式ですけど)を用いてきました。

 角度の0.1分といってもピンとこないかも知れませんので比較で、太陽の見
 た目の大きさを使うことにしましょう。太陽の見た目の大きさ(視直径)は
 およそ30分です。ということは、0.1分は太陽の視直径の1/300程の角度とい
 うことになります。

 直接太陽を見ちゃうと危ないですから、もし試すならお月様を見て下さい。
 月も視直径はほぼ太陽と同じで、大体角度30分なのでその1/300です。
 まあ、かなり小さな角度まで正確に計算出来ると言えるでしょう。

 ではこの精度で太陽の位置を計算した結果から二十四節気の節入り日を計算
 すると、その精度はどの程度になるかというと、その精度はおよそ2.4分と
 なります。実際にここ200年程度の間の略算式の計算結果と精密に計算した
 太陽の位置を比較してみると、実際には略算式の精度は、もっとよくて、節
 入り等の計算では、差は最大で1.6分程度にしかなりません。

 ということは、節入りの瞬間が日付の切り替わる深夜0時の1.6分以内でない
 限り、太陽の位置略算式を用いた計算で問題無いことになります。これは一
 日の長さ1440分のおよそ1/1000。ま、滅多に問題にならないので、

  当分は大丈夫だな

 と、Web こよみのページを作った20年前に考えました。一応、問題になりそ
 うな日については確かめて、それが2021年、2030年辺りにあることは確認し
 ていましたが、当時は

  まだ20年以上先。
  それまでに、何か対処法を考えればいい。

 と考えていました。その時は「20年後の問題」でした。
 しかし気が付いたら、あれから20年が経過しているじゃ有りませんか。
 正直、Web こよみのページを作り始めた頃には、まさか20年後もこのサイト
 が存在しているなんて、作っている私自身も思っていなかった。
 でも御蔭様で20年も続いちゃったので、「20年後の問題」が間近な問題にな
 ってきました。

◇2021年と2030年の「1分1秒を争う問題」
 では実際にどんな問題があったかというと、

  「2021年の立春」と「2030年の雨水」

 の節入り日が正しく計算出来ないのです。
 例の略算式と地球の自転速度の遅速の補正量の予測値の組み合わせで求めた
 節入りの瞬間は、

  2021年立春 2/04  0h 0m22s (精密計算 2/03 23h58m44s 差 1m38s)
  2030年雨水 2/19  0h 0m25s (精密計算 2/18 23h59m49s 差 0m36s)
  (世界時と力学計算に用いられる力学時の差は2021年は-71秒、2030年は
   -75秒と予測しました)

 略算式の結果では、2021年の立春は 2/4の0時を22秒過ぎと計算されるので
 結果は2/4となりますが正しくは2/3と表示されなければならない。
 2030年の雨水も同様。

 どちらも、略算式の結果がわずか22秒と25秒、翌日に食い込んでしまったた
 め節入りの日が1日違うということが起こってしまいました。
 精密計算との差は、2分も無いのですが、日付の切り替わる付近だと1分の差
 どころか、1秒の差でも節入り日の「1日の差」となって表れてしまうのでし
 た。

 こよみのページに限らず、二十四節気の節入り日を求めるような計算をして
 いる所では「1日単位」の気楽な計算をしているようなのですが、実はこん
 な極々希に起こる「1分1秒を争う問題」に頭を悩ませているのです(悩んで
 いないというのであれば、それはそれで問題ですね)。

 この節入り日はいろいろな所で使われることがあるので「誤差の範囲」と高
 を括るわけにもいきませんので、時代も変わったことですので、二十四節気
 と七十二候についてはサーバー側で精密に計算した結果を用いる方式に土用
 と間日の計算のように特別なものについては対処療法的修正を施して対応を
 しています。

 他にもまだ関係しているページがあるかな?
 まだまだ、点検していかないといけませんね。
 以上、Web こよみのページで持ち上がった問題から、二十四節気の節入り日
 の「1分1秒を争う問題」についてでした。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2019/09/15 号

こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック