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■どこまで行くのか「スーパームーン」
 「スーパームーン」という言葉を私が最初に知ったのは2012年頃。
 使われ初めてまだまだ日の浅い言葉のようです。

 「スーパームーン」という言葉を初めて知った2012年頃に得られた情報は、
 満月または新月の瞬間と月がその軌道上で最も地球に近づく近地点の通過の
 瞬間が近接しているとき、月と地球の距離が大変近い状態になる、つまり月
 が大きく見える状態になることのようで、このような月を

  スーパームーン

 と呼ぶのだということでした。

 「呼ぶようだ」と、あやふやな言い方になってしまうのは、天文学的な定義
 など無い言葉だからです。このような状態の月は大きく見えることは確かで
 すが、だからといって天文学的に特別な意味があると云うと、そんなことは
 なくて、このため、満月(または新月)と近地点(月の公転軌道中で地球に
 最も接近する地点)通過の瞬間が何時間以内ならスーパームーンというのか
 といった学問的な厳密な定義もなされていないのです。そのため、こんなあ
 やふやな表現になってしまいました。

 とはいえ、2012年頃から「こよみのページ」にも、次のスーパームーンはい
 つですかと云った質問が舞い込むようになり、皆さん、結構関心があること
 が分かりましたので、

 月の距離とスーパームーン http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0530.htm

 という記事をWeb こよみのページに書いてみました。
 この記事の中で、近年(1990〜2050)のスーパームーンと呼ばれそうな月を
 ピックアップした表を掲載しています。
 表を作るためには、あやふやな定義では計算ができないので、

  候補A 近地点通過から±1時間以内に新月、満月の瞬間をむかえるもの
  候補B    〃   ±6時間以内に新月、満月の瞬間をむかえるもの

 としてみました。候補Aは、優秀(?)、Bはそこそこといったところでしょ
 うか。
 あの記事を書いてから8年。たった8年ですが、その8年の間にこの「スーパ
 ームーン」と呼ばれる月の条件はどんどん甘くなってしまって、数が増えて
 きています。

◇一年で一番大きな満月もスーパームーン?
 昨日の夕方のTVニュースを見ていたら、今日の満月(満月の瞬間は日本時で
 正午頃)は

  「スーパームーン。今年一番大きく見える満月です」

 だというのです。え? 一年で一番大きく見える満月はスーパームーンなん
 ですか??
 確かに、今日の満月の瞬間に見える月は、2020年で一番大きく見える満月で
 あることは間違いありません(ただし、満月の瞬間は日本時の正午ですから
 日本では月は見えませんけど・・・)。2020年の満月の日付と見かけの大き
 さは次の通り。

   日付  大きさ(%) ・・・ 平均を100% とした場合の数値
   1月11日 103.5
   2月 9日 106.0
   3月10日 107.6
   4月 8日 107.7 最大

   5月 7日 106.4
   6月 6日 104.2
   7月 5日 101.4
   8月 4日  98.6

   9月 2日  96.3
  10月 2日  94.9
  10月31日  94.6 最小
  11月30日  95.7
  12月30日  97.9

◇スーパームーンもインフレ気味?
 4月8日の満月が一番大きいことには違いありませんが、こんな具合にどんど
 ん条件を緩めて「スーパームーン」の数を増やしてしまうと、それに反比例
 するようにありがたみは薄らぎます(最初から「ありがたみ」なんてないと
 も思いますが)。

 今回の「スーパームーン」と呼ばれた月は、2012年当時に計算した表には影
 も形ないものです。スーパームーンもインフレ気味。ハイパーインフレと言
 った方がいいくらいかな?

 すでに書いた通り、「スーパームーン」という用語は天文学から来たもので
 はありません。ではどこから来たかというと、占星術の世界。
 本日の日本語版ウィキペディアで調べてみたら、

 ---- 以下ウィキペディア
    (https://ja.wikipedia.org/wiki/スーパームーン)より引用  ----
 (前略)
 スーパームーンという用語は、占星術師のRichard Nolleが1979年に以下の
 ように独断的に定義した。
 軌道中で地球に最接近(90%以内)した新月または満月。即ち、地球と月と
 太陽が直線上に並び、月が地球に最も接近した状態。

 Nolleはまた、スーパームーンの位置にある月は「地球物理学的ストレス」
 の原因になると主張した。Nolleは、なぜ90%という数字が選ばれたかについ
 ては言及しなかった。

 近年では、特に最接近して近点から前後1時間以内に満月または新月を迎え
 ることを「エクストリーム・スーパームーン」(Extreme Supermoon)、あ
 るいは「エクストラ・スーパームーン」(Extra Supermoon)と呼ぶ場合が
 あり・・・(後略)
 ----- 引用ここまで -----

 なるほど。
 近地点云々じゃなくて、もともとは「とにかく大きく見えればいい」ってこ
 とか。なら仕方ない。2012年当時、私が作ったあの表の基準(の候補A)は今
 でいえば、「エクストリーム・スーパームーン」なんていうたいそうな名前
 で呼ばれるようになっていたんですね。

 まあ、「めでたいことはいいことだ」。いいことならば沢山あってもいいじ
 ゃない。もともと定義もあいまいな概念なんだしさ〜。ということなんです
 かね?

 大きくて明るい満月を見上げるのはうれしいですけど、でもそれは「スーパ
 ームーン」だからありがたいというわけじゃないんだけどなと思うカワウソ
 でした。もちろん、私一人の考えですけどね。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2020/04/08 号

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