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■立春の月と八十八夜の月
 夏も近づく八十八夜、本日はその夏も近づく日です。
 夏も近づくって、まだ暑くないぞとおっしゃらないでくださいね、ここで言
 う夏は暦の上の夏。今年は4日後の5/5が「立夏」。暦の上では八十八夜は夏
 直前なのです。

 八十八夜は二十四節気のように、暦自身を形作る二十四節気などとは違って
 暦を作る上では必要のないものですが、暦を使う側からすると、あってくれ
 ると便利な季節の節目の目印です。

  「この日、大切な約束があるから忘れないように、
   カレンダーに○印付けとこう」

 といった具合で、出来上がった暦の上に、大切な日を忘れないように印を付
 けたようなものなのです。こうした印の中で、「私の誕生日」のようなもの
 は一人一人違ってしまいますが

  茶摘みの適期

 のように、大勢の人が共通に印を付けておきたいと思うような特別な日があ
 れば、一人一人が印するより最初から暦に印を入れてくれたらありがたいな
 と思うでしょう。そうやって、後から暦に書き加えられるようになったもの
 が八十八夜です。こうした後から暦に付け加えられた節目の日を「雑節」と
 いいます。
 八十八夜の他にも、彼岸や社日、入梅や二百十日などが雑節の仲間です。

 八十八夜は立春から数えて八十八日目の日。八十八夜は、昔から「八十八夜
 の別れ霜」と言われるように霜が降りる季節の終わりの日であるとか、一番
 茶摘みの時期を示すなど、農作業の目安として親しまれてきた日です。

◇八十八夜の日取り
 雑節の中には八十八夜や二百十日のように立春から数えて何日目とその日取
 りを決めるものが有ります。

 今から考えればこんな回りくどい事をしなくても「何月何日」と覚えればよ
 さそうなものです。現に八十八夜は現在の暦でいえば5/1か5/2、(今年は今
 日 5/1です。同じように二百十日も8/31か9/1(今年は8/31) 。
 八十八夜ではなくて5/1 、二百十日ではなくて8/31でいいじゃないか。

 なぜ「何月何日」という表し方ではなく、立春から数えて何日目というちょ
 っと判りにくい方法によって日取を決めた理由は、太陰太陽暦である旧暦で
 は太陽の位置と強く結びつく季節点が毎年同じ(ほぼ同じ)月日にはならな
 かったためです。これを補うものとしてこの「立春から数えて××日目」と
 いう方法が考えられのです。

 この立春から数えて何日目という方法は、例えば桜の開花時期のようなもの
 にまで、「立春から数えて五十四五日目」などと使っていた事から、旧暦使
 用当時には広く普及していた方式のようです。

 ちなみにこの起点となる「立春の日」というのは、太陽の位置と密接に関係
 した二十四節気の一つですので、これを起点として日数を数える方式は、太
 陽暦の考え方です。現在なら、八十八夜は5/2 頃と言えるのは、現在の暦が
 太陽暦の一種であり、この立春からの日数を数える方式と考え方と同種のも
 のだからなのです。

◇やっと「立春の月と八十八夜の月」
 では八十八夜と太陰暦(正しくは太陰太陽暦)の旧暦の日付との間には何ら
 の関係がないかというと、そうでもありません。その理由はこうです。

  月の満ち欠けの周期(朔望周期)の平均は 29.53日、29.53 日の 3倍は
  29.53 × 3 ≒ 88.6 (日)

 お、何と88と言う数字が現れるじゃないですか。
 太陰太陽暦であった旧暦時代の暦ではその月の日数はこの朔望周期で決まり
 ますから前述の事から考えると、立春と八十八夜は当時の暦でほぼ 3ヶ月離
 れた日付となるはず。試しに去年〜来年の 3年分を調べてみると

  2019年 立春 12/30 (新暦 2/4)  八十八夜 3/28 (新暦 5/2)
  2020年 立春  1/11 (新暦 2/4)  八十八夜 4/09 (新暦 5/1)
  2021年 立春 12/22 (新暦 2/3)  八十八夜 3/20 (新暦 5/1)

 旧暦の日付をみると、ずいぶんばらばらですね。でも、月日の「日」だけを
 見ると、立春は30,11,22で、対応する八十八夜は28,9,20となり、それぞれ
 の差は2。更に、新月や満月との関係で見ると

  2019年 立春(新月の 1日前)  八十八夜(新月の 3日前)
  2020年 立春(上弦の 2日後)  八十八夜(上弦の 当日)
  2021年 立春(下弦の 2日前)  八十八夜(下弦の 3日前)
  ※上弦、下弦は上弦半月、下弦半月の意味

 です。こうやって月の形との関係でみるよとよりはっきと、立春の日の月と
 八十八夜の月の形はほぼ同じということが出来ます。

 ぴったりとならない理由は、29.53×3≒88.6 の「0.6」という端数と、八十
 八夜の日付が「立春を 1日目として数えて88日目」という事によるもの(立
 春の日が 0日ではない)での 1日。あわせて 1.6日の差が生まれてしまうか
 らです。月の形がより近い状態になるためには、八十八夜より九十夜の方が
 よかったんだけどな。

 まあこうした差がある事から、確証とまでは言えないのですが「八十八夜」
 という日が季節点として使われた裏に、太陰暦としての考えがいくらかはあ
 ったのかもしれないという気もします。

 立春の日に月を見上げて、「この月の形になる3度目の月の頃が八十八夜」
 くらいだと思えば、わかりやすいと言えばわかりやすいですよね。
 ・・・ちょっと無理があるかな?

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2020/05/01 号

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